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「Misasagi」リリースノート

https://local-visions.bandcamp.com/album/misasagi

2022年4月1日リリース

Composed, performed, mixed and mastered by every_de & mori_de_kurasu

Artwork by Haruna Kawai
https://www.instagram.com/haruna_kawai/

Designed by every_de & mori_de_kurasu

every_de (piano, synthesizer, programming)
from wai wai music resort
https://soundcloud.com/waiwaimusicresort

mori_de_kurasu (alto sax, synthesizer, programming)
https://soundcloud.com/kazuhiro-yoshii

2022 Local Visions
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もう3年も前のことか、雨の堺筋本町のサイゼリヤで僕の目の前に座ったその男は「森で暮らすと言います」と言った。そうか、その数週間前にリリースされた「Oneironaut」という手前味噌を含めても素晴らしいコンピレーションアルバムに「タムラカフカ」という楽曲で参加していて気になっていた人物だ。その話をしたかったのだが、村上春樹の話題が出てきて何も答えられなかったらどうしようとドキドキして、ほとんど料理を口しなかった彼とSP-404の話を頻りにしたのを記憶している。それから数年後、新宿の居酒屋で彼と再会した。「ジャズキャンプがあるので帰って課題をやらないといけない」と話していてなんて勉強熱心な人なんだと思ったものだ。その翌日にははじめて彼のサックスを生で聴き、言葉が出ないほど感動した。居酒屋での彼の振る舞いとパフォーマンスの差に、ああこの人はジャズマンなんだなと思った瞬間でもあった。楽器弾き(吹き)は楽曲構成のシンプルさを極限に突きつめていけばいくほど、テクニックでは乗り越えられない「何か」が必要になってくると思う。しかしそれは決して演奏媒体に依拠するものではない。そのときはサックスだったが、それがシンセであれ、そしてあるいは打ち込みであれ、彼はその「何か」をすでに獲得していると感じた。その頃から彼と音楽を一緒に作ってみたいと思った。

制作は2021年の3月下旬にスタートした。お互いにモチーフをいくつか作り、楽曲データを2週間ごとに交換してお互いに手を加えていく。お互い使っているDAWソフトが同じということもあって、内蔵音源のみを使用するという制約のもと、プロダクションは思いのほかスムーズに進んだ。どのパートをどちらが作ったのかはどうでもいいことである。トラックを追加したきっかけはどちらであれ、最終的には2人で完成させたのだ。とはいえ、楽曲の中でのお互いの存在感をある程度際立たせるためにピアノやサックスを入れたりはした。制作期間中は個人的には日向敏文、濱瀬元彦、リリース過多のサムゲンデル周辺、そして能楽の翁をよく聴いたように思う。

2021年8月ごろには8割近い状態まで完成していたが、お互いに体調を崩してしまいそれから3ヶ月ほど制作がストップしてしまった。いつの間にか4曲あった収録曲も事情で2曲になってしまったが、年始に目処がつき、この度Local Visionsからリリースしていただる運びとなった。誰かと一緒に曲を作り上げるというのは初めての経験であったため、何より面白かったし、いろいろと勉強になった。上っ面の会話では知り得なかった無意識のレベルでのインタラクションもできたような気もする。いつものことではあるがデモを二つ返事で快諾しリリースに尽力いただいた捨てアカさん、アートワークをお引き受けいただいたカワイハルナさん、そして何よりコラボレーションを実現させてくれた森で暮らすくんに、心から感謝を述べたい。

もしこの音楽に時代特有の閉塞感が表出するならそれは致し方ないことではあるが、それはあくまでも結果であり、売り文句にはしたくない。なぜなら音楽はいつの時代に作られたものでも、その時代にだけ聴かれるものではないことを僕らは知っているからである。コロナであってもなくても、インターネットを経由して、僕たちは同じように、一度も会うことなくこの作品を作っていただろう。

2022.04.01
エブリデ

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