【感想】市子
2023年 日本
監督 戸田彬弘
出演 杉咲花
若葉竜也
森永悠希
あらすじ
主人公の長谷川義則は同棲している河辺市子にプロポーズしたが、彼女はその翌日に姿を消した。市子を訪ねてきた刑事に彼女のことについて聞かれるが、長谷川は彼女について何も知らなかったことに気付かされる。
消えた市子を追うため、長谷川は彼女を知る人々の話を聞いていく。彼らの語る市子と自分が知っている市子とのギャップに戸惑う長谷川。果たして、彼女は一体『何者』なのか。様々な時間軸で紡がれる物語が繋ぎ合わされた時、残酷で目を背けたくなるような真実が明かされる……。
感想
公開されてからしばらく経ったが、じわじわと話題になりつつある邦画を今更鑑賞。感想としては、邦画の嫌らしい部分を煮詰めて凝縮した、実に苦味溢れる良作だった。
自分が自分であるために。その一心で行動する市子はとても純粋で美しい。だけど、彼女が抜け出そうとする運命は底なし沼のようで、周りにいる人もみんな巻き込んで飲み込んでしまう。市子に深く関われば関わるほど、どんどん不幸になってしまうのだ。
プロポーズした途端に失踪された主人公の長谷川もそうだが、一番悲惨なのは森永悠希演じる北くん。彼女に惹かれ、手を差し伸べてしまったが最後、彼の人生は真っ逆さま。しかも、市子のことめっちゃ好きなのに全く相手にされないどころかいいように利用されてしまう。勘違い隠キャの解像度が高すぎて、見ていてかなり苦しかったです。
そんな北くんへの態度とか、普通に考えれば、市子ってかなり悪女なんだけど、見ている側として嫌悪感が沸かないのがすごい上手く作られてるなと感じました。他者への友愛は確かにありつつも、究極的には利己的であり、その生き方が魅力に繋がっているからなのかなと思ったり。
あとは杉咲花さんの演技がバチくそ可愛いっていうのも大きいんだと思います。何を考えてるか分かんない時のぼやけた感じも好きだし、感情が爆発して泣き叫ぶところも好き。もう二十代半ばなのに、高校生役も違和感ないのも恐ろしいです。
ミステリアスでもあり無邪気でもある市子は、そんな感じでとても魅力的なんですが、それに対して主人公である長谷川には物足りなさを感じました。市子との同棲生活はそこまで描かれてないのに、執念深く彼女を探す姿に違和感があります。キャラクターのバックボーンがあまりなく、写っている姿に共感できないというか、ギャップがあるというか。あくまで『市子』が主体の映画なのでそういうスタンスになるのは仕方ないとは思うんですが、もう少し理由づけが欲しかった。
あとは、時間軸の移り変わりが若干分かりづらかったかなと。かなり目まぐるしく過去と現代を行ったり来たりするんですけど、この話とあの話はどっちが先なんだ、って戸惑うことがチラホラありました。一応、画面では何年何月の出来事だと明示されてるんですけど、じゃあ市子が小学生だったのは〇〇年だな、とかは覚えきれませんでした。もうちょっとユーザーフレンドリィでないと、バカな私は混乱してしまいます。
まとめ。ミステリーとしても恋愛ものとしても完成度の高い一作。重く苦しい過去を生きてきたからこそ光り輝く市子に魅了される映画。でした。
以上、お疲れ様でした。
視聴:劇場
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