見出し画像

インドラの真珠:複素数の和と積

2乗すると$${-1}$$になる数を考え,これを $${i}$$ で表します。$${i^2=−1}$$ です。これを「虚数単位」といいます。
 2つの実数 $${a, \ b}$$ に対して,$${a+bi}$$ という数を考え,これを複素数といいます。a を実部,b を虚部といいます。
 直線上の点を実数に対応させて数直線ができるように、平面上の点を複素数に対応させたものが複素数平面です。複素平面、ガウス平面ともいいます。直交座標系の x 座標が実部、y 座標が虚部に対応します。そこで、複素数平面では x 軸のかわりに「実軸」、y 軸のかわりに「虚軸」といいます。また、ベクトルによる位置の表現(位置ベクトル)にも類似しています。

複素数の和

2つの複素数の和は $${(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i }$$です。
これを複素平面で考えると、次のようになります。リンク先を開いてみましょう。

リンク先を開くと次の画面になります。 $${(6+2i)+(3+5i)}$$ の場合です。

画像3

点$${a, \ b}$$(ベクトルの終点)をドラッグしてみましょう。直交座標系で考えると、x座標とy座標をそれぞれ加えたことになり、点の平行移動です。
また、原点を始点とするベクトルの和とも対応します。

複素数の積

複素数の積は、次のように計算されます。
  $${(a_1+a_2 i)(b_1+b_2 i)=(a_1 b_1−a_2 b_2)+(a_1 b_2+a_2 b_1)i }$$
これを複素数平面で表すと次のようになります。次のリンク先を開いてみましょう。具体的に$${(3+i)(1+2i)}$$ の場合を示しています。

リンク先を開くと次の画面になります。

画像3

点 a, b(ベクトルの終点)をドラッグしてみましょう。ab の点は,ベクトル a を,ベクトルbの角だけ反時計回りに回転し,長さは2つのベクトルの長さをかけたものになります。ベクトル b をベクトルaの角だけ反時計回りに回転したと考えることもできます。複素数平面では,積は原点周りの回転と原点からの距離の積になるのです。
 どういう意味かは,2つの複素数を極形式という方法で表して考えます。
極形式とは,原点からの距離 $${r}$$ と、$${x}$$ 軸の正の方向とのなす角$${\theta}$$を用いて、$${r( \cos \theta+i \sin\theta)}$$ と表したものです。座標でいうと,$${x=r \cos \theta, \ y=r \sin \theta}$$ になりますね。$${r}$$ をこの複素数の絶対値,$${\theta}$$ を偏角といいます。たとえば,
    $${1+\sqrt{3}i=2(\cos \dfrac{π}{3}+i \sin \dfrac{π}{3})}$$
と表せます。
 極形式を用いると2つの複素数の積は次のように計算されます。(三角関数の加法定理を用います)

  $${r_1( \cos \theta_1+i \sin \theta_1)⋅r_2(\cos \theta_2+i\sin \theta_2)}$$
  $${=r_1 r_2\{\cos (\theta_1+\theta_2)+i\sin(\theta_1+\theta_2)\}}$$

この計算結果が示しているのは次のことです。
    複素数の積では、絶対値は積となり、偏角は和となる
図形的には、偏角の分だけ回転して、距離を掛けたところに点を置くことになります。
このことは,複素数平面で図形を考えるときに重要な性質です。たとえば,1辺を与えて正方形を描くことを考えましょう。$${i=\cos 90 ^{\circ}+i \sin 90^{\circ}}$$ なので,$${i}$$ をかければ90度回転した点が得られます。

画像3

$${-i}$$ をかければ−90度回転した点が得られます。これと平行移動を使えば,正方形の頂点をとることができるわけです。同じ考え方で,1辺を与えて,正五角形など,一般的な正多角形を描くことができます。

===========================

ここからあとは,Cinderellaでの複素数・複素数平面の扱いについて説明します。Cinderellaを持っていない人は,こちらからダウンロードしましょう。詳しくはCinderellaJapan のページに説明があります。

Cinderellaを開いたら,画面下の「グリッドにスナップする」ツール(磁石アイコン)をクリックして,座標軸・方眼を表示しておきます。
画面上の「点を加える」ツールを選択し,適当なところでクリックして点を取ります。このとき,マウスボタンを押したら,そのまま方眼の格子点までドラッグしますと,格子点に吸い付くように点の位置が決まります。これが「スナップモード」です。点の名前は自動的にAになります。もう一つ点Bをとっておきます。

画像4

画面上方のメニューから「スクリプト」ー「CindyScript」を選んでCindyScriptエディタを表示します。左側にある「スロット」から「Draw」を選んで右の広いエリアをクリックし,次のスクリプトを書きます。「スロット」が表示されていない場合は境界線をドラッグすると現れます。

z1=complex(A.xy);
z2=complex(B.xy);
draw(gauss(z1+z2));

Shift+Enter で実行すると緑の点が現れます。

画像5

スクリプトの意味を説明しましょう。

z1=complex(A.xy); は,点Aのxy座標を複素数に変換します。complex() は組み込み関数です。
draw(gauss(z1+z2)); は,複素数 z1+z2 をxy座標に変換して点を表示します。gauss() は組み込み関数です。

点A, B をドラッグして,緑の点がA,Bを平行移動した点になっていることを確かめましょう。

画像6

3行目を
draw(gauss(z1*z2));
に変えれば,緑の点はz1とz2の積を表す点になります。

画像7


→次節:共役複素数

→ インドラの真珠目次 に戻る