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ニーチェと恋愛駆け引Part II - 己の善良さを信じる弱者たちへ

どうも、悪い猫です。

今回はニーチェと恋愛の続きをやっていきたいと思います。以下の記事の続きですね。非モテがなぜ非モテなのか非モテを続けてしまうのかを語っていきたいと思います。

主旨の部分は全編無料です。追記で有料ナンパマインドを紹介します。男磨きする方は買ってください。

中年童貞はなぜ惨めか

いきなりエグいことから入ります。

この画像を見てください。この人が今回の主人公です。これが別の平行宇宙でのあなたたちの姿です。世界線が違えばこの人になっていました。

女の人も直視して見てください。生まれる腹が違い「男になっていれば」この人になるかもしれません。または、愛する息子がこれになるかもしれません。

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引用:『中年童貞』

平和主義、天賦人権、男女平等、ポリコレ万歳、天は人の上に人を造らず、All men are created equal…どうしてこんな生き物が生まれてしまったのでしょうか? 可哀そうですよね。同情してしまいます。どんな希望で人生を生きていったらいいでしょうか?

そうですよね?ニーチェ先生…可哀そうだとは思いませんか?

大哲学者、慈悲の心を持ったあなたなら、彼らの境遇を可哀そうだと感じますよね?

もっと本質的なところでこの世の非情を理解してくれますよね?







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いや、唾はかないでください!!水道パイプが壊れたような効果の唾!Disるのはいいですけど、文明人の節度を持ってください…まったくもう、

はい、では、考えていきましょう。どうして我々はこの人を「かわいそう」以上に「惨め」だと感じるのでしょうか?

今回はこの謎に迫りたいと思います。断じてかわいそうランキングの話ではありません。弱者が弱者たる本質について解説していきます。この中年童貞セリフには二つの構成があります。

1:童貞の綺麗な体のままでいる=正しいことをしてきた。
2:いつかすべてを受け入れてくれる女性が現れる=正しさの神による救済

この2点についてです。なぜここまで悲しいのか、振りあげた拳を下すこともできない状況になるのか、ここをニーチェ大先生が分析していきます。

今回、参照するのはこちらです:

『道徳の系譜学』です。

弱者の拗らせ

「正しい人が報われる世界って何」という話ですが、これはすごく宗教的な概念です。もう、本題に入っちゃいますね。

例えば、喋れる動物がいる牧場を思い浮かべてください。そこには羊の群れがいて、毎日、オオカミの襲撃を受けては、オオカミたちに仲間が殺されています。

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羊たちはオオカミが憎いのです。しかし、オオカミに対して復讐する手段を持ちません。仲間を殺された悔しさはあるのに、復讐できない無力な存在なのです。

オオカミが憎い、力が欲しい、でも力が入らない、悔しい、次は自分が死ぬかもしれない、力が欲しい、でも力が手に入らない、オオカミが怖い、怖いので抵抗できない、そのための言い訳を造らなければならない。拗らせた羊たちは、こういうことを考え始めるわけです。

「私たちはオオカミみたいに残酷なことをしないから、私たちの方が正しい生き方をしているのよねー私たちはオオカミよりも「道徳的に強い」のよねーオオカミは正しくないから「実は弱い」のよねー」

小羊が大きな猛禽に憤慨するのは、不思議なことではない。しかし小羊たちが猛禽にたいして、小さな羊をさらうことに文句をつける理由はないのだ。そして小羊たちが「この猛禽は悪い。そして猛禽とかけ離れた者、猛禽の反対である者、すなわち小羊が、──善い存在なのではあるまいか」と仲間うちで語っていたとしても、このような理想のたてかたに非難すべきところはない。
ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) 光文社. Kindle 版.

ルサンチマンとは?

我々がよく耳にするルサンチマンという概念、これは、ニーチェがResentment(憎悪)をフランス語で発音したものになります。ニーチェが定義する「ルサンチマン」とは、自分より力が強い者に対して復讐できない欝憤です。

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※画像は兄のアベルを殺すカイン

ここで子羊の例を挙げますと、オオカミを殺したいのに殺せない無念ですね。他者に対して征服したいのに征服されている側である、優位に立ちたいのに優位に立たれている側である、支配したいのに支配されている側である、殴りたいのに殴られる側であると、人間はこの力を持ちたいという欲望を抑えられて心の中で憎悪をメラメラ燃焼させます。これは意識的にも無意識的にも存在する悪の衝動です。

このルサンチマンは、あるものに本当の意味で反応すること、すなわち行動によって反応することができないために、想像だけの復讐によって、その埋め合わせをするような人のルサンチマンである。
ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) 光文社. Kindle 版.

