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【感想】哀れなるものたち

2023年 イギリス・アメリカ・アイルランド
監督 ヨルゴス・ランティモス
出演 エマ・ストーン
   マーク・ラファロ
   ウィレム・デフォー

あらすじ

死んだ妊婦に胎児の脳を移植したことにより、蘇生したベラ。大人の体に赤ん坊の知能を持つ彼女は、生みの親である外科医・ゴッドウィンと共に屋敷で暮らしていたが、次第に外の世界に憧れ始める。
そんな時、突然現れたプレイボーイのダンカンに誘われ、彼女は屋敷を飛び出した。ベラは好奇心と欲望の赴くままに世界各国を旅する。凄まじいスピードと吸収力で成長していくベラが、旅の終わりに見るものとは…。
奇妙な世界で繰り広げられる、生と性との物語。

感想

難解と言われがちなランティモス作品の中でもかなり分かりやすく、同時にかなりぶっ飛んでる映画でした。

見た人全員が最初に衝撃を受けるのは、モノクロからカラーへと切り替わるシーンだと思います。本作では映画が始まると、しばらくはモノクロの映像が続くんです。それが、主人公のベラが旅出すと同時にバーンとカラーに切り替わるわけですね。これは今まで屋敷の中でしか生活してこなかったベラが外に出たことで一気に世界が色づくってのを表してるんだと思うんですが、肝心なのはその中身ですよ。

カラーになったと思ったら、エマ・ストーンが全裸で男の上に跨って、熱烈ジャンピング(暗喩)しているのがデカデカと映し出されるわけです。もうこんなの、笑うしかないじゃないですか。

我々は体が第二次性徴するのに合わせて、ゆっくりと性の知識を身につけます。じゃあ、体は大人だけど頭は子供の女の子が、いきなりアダルトな世界に足を踏み入れたらどうなるの、ってのが今作の大まかな流れになります。

つまり、性徴と成長がテーマ(めっちゃ上手いこと言えた気がする)なわけですが、これを細かく分析して素人があーだこーだいっても面白くないので、映画としてどうだったかだけを今回は書いていくことにしました。

何はともあれ、まずはエマ・ストーンですよね。凄まじい目力だったり、めっちゃ綺麗な体を惜しげもなく全開放したりもすごいんですが、一番ヤバいなと思ったのは成長する姿の表現力です。初めはもう野蛮人みたいな振る舞いをするベラなんですが、物語の最後にはとても知的なレディになります。その一連の流れに歯抜けになってる部分がないんです。1から10まで成長している様子が、しっかり演技として表現されている。

普通映画って、最初から最後まで連続して撮るわけじゃなくて、たとえば冒頭のシーンを撮った後に終盤間際のシーンを撮ったりするじゃないですか。それなのにベラの成長曲線がブレずに表現できてるっていうのは、恐ろしさを感じるほどでした。

あとは映像に関してなんですけど、視点を連想させる見せ方が相当ハイレベルだったと思います。最初に書いたモノクロからカラーへの切り替わりもなんですけど、他にもあって。例えば、物語の序盤って魚眼レンズみたいな映像だったり、筒の中から隠し撮りしてるみたいな感じだったり、何かと狭さを感じさせる映像が多いんです。まだ知識も経験も少ないベラの世界についての感覚が映像で共有されて、しっかり観客を映画の中に連れていってくれる感じがしました。

もっと色々語りたいところはあるんですけど、最後に一つだけ。この作品って間違いなく問題作の部類に入ってて、国によっては絶対に上映なんてできません。ですがもし、アカデミー賞作品賞を取ったりした暁には、今後の映画界は大きく変わっていくと思います。恐ろしい爆弾だ。

まとめます。眩いほどのエロスと映像美に窒息させられる傑作。エマ・ストーン狂気の熱演は必見、な映画です。

以上、アカデミー賞は3月11日発表です。お疲れ様でした。

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