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インドラの真珠:メビウス逆変換

 メビウス変換の式の係数だけを取り出して行列にします。複素数を要素とする行列です。
  $${f(z)=\dfrac{az+b}{cz+d} \rightarrow \begin{pmatrix}a & b\\ c & d\\ \end{pmatrix}}$$
$${ad-bc \neq 0}$$ のとき,この行列の逆行列が存在します。
  $${\begin{pmatrix}a' & b'\\ c' & d'\\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\\ \end{pmatrix}^{-1} =\dfrac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d & -b\\ -c & a\\ \end{pmatrix}}$$
この $${a' ,\  b' , \  c' ,\  d'}$$ を係数にしたものもやはりメビウス変換です。そして、このメビウス変換はもとの変換の逆変換になっています。
このことを確かめましょう。
  $${w=\dfrac{az+b}{cz+d}}$$ を $${z}$$ について解くと $${z=\dfrac{-dw+b}{cw-a}}$$ となります。
$${D=ad-bc}$$ とおいて分母分子を $${-D}$$ で割ると $${z=\dfrac{-dw+b}{cw-a}=\dfrac{d/Dw-b/D}{-c/Dw+a/D}}$$ となります。
この係数を行列で表すと,$${\begin{pmatrix}d/D & -b/D\\ -c/D & a/D\\ \end{pmatrix}=\dfrac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d & -b\\ -c & a\\ \end{pmatrix}}$$ ですから,$${\begin{pmatrix}a & b\\ c & d\\ \end{pmatrix}}$$ の逆行列になります。

リンク先を開くと次の画面が出ます。

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青いスティックラー博士と4つの点a, b, c ,d が表示されています。
「メビウス変換」ボタンをクリックしましょう。

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 赤いスティックラー博士はa,b,c,dのベクトルで表される複素数を係数とするメビウス変換を反復した像です。
 「メビウス変換」ボタンをクリックすると元に戻ります。次は「メビウス逆変換」をクリックしましょう。

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 緑のスティックラー博士は逆行列によるメビウス変換を反復した像です。
両方とも表示してみると位置関係がわかります。

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 スティックラー博士が回転・拡大縮小を繰り返しながら螺旋状にある点に向かっていくのがわかるでしょうか。反復回数を増やすとこの点がはっきりわかります。この点を「吸引的固定点」といいます。吸引的固定点が2つあります。メビウス変換のものと,逆変換のものです。

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 a,b,c,dのベクトルをドラッグすると、メビウス変換の関数式の係数を変えることができます。画面上部のスライダで反復回数を変えることができます。スティックラー博士の大きさや位置は、足の赤い点をドラッグすると変えることができます。
スティックラー博士がどのように回転・拡大縮小を繰り返しながら吸引的固定点に向かうかを,係数 a,b,c,d を変化させていろいろ調べてみましょう。次の図では,螺旋の向きが初めのものとは逆になっています。

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次節:3点で決まるメビウス変換

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