梅雨の晴れ間の菖蒲園
ひとときの梅雨の晴れ間
ふたりで行った菖蒲園
広い園地を縫う木道
わあ,きれいねと
君は人目も気にせず声をあげた
白,黄色,紫,薄紫
カメラを持って構図を考える
君は一緒になって
しゃがんだり背を伸ばしたり
同じ風景を見たかったんだね
紫の花にトンボが止まる
ほら,トンボだよ
君は人さし指を近づけそっと回す
トンボは目玉だけ回して飛び去る
あ,逃げちゃった
あたし,紫陽花より菖蒲がいいな
突然君がいう
雨の紫陽花ってどこか儚げでしょ
菖蒲は雨でも凛としているもの
そう言った君の今日のブーケは紫陽花
君が純白の菖蒲なら
僕は群青の菖蒲だね
センターテーブルのキャンドルに
ひとさし指を近づけそっと回す
紅い炎が羽根になって君の髪に止まった