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【感想】ロブスター

2015年 イギリス

監督 ヨルゴス・ランティモス
出演 コリン・ファレル
   レイチェル・ワイズ
   ジェシカ・バーデン

あらすじ

誰かとパートナーであることを義務付けられた世界での話。妻と別れたディヴィットは、森の奥にある『ホテル』へと連れてこられる。そこは、単身者となった者が集められ、45日後には動物へと変えられてしまう施設だった。
生き延びるためのルールは二つ。パートナーを見つけて結ばれるか、逃げ回っている違法な独身者を狩るか。
どちらも上手くいかないディヴィットにタイムリミットが迫る。窮地の彼は、施設一冷酷な女を騙し、パートナーとすることにしたのだが……。

感想

ジャンル分けが非常に難しい映画。世界観や動物に変えられるという設定はSFだし、ストーリーの主軸となるのは恋愛そのものについてだし、施設の様子はシュールコメディの様相を呈しているし。あとは若干スリラー要素もあるよね。

見る人によってどの『型』にはめるかが変わってきて、それについて語るのも面白そう。私の個人的な見解としては、サイコホラーである。

動物への変化という恐怖もあるが、それよりも恐ろしいのはあのラストへの繋げ方だと思った。今作では一貫して『共通点』がある2人がカップルになっている。

主人公が知り合った男は、よく鼻血を出す女とカップルになるために、鼻をぶつけて鼻血を出したり。サイコパス女を欺くために、主人公が冷血人間のふりをしたり。主人公とヒロインは、本物の共通点があって惹かれ合うんだけど、ラストではそれが失われてしまう。そのヒロインと同じようになるために、主人公は酷くグロテスクな選択をすることになる……。

共通の趣味がきっかけで付き合いました」とか、マッチングアプリの広告でよく見ると思うんだけど、それが実は付き合うための嘘だったり、あるいは何かの拍子で『共通点』を失ってしまったりすると、どうなるか。その恐怖心を煽る部分が、私的にはホラーだなと感じました。

共通点への異常な執着心がホラーとしてよく描かれているな、と感じるのは他にもあります。例えば、カップルになることを強要する『ホテル』と、単身者であることを強要する違法独身者たち。主義主張は違えど、どちらも共通点、この場合は価値観と言い換えた方がいいかもしれませんが、それを守るためには残酷な方法を取ることも厭わない。あっちもこっちも狂ってて、翻弄されていた主人公も最後には狂ってしまうんです。ね、サイコホラーでしょ?

とまぁ、私の見方としてはそうなんですが、この映画は初めにも書いたように、他の見方もいっぱいできます。この、どういう映画だという意見がバラバラであることは、実は監督の狙いだったんじゃないかと思っていて。

タイトルのロブスターは、主人公のディヴィットが「なんの動物に変えられたい?」という質問に対する答えです。これも「この映画はどんな映画?」という問いと同じように、人によってバラバラな答えが返ってくる質問だなって思いませんか? 犬だったり馬だったりグリーンアミーバだったり。恋愛だったりSFだったりホラーだったり。

そこまで考えてタイトル付けてたらすげーなと思いましたが、多分難しく考えすぎでしょう。もっとシンプルに見ても楽しい映画だと思います。森の映像とか、施設の奇妙な雰囲気とか、視覚的にも楽しいしね。つまり、何が言いたいかというと映画の楽しみ方も人それぞれということ。

まとめ。奇抜な設定と美しい映像に惹き込まれる作品。何をどう感じるかは、あなた次第、な映画でした。

以上、貴方はどんな動物になら変えられたいですか? お疲れ様でした。

視聴:アマプラ

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