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私が映画館で劇場版スタァライトを観られなかったもう一つの理由

以前、私がスタァライトに出会ってから二次創作を書き始めるまでの経緯を投稿しました。


そこでは、専門医試験の受験要件を満たすために学術集会での症例発表が必要で、準備が忙しかったため劇場版を観に行く事は叶わなかった。と書きました。

それは嘘ではありません。しかし本当はもう一つ大きな理由がありました。
結論から言えば失恋の精神的なショックが大きく、観に行く気力が持てなかった、という事もその背景でした。

今回の記事は言ってしまえば私の自分語りに過ぎない記事であり、これを読まなかったからと言って今までに私の書いた小説や分析記事が分からないという事ではありません。
ですがいつか言葉にして綴る事で自分の中にあった心情を整理しようとは以前から思ってきました。新年度になると落ち着いて書ける時間を持てるようになるまでにきっと時間を要するでしょうし、3月の内に文章として書き出してみる事と致しました。

また以下の本文中でも触れますが、これまで書いてきた小説の中にはこの時の自分の経験を登場人物の立場や背景に置き換えて執筆したものがいくつかあります。そのため、今までに私がPixivに投稿した作品を読んで下さった方の中には、それと似たような表現や言い回しがある事に気付かれる方もいるかも知れません。
それは決して使い回したという事では無く、私が経験した事を題材として取り入れた作品が複数あったため、似たような描写になっている事を説明しておきます。

長い文章になりますが前編、後編とは分けずに一気に書いてしまおうと思います。

《以下の話はお相手の方に対して個人の特定に繋がらないようにして書いておりますが、万が一今後何らかの問題があれば、内容の一部修正もしくは削除を行う可能性がありますことをご了承下さい。》


私が想いを寄せた、今回の話に登場するお相手は以前に同じ病院で働いていた理学療法士の女性です。
ここではRさんと表記させて頂きます。(敢えて名字のイニシャルとは変えています)
また、以下の文章では当時のLINEの文章から抜粋した記載があります。
出来る限りその時の雰囲気、ニュアンスが伝わるようにしていますが、お互いの家族の事や職場の個人名が出てくる箇所などは伏せ字にするか削除するなどしております点は御理解下さい。

○当時の状況とRさんを意識したきっかけ
まずはその話に至るまでの状況を説明させて下さい。
当時、私は専攻医1年目(初期臨床研修を修了した直後なので医師になって3年目という事になります)としてリハビリテーション科の後期研修を行っている立場でした。
尚、私は書き言葉でも私という一人称を使うので時折、『女性の方ですか?』と質問されることがあるのですが私は男性ですのでその点は明記しておきます。

きっかけは仕事上での関わりでした。
当時私が受け持っていた患者さんに関しての書類の相談だったと思いますが、病院内の医局(ここでは大学の診療科という組織の意味では無く、院内で各医師のデスク等が並んでいるオフィスや控室のようなものとイメージして下さい)にRさんと、同じくその患者さんを担当して下さっていた作業療法士、医療ソーシャルワーカー(MSWと略して呼ばれる事もあります)の方と3人で来て頂いて、書類作成に関しての御相談を行っていました。

その頃、私は自分の本棚の一画にスタァライトの他にアイドルマスターミリオンライブやラブライブサンシャイン、五等分の花嫁といった作品のグッズを置いていまして、最初にそれに気が付いたのはMSWの方でした。
「これ、先生のですか?」
「そうなんです。実はこういうアニメとかゲームが好きでして……」
その会話を聞いて反応したのがRさんです。
「私もこういうの好きなので驚きました!」と。
どうやらアイマス、ラブライブなど有名なコンテンツは一通り押さえていて、アイドルマスターはデレマス以降の4ブランド(当時)はいずれも追っており、ラブライブはμ's〜Aqoursの頃に熱心に応援していたと話されました。
スタァライトの事も御存知でスタリラもプレイしているとのこと。
また、当時ゲームのサービスが開始したばかりのウマ娘もお好きであったようで、早速プレイを開始していると言っていたと思います。

そういった話の中、スタァライトに関しては私の方から「ちょうど近々映画(劇場版スタァライト)も公開されるので行こうと思っていて。」と口にするとRさんは「ロンド・ロンド・ロンドですよね。」と仰ったので、「いえ、その総集編から続く新たなストーリーが描かれる新作が公開されるんです。」
「あっ、そうなんですか!?それは知らなかったです!」
当時はロンド・ロンド・ロンドのBlu-ray発売後で、劇場版スタァライトの公開前という時期でした。

