ヘレディタリーの脚本を読むとわかる、本編にはない数々のシーン。
みなさんこんにちは。映画の世界から帰って来られない人です。
今回は、アリ・アスター監督の2018年の作品「ヘレディタリー」の脚本を読んでわかった、本編ではカットされているさまざまなシーンについて話していきます!
このブログはヘレディタリーを観た前提のものです。まだ観ていない人は、本作を観てみてください。
もう一つの"鳥" のシーン
今作では、鳥が物語における重要な要素となっています。
「主人公の娘のチャーリーが学校でテストを受けている際、教室の窓に鳥が自ら体当たりし、首の骨を折る」というシーンがあります。
実は、これ以外にも鳥が出てくるシーンが脚本執筆段階ではあったみたいです。
それは、冒頭アニーの母親エレンの葬式のシーンです。
本編では、主人公アニーが弔辞を読んでいますが、実はアニーの前に別の人物がスピーチをしています。
脚本にはその人物は、LARGE WOMAN(60's)とあります。60代の太った女性です。
この人がエレンに関するスピーチをしている時に、突然、葬式会場の垂木(天井のあたり)からホイップアーウィルヨタカという鳥が羽ばたいて、アニーのことをじっと見つめる というシーンが脚本の段階では考えられていたみたいです。
そして葬式終了後、帰りの車の中でアニーが夫のスティーブに、その鳥のことを"It felt like it was my mum"(母のような気がした)と言っています。
ちなみに、この帰りの車中での会話シーンも本編にはありません。
ただ、この葬式に出てくる鳥と、チャーリーの教室の窓にぶつかってくる鳥は別の種類の鳥みたいです。
教室にぶつかってくるのは、PIGEON(鳩)となっています。
夫スティーブの仕事
今作では、アニーの夫であるスティーブの仕事についてはほとんど語られていません。一応、博士号を持つカウンセラーとありますが、本編には彼が実際にカウンセリングするシーンはありません。
しかし実は、チャーリーが鳥の頭部を切り取るシーンの後にスティーブがカウンセリングをするシーンがあります。
スティーブが膝の上にパソコンを置き、40代の女性患者のカウンセリングを行っています。
「彼女はひどく興奮状態にあり、うつ病である」とあります。
スティーブはその女性患者とこのような会話を交わしています。
スティーブ「怒りの方はどう?」
女性患者 「変わらないわ。それほど気にはならなくなったけど」
スティーブ「じゃあそれほど(怒りのエネルギーを)消耗してない?」
女性患者 「消耗はしてる、ただ前ほど気にならなくなっただけよ」
このようなスティーブの仕事に関する短いシーンがもともとは考えられていたみたいです。
Bathroom(トイレ)で母からのボイスメールを聴くピーター
次は、事故で妹チャーリーを亡くしてしまい、パニックで苦しんでいるピーターに関するシーンです。
チャーリーの葬式終了後、ピーターは親族にあたたかい声をかけてもらいますが、人に合わせる顔がなく、家のトイレに一人閉じこもります。
そして、事故の日、パーティーで母アニーから受け取っていたボイスメールを聴きます。(ちなみにパーティーの時、ピーターは母からの連絡を無視していた)。
このような内容でした。
アニー「ママよ。あなたとチャーリーがちゃんと無事で、バーベキュー楽しんでるかどうか確認したかったの。それじゃ、いっぱい楽しんで!気をつけてね!2人とも愛してるわ」
あのような事故があった後にこんな言葉は絶対に聞きたくないですよね。この母からのボイスメールがさらにピーターを窮地に追い込む要因となっています。
本編で見たかったなー。。
夕食でブチギレた後のアニーとスティーブの会話
夕食時、アニーが息子のピーターに対して、「母親に向かってそんな口きくんじゃねぇぇ!!!」とブチギレるシーンがありますよね
あのシーンは私の最も好きなシーンといっても過言ではありません。誰が見てもあのシーンは記憶に残るはずです。
そんな印象に残るシーンの直後、寝室でアニーとスティーブは対立します。
スティーブ「(ブチギレたことに関して)どういうつもりなんだ!」
アニー「どういうつもり?」
スティーブ「1秒で良いから、どうなるか考えてみてくれ!」
このような対立が続き、スティーブはアニーに「家族でセラピーに行こう」と提案します。
しかしその後もアニーは、今回の事故のことでピーターを咎めます。
例えば、ピーターがアニーに嘘をついたことです。
ピーターはアニーに「学校のバーベキューにいく」と言っていました。だが、そうではなく、マリファナやお酒を飲む高校生が集まるパーティーであったことです。
そのほか、ピーターが娘の死体を車に残したまま、ベッドに直行したことなどを「どうかしてる!」と息子を咎めまくります。
そして、それに対してスティーブが、「ショック状態にあったんだから仕方ないだろ」と息子を擁護します。
このように、家族でお互いを責め立て合う地獄のシーンが続きます。。
時間の都合や内容が他のシーンと被るなど、色々な理由でなくなくカットされてしまったんですかね。
ということで、今回はヘレディタリーの脚本を読んでわかった本編にはないさまざまなシーンについて紹介してみました。
カットされたシーンは他にもあるので、また別の機会に紹介するかもです。
それではありがとうございました。
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