これが「ルサンチマン」(憎悪)です。

殺したいんですよ。自分より優位な存在を。力に憧れているのです。そして下剋上して、そいつのすべてを自分のものにしたいわけです。でも、それができないわけです。するとどうするかということです。

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羊の「弱者の正義」と精神勝利法

すると、力を得たいのに取得できないルサンチマン(憎悪)が、燻った挙句どういう形で溢れてきてしまうかというと「倫理的な正しさ」で溢れてしまうわけです。

「我々が弱いのは強い者たちより正しく公平に生きてきたから。」と自分に言い聞かせるわけですよ。世界の敗者としての自分の存在が認めることができないから、あたかも「自分たちは本当は勝っている」と自己欺瞞するわけです。

羊がオオカミに食われるのは弱いからではなく、オオカミと違って暴力的な手段を使わないから善良さによって負けたという話にすり替わるわけです。※実はオオカミを殺したくてしょうがないくせに。

そして、強い者たちを卑怯な手段で勝ったに違いないと断罪して、自分たちは正しさによって生存を保証されているという立場に「願い下げ」の状態で、この牧場の秩序が保たれているわけです。

例えば、凡人SNSアカウントが有名人やアルファに、どうでもいい善悪の視点からクソリプで突っ込みを入れるときに、「ルサンチマン駄々洩れやな…」と思われるのがこれです。強い人間=悪い人間に仕立てあげることで弱い自分を守るのです。

しかし、オオカミは何を思うのでしょうか?

狼:「羊たちがよくわからない論理で、さらに抵抗しなくなったよ。幸せそうにしている惨めな生き物だな。都合がいいな。カモにして狩ってやろう。」

ただし猛禽たちはこれをあざ笑うように眺めて、おそらく「われらは小羊たちに憤慨するところはまったくない。あのよき小羊たちを、愛しているほどだ。やわらかな小羊ほどおいしいものはないのだ」と言っていることだろう。
ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫)  光文社. Kindle 版.

狼にとって羊の論理や正義なんてどうでもいいんですよ。今日も捕食するのみです。自由気ままに自分の飢えの問題を解決して生きていくのです。

だって強いから。力によって獲得した権利があるから。弱者の善悪など笑いものでしかないからです。

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羊もその強さに羨望していますが、臆病ゆえに何の抵抗もできません。集団で蹴ってやろうとも思わないのです。でも、自分を臆病だと認めません。それだとルーザーだからです。(笑)

なので「正しさの武装」によって自己欺瞞します。

「小羊は]これによって猛禽に、猛禽であることの罪を着せる権利を手にすることができるからである……。
ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) 光文社

自分たちを惨めな生き物だと思っていないのです。むしろ、正しく生きていると思っているのです。

ここから少し長文となりますが、ニーチェを直接引用します。そのままの意味でとても鋭く分析しているので、そのまま読みましょう:

抑圧された者、踏みつけにされた者、暴力を加えられた者は、無力な者の復讐のための狡智から、次のように自分に言い聞かせて、みずからを慰めるものだ。

「われわれは悪人とは違う者に、すなわち善人になろう!
善人とは、暴力を加えない者であり、誰も傷つけない者であり、他人を攻撃しない者であり、報復しない者であり、復讐は神に委ねる者であり、われわれのように隠れている者であり、すべての悪を避け、人生にそれほど多くを求めない者である。われわれのように辛抱強い者、謙虚な者、公正な者のことである」。

──しかしこの言葉を先入見なしに冷静に聞いてみれば、そもそも次のように言っているにすぎない。

「われわれのように弱い者は、どうしても弱いのだ。われわれは、それを為すだけの強さをもたないことは何もしないほうがよいのだ」。この口に苦い事実は、もっとも低い次元の狡智にすぎず、昆虫ですらもっているようなものにすぎない

ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) 光文社

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このアナロジーのあと、ニーチェはユダヤーキリスト教が教える道徳そのものがここでいう「弱者の道徳」「支配される側の道徳」であるとして、解像度を上げて分析してボコボコに叩きますが、そこで現れるのが「終末論」です。

いつか正しい人間はすべて救われて悪しき人間は地獄で焼かれる、という世界観をユダヤーキリスト思想が広めることによって、この世界に羊のような被支配民を大量に安住させたという主張をするわけです。

善を持たなかった狼は最終審判の日に自然に焼かれるのですよ。

信仰はわれらに、はるかに多くのものを、はるかに強いものを与えてくれる。救済によってわたしたちにはまったく別の種類の喜びが与えられている。闘技士の代わりにわたしたちには殉教者がいる。血がほしいのなら、わたしたちにはキリストの血がある。

……そしてキリストの再来の日、キリストの勝利の日に、わたしたちを待ち構えているのは何だろうか!」。(中略)

古き時代とその生みだしたもののすべてが、火の一撃で燃え尽くされるのだ。何たる壮大な光景であろうか!