その会話を見ていたMSWさんが何気なく言った言葉が大きな鍵になりました。
「じゃあ今度一緒に観に行ったら良いですね!」
口調から見て、半分冗談も入っていたと思います。
私もその場では軽く流したものの、落ち着いて振り返ってみるにつれ冗談抜きで真剣に考えるべき事ではないかと感じるようになりました。
医師として働き出してからというもの、仕事に対する責任や患者さんから感謝された時の達成感を感じる事はありましたが、職場においてこんなに純粋に心から楽しい、幸せだと思えた時間は初めてでした。

もしも現時点でフリーだったとしても、私が悩んでまごまごしている間に誰かと交際を始められたという事になれば悔やんでも悔やみきれない。

翌日にはすぐ行動を始めました。

○劇場版スタァライトを観に行く提案とその結果
帰り道、劇場版スタァライトの前売り券を購入しました。セブンイレブンで発券したのでランダムで9種類のブロマイドがおまけに付いてきたのを覚えており、なんの偶然かそれがクロディーヌと真矢でした。

さらに次の日、リハビリテーション部に一度院内のPHSで電話をかけ、Rさんが現在どちらにいらっしゃるか、相談したい事があるけれども話をしに行っても大丈夫そうかを確認した上でリハ訓練室に向かい、患者さんのリハの合間を縫ってお話させて頂きました。
その瞬間には落ち着いて相談をするのは難しそうだという事で、一通りの業務が終わった後にRさんの都合が良い時間に医局まで来て頂くこととなりました。
(もし取り付く島も無かった時に備えて、緊急ではないけれども早いうちに相談しておきたいなという仕事の相談も手元に用意しておきましたが、プライベートな相談をしたい事をお伝えすると幸いにして後ろ向きな反応は見られなかったので、踏み切る事にしました。)

夕方になり、医局の前まで来て下さったRさんに、何度も頭の中でシミュレーションしていた言葉を伝えました。
「この前お話出来た事が凄く楽しくて、もしよろしかったら一緒にスタァライトの映画を観に行って頂けないかと思いました。」
「えっ、嬉しいです。ありがとうございます!」
そう言って受け取って頂き、またRさんがスタァライトでどのキャラクターがお好きなのか存じ上げなかったので天堂真矢のブロマイドの方を一緒に差し上げました。

そのままの流れでLINE交換にも快く応じて下さり、帰る途中も電車に乗りながら2往復程メッセージをやり取りしました。
“本日はお忙しい中本当にありがとうございました。”
と私が送ると
“お疲れ様です。お忙しい中お待たせしてしまい申し訳ありません。映画のチケットありがとうございます。購入頂いて恐縮です。
こちらこそよろしくお願いします。”
と返して来られました。

“いえいえ、私から誘ったことなのでお金の事は全然気になさらないで下さい。今度日程の事など御相談できればと思うので宜しくお願い致します。”
“承知しました。
こちらこそよろしくお願い致します。”

上記のやり取りで、どうやら願ったように事態は進めていけるかも知れない。
勇気を出して行動して良かった。そう感じていました、この時は。

しかし、夜の21時半頃にもう一度連絡が届いたのです。

“お疲れ様です。夜分遅くに申し訳ございません。

映画の件なのですが、チケットを購入して頂いたのと同時に、時間もお待たせしてしまったこともあり大変申し上げにくいのですが、私には今お付き合いしている方がおります。申し訳ありませんが2人での映画鑑賞は出来ないです。

頂いたチケットはお金を同封してお返しさせて頂きます。
映画ではなく院内でお会いした時にアイマスやラブライブの話が出来たら良いなと思っております。
お渡しして頂いた際に直接伝えず大変申し訳ございませんでした。”

これが届いたLINEの文章です。
こうして書き出してみると3年前の辛さ、悲しさが昨日の事の様に思い出されます。

本気でアタックしたいと想える人の為であれば別に千数百円のお金なんて全く惜しくは無かったし、一度差し上げた物ですので私に気兼ねせずそのチケットを使って観に行って頂いても全然良いと思っていました。
スタァライトが少しでも好きな人のお力になれるのなら身銭を切ってでも……と言うのは流石に自分でも綺麗事が過ぎますが、そもそも断られる可能性もあっての行動だったので駄目なら駄目で仕方ないと思っていたのです。

