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【感想】運命じゃない人

2004年 日本
監督 内田けんじ
出演 中村靖日
   霧島れいか
   山中聡

あらすじ

根っからのお人好しである宮田は、親友である探偵・神田に誘われて、レストランへ食事に行く。失恋のショックを忘れられない宮田のために、神田はレストランへいた女・真紀をナンパ。
帰る場所がないと言う彼女を宮田は家に案内する。泊まるように勧めるが、その矢先、別れたはずの元彼女あゆみが急に訪ねてきた。
荷物を取りにきたという彼女に、なんて自分勝手なんだと言い捨てて、部屋を飛び出す真紀。宮田は走って追いかける。タクシーに乗る彼女になんとか追いつき、真希の携帯番号を聞き出した……。
平凡な出会いのワンシーンに隠された、複雑に絡み合うストーリー。視点を変えて明かされていく、一夜の愉快な物語。

感想

内田けんじ監督の消息を知っている人はいるだろうか。『鍵泥棒のメソッド』が公開されて以降、完全に映画界から姿を消してしまったように見えるのだが……。情報求ム。

それはさておき、本作の感想であるが、退屈な前半戦をいかに乗り越えられるかに掛かっている映画です。あらすじに書いてあるのが大体25分くらい流れるのだが、まあ面白くない。安っぽいメロドラマです。

だけど、この部分をしっかり見ていないと後半の面白さが半減してしまう。というのも、今作は前半にあった小さな違和感や物語の裏側を、違う人物の視点で繰り返し見せることで少しずつ明かされていき、最後には綺麗に繋がるという構成になっている。だからクソつまんないと思いながらも飛ばしてはいけない。

映画のちょうど折り返し辺りから、マジで面白さがグングン加速していきます。めっちゃスロースタートなんだけど、それまで溜まっていた退屈メーターがすっ飛んでいく。

この手の話って、伏線とかめっちゃ貼りまくって複雑になりすぎることが多々あるんだけど、本作はその辺りかなりスッキリしていたと思います。全然気を張らないでも、話の展開が容易にインプットされる。主要人物をぐっと絞ったのと、映画内の時間経過もほんの数時間程度という短さだったのが、分かりやすさの秘訣だったと思います。

次に物語の構成なんですが、同じ時間を違う視点から繰り返す、最近ではよく見かけるタイプの展開になってるのはさっき言いました。ただ、この映画が面白かったのは、3番目の視点です。

ストーリーの一巡目はもちろん宮田視点なんですけど、二人目の視点は友達の神田。あからさまに怪しい動きをしていたので、これはまぁそうなるだろうなと展開の予想ができました。ですが、3番目の視点は、これまでの主要人物から外れた意外な人物の視点なんです。これには驚かされつつ、上手い構成だなと感心しました。

何も知らない宮田の『一人称』から映画が始まり、その宮田を外側から見る神田の『二人称』、そして最後は第三者が物語全体を再構築する『三人称』となる。この段階の踏み方がめちゃくちゃ気持ちよかったです。脚本が絶賛されている理由がわかりました。(人称という言葉の使い方があからさまに間違ってますが、イメージはしやすいはず)

とまあ、脚本と構成は素晴らしいんですけど、そこに全振りしてるので、他の部分はB級映画としてもかなり低い水準でした。2000年代だったらもっと映像は綺麗にできただろうし、キャストの演技もなんかうーんて感じだし。音楽をぶつ切りにする演出が頻発するんですが、数回であれば面白いと思うんですけど、流石にやりすぎ。

そう言った安っぽさとか、前半戦の無味無臭っぷりが、サブスク全盛期の現代では不利な要素だなぁと感じました。そこを耐えられればめちゃ面白いんだけどなー。

まとめ。シンプルながらも綺麗に繋がっていくストーリーが見ていて気持ちいい。前半も飛ばさず見てね、って感じの映画です。

以上、本当に監督どこいったんだ? お疲れ様でした。

視聴:アマプラ

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