ニーチェ. 道徳の系譜学 (光文社古典新訳文庫) 光文社

『スカッとキリスト様』ですね。

自分には復讐する力がないから「神様」が自分に代わって、神様の暴力で自分の欝憤ルサンチマンが復讐として果たされる、「自分が嫌いな奴を地獄にぶち込んでくれる」、断末魔が途切れないぐらいに焼いてくれる、そんな自己欺瞞が、西洋の道徳観の正体だったと挑戦的なことをいうわけです。

すべては支配される人間の報復心に沿った教えということです。それを広めることでその教え自体で支配できるのです。

公平世界信念と恋愛終末論

はい、弱者男性の話に戻りましょうか、再びこの人を見てみましょう。なんていう脂の乗った羊らしい羊でしょうか?

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こういう自分の「独自の美学による正しさを信じる人」がいる傍らで、モテ男は美女を囲い込み、不倫、浮気が横行し、知的障害の女は風俗業界に迷い込み、フェミニストたちは有害な男らしさを経験談から語り、真面目な人たちは家庭を作り子供を非モテにしないように教育するわけでです。

弱者がどんなにこの世はこう正しくあるべきだと嘆いていても、この世界は「弱者の正義とは関係なく動いている」のですよ。強者が強者の思う正義によって世界は動かしているのです。

この世の中が道徳的に回っていたとしても、それは「善良な強者」の仕事であって「弱者の自称善良さ」とは関係がありません。

※弱者の「自称した善良さ」は所詮「奴隷の道徳」であるので強者が残虐な人間であった場合も、それを正義だと強弁して自分を守るからです。「凡庸な悪」なのです。

そして、恋愛弱者は恋愛弱者らしく必ず以下のことを期待します。

1:童貞の綺麗な体のままでいる=正しいことをしてきた。
2:いつかすべてを受け入れてくれる女性が現れる=正しさの神による救済

この世界は平等たるルールを保証する巨大な力によって調和が成り立っており、いつか正しい側に立った自分が必ず救済されるという論理です。とても宗教的なのですよ。

これはニーチェが唾を吐いたユダヤーキリストの敬虔な教徒が信じている自己欺瞞な終末論なのですよ。

強い側の論理である「自分から力を使って自分の正しさを保証」するようなことはしません。弱い人間の道徳、正しく生きていれば必ずいい結果があるという期待、自分の生存のための押し付けられた道徳、これをニーチェの別の本(「善悪の彼岸」)では奴隷道徳と呼んでいます。

あくまでも、ご褒美を待っている犬のようにご主人様が現れるのを待っているのです。では、そのご主人様とは誰でしょう?神様ではないのですね。この場合「聖母」ですよね。巨大な秩序を維持するための「慈愛」です。

つまり、かつては無償の愛を与えていた「母親」というわけです。では、その聖母たる者が期待通りに仕事をしなかった場合に、その男は「聖母であるはずの女という生き物」をどう思うでしょうか?力を得たいという憎悪は「どの正しくない人間」に向かうでしょうか?

ミソジニーの仕組みのこの話に戻るわけです。

自分が弱者だという自覚があるなら、自分の「善良さ」を信じるのをやめろという話です。賢いなら気付いていると思いますが、その善良さの仮面の裏には自分こそ他人を支配する側だという憎悪と破壊衝動が込められているのですよ。

アブラハム・リンカーンはかつて「その人間を知りたいなら権力を与えよ」と言っておりました。これは、つまり、弱者が善良なのは自分を守るためだけであって、自分を守る必要がない立場になったら、その人の本性が出るということを言っているのです。

そして、現実では、弱者が善良さに逃げ込むことは「自分がより強くなることへの臆病さ」(殺されないように)を言い訳したものにすぎないのです。本質的には「あなたのそれは優しさじゃなくて弱さ」ですから。いい加減に目覚めてほしいところです。

エゴを抑圧された人間が本当に欲しいのは、この歌が歌っている内容だってバレているんですから。力を出せないのでナルシストで露悪な想像でしか表現できないのです。

その想像に自覚的なうちは、まだ、マシかもしれません。

※以下、有料パートは男性向けナンパ技能に関連します。「インナーゲーム」の話です。女性に対してアプローチしたいけど怖い心理について分析します。地蔵対策ですね。

弱者というテーマから原因を分析して解決法を話します。

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