30日間の革命 #毎日小説3日目
加賀の人生において、坂本の存在は特別なものだった。
加賀について語るのは、とても簡単なことだ。彼の人生を一言で表すなら、「順調」という言葉が最も当てはまる。誰からも愛し慕われ、いつでも中心的な存在であり、また彼自身も優しい人間であった。
高校3年生に進級した当時の加賀は、クラス名簿に「坂本小春」という名前を見つけ、少しだけ不安を感じていた。坂本は1年生の頃から優秀で模範的な学生だと教職員の間で有名となり、その評判は生徒にも伝染し、他クラスにいても坂本の良い評判を聞くことが多かった。
「3組の坂本さんって3年の先輩とも仲が良いんだって」
「先生の間で1年生でも生徒会長に推薦しようとしてるんだって」
「3組の坂本さんって大物政治家の娘らしいよ!」
嘘か本当かわからないような噂まで飛び交っており、とにかく坂本の人気は、加賀が今まで経験したことのないほど異常なものだった。そして、いつでも変わらない見た目や態度、行動が異様に感じて、本当に人間なのかと疑うこともしばしあった。
そんな坂本と同じクラスになった加賀は、当初坂本と距離を置いていたが、運命は坂本と加賀を結び付けた。
出席番号順で並んでいた座席を坂本の提案で入れ替えることに決まり、くじ引きの結果、坂本の後ろに席に加賀は決まった。
(ちょっとは坂本さんに話しかけてみようかな)
加賀がそう考え始めたとき、坂本は振り返り穏やかな笑顔を見せながら、
「加賀君はさ、私のことをどんな人だと思ってる?」
意表を突かれた加賀は、思わず息を飲み込んだ。
「どんな人って言われてもな。まだ全然しゃっべったことないからわからないよ」
そう答えるのが精一杯だった。
「そっか。でも、私のことロボットか何かと思ってない?」
ドキッとした。今までしゃべったこともないのに、全て見透かされているような、そんな怖れを加賀は感じた。
「なんでそう思うの?」
坂本はまたニコッと笑ってみせ、前を向いた。
翌日から、坂本は積極的に加賀に話しかけるようになった。何かあるたび、後ろを振り返り、加賀の心を見透かしたようなことを話しては、加賀に質問されると笑ってごまかしていた。そんな坂本に対して、加賀は少しずつ興味を持ち始めていた。
「明日のお昼休みにさ、屋上のベンチでご飯食べない?」
そんな誘いがあったのは、坂本と話すようになって1カ月たったころだった。今まではぐらされてきたことを聞いてやろうと、加賀は二つ返事で了承した。
その日の空も、限りない青で染められていたーー
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