【感想】マッチング

2024年　日本
監督　内田英治
出演　土屋太鳳
　　　佐久間大介
　　　金子ノブアキ

あらすじ

ウェディングプランナーとして仕事が充実している一方、恋愛に奥手な輪花(土屋太鳳)は、同僚の尚美（片山萌美）の後押しでマッチングアプリに登録をすることに。
勇気を出して一歩踏み出し、デートに臨んだ輪花だったが、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男・吐夢（佐久間大介）だった。
その後も執拗にメッセージを繰り返し送る吐夢に恐怖を感じた輪花は、取引先でマッチングアプリ運営会社のプログラマー影山（金子ノブアキ）に助けを求めることに。
しかし時を同じくして”アプリ婚”した夫婦が惨殺される事件が連続して発生。被害者たちが輪花の勤める結婚式場で式を挙げていることが判明するのだったー。
今、あなたの「出会い」が狙われている。

公式サイトより

感想

いつまでも「あの『ミッドナイトスワン』の」と言われ続ける監督の最新作。見てないけど、『サイレントラブ』も同様の謳い文句だった気がします。まぁ、悪くはないんだけどサスペンスとしては割と致命的な弱点があるって感じの映画でした。

良い点から言うと、ストーリーの構成自体はうまいことまとまっていたと思います。伏線も丁寧に貼られており、回収もしっかりしているところはきっちりサスペンスしてる。背景に映ってた幼少期の絵とか、ストーカー男とめちゃくちゃマッチング率が高かったところとかは特に素晴らしい伏線だったと思います。あとは、多少分かりやすい気はしましたが、どんでん返しもきちんと決めている。

ですが、ストーリーの細部で見ると粗が多すぎる。サスペンスとかミステリーって、どこまで緻密に作り上げるかが肝だと思うんですけど、本作はその部分がかなり酷い。あんまり言うとネタバレになっちゃうんですけど、一時期逮捕されてたはずなのに、その期間中も含めて人をずっと監禁していたという矛盾点とか、本作の目玉であるはずの連続殺人の動機が結局よくわからないまま終わるところとか。

あとは「この人、他のマッチングアプリでも警察沙汰の問題起こしてるんですよ（笑）」とかアプリの管理者が気軽に言ってるんですけど、それをBANせずにずっと放置してるのとかマジでヤバくないですか？　そのことに誰もつっこまないのが1番のホラーでした。他にも、主人公が事件の容疑者になっちゃうところ。葬式にマスコミが押し寄せてきたかと思えば、職場や家なんかには寄り付かず、気付けば一瞬でその設定もなくなっちゃってるし。あの囲み取材は夢だったのか？

ずば抜けて訳わかめだったのは、突然殺された主人公の友人です。本当に理由が分かりません。多分ノリでヤられてますよ、あれ。

まだまだツッコミどころはあるんですが、これくらいにしておいて。言いたいこととしては、忙しくて脚本の校正とかしてないんじゃないかと疑いたくなるような出来だったということです。

そんでもって、これが致命傷なんですけど、『マッチングアプリ』を主題にしてるはずなのに、本筋にはあまり関係がないんですよね。なくても話が成立しちゃいます。合コンとか結婚相談所とかに入れ替えても問題ありません。

もっとアプリ独特の怖さとか出せたんじゃないんですかね……。相手が見えない匿名性とか、アカウント乗っ取られるとかさ。多分ですけど、まず真犯人とか主人公との関係性とかのアイディアが先行して出てきて、あと乗せで「流行ってるからマッチングアプリ題材で行くか！」という流れで作成されたんじゃないでしょうか。

まとめ。人間関係や伏線などは非常によく練られているものの、全体を通して粗雑さが目立つストーリー。少しやさぐれた土屋太鳳の可愛さを楽しむなら百点、な映画でした。

以上、まだまだ『ミッドナイトスワン』の監督と言われ続けそうです。お疲れ様でした。

視聴：劇場