私も自分が医師だから相手は必ず提案に乗ってくれるだなんて考えていませんでしたし、そもそも既に誰かお付き合いされている相手がいる可能性だって十分にあるのは理解していました。
(尤も、他に交際している方がいるというのはこちらを極力傷付けない為の理由付けであるかも知れないと考える気持ちはありましたが、本当の事は知る由もないし、願わくば彼女の言葉はそのまま信じたいと思いました。)

しかし、一度受け取って貰い連絡先まで交換出来、今度日程を相談しましょうと言っていた矢先にやっぱり受け取れない、お返ししますと断られてしまったので率直に言って落胆は大きいものでした。
わざわざチケットを返却するためだけに連絡を取って、その代金も含めて返されてしまったと言う事は、先の文章が本当であれ嘘であれ、私には可能性は無いと言われたも同然に思われます。

結局翌週、週に一度医局会議と言って朝から医師と各部署のトップの方達が集まる会議の為に早く出勤する日があり、その日は本来より更に早く出勤し、待ち合わせていた時間に院内でチケットと代金を返却されました。
きっと断るにも勇気が要ったことでしょう。これ以上迷惑はかけられないし、どうあってももう食い下がる事は出来ないと分かっていましたが、対面した時にRさんがチケットと小さな袋に入れたチケット代金、そしてブロマイドを返そうとしてこられたので、せめてもの意地としてブロマイドだけは「受け取って下さい、私の気持ちとして差し上げたものですので。」と言ってそのまま持っていって頂きました。
自分が偽りなく想いを伝えたのだという証を何か相手に持っていて欲しかったから。

こうした経緯があって、精神的な落ち込みが大きく、かつ(言うまでもなくスタァライトというコンテンツ自体には何一つ罪が無い事とはいえ)劇場版スタァライトを観に行くという事は失恋をどうしても思い出す事になってしまうため、自分自身に『まあ、症例発表や病棟の業務が忙しいから仕方が無いな。』と言い聞かせて観に行かなかった。行けなかったのです。

その時の前売り券、そしてブロマイドは今でも捨てずに持っています。


保管する中で少し曲がってしまいましたが今でもずっと取っています


こちらが使わなかった前売り券です(店名等、一部にモザイク処理を行っております)


実はスタァライトはアニメもこの直後にはじっくり観返すのが辛く、スタリラも暫くの間は手を付けられない時期が続きました。しかしそれでも、これを乗り越えてスタァライトという作品の持つ魅力をもっと深く知りその世界観に触れていたいと改めて感じた事から、数ヶ月して少しずつまた舞台創造科としての活動を再開していきました。

これが2021年の3月〜夏にかけての話です。

○師長さんから聞いた思わぬ話ともう一度アプローチするまで
しかし私自身、仕方ないと思いつつも諦め切れずにいたのも率直な想いであり、Rさんを忘れることは出来ませんでした。
8月頃、当時私が主に勤務していた病棟の看護師長さんと別件の仕事の内容を相談する機会がありました。ふと数ヶ月前の事を諦め切れなかった私はその件も師長さんにお話してみました。
自分自身駄目元での行動で、そんな事相談してきてどうするの!とバッサリ言われる事も覚悟していましたが、良い意味で予想を裏切られ師長さんは親身に相談に乗って頂きました。

「その言葉は本当だと思う。同じ病棟の介護士の人と付き合っているみたいだから。」と教えて頂きました。
聞いた瞬間には複雑な感情が渦巻きました。
まず一つ嘘では無かった事に安堵したと共に、決して褒められた物ではないと自覚しながらももし今後別れる事があったなら自分にもチャンスがあるのだろうかという思い。
けれど彼氏さんの事はきっと強く想っていらっしゃるのだろうから、そう簡単に別れるような事態にはならないだろうという判断。

師長さんからは、取り敢えずお茶やランチに軽い感じで誘ってみてはどうかとアドバイスを頂いたものの、Rさんの心を乱すような迷惑はかけたくない。という表向きの理由と、再び駄目だったら立ち直れるか分からないという有り体な考えとがありました。

ですからそこから特に行動を起こせずにいたのですが、ある転機が訪れました。
その年の10月頃、同じように仕事の内容で師長さんと相談していた時に「そう言えばあの子とはどうなったの?」と訊かれました。
「それが…なかなか連絡が出来ていなくて…」と答えると「確かあの時の彼氏とは別れた筈だよ。」と。
一瞬、耳を疑いました。そしてこんな風に感じるなんて最低だと思いながらも、自分にも望みが出てきたのではという考えを感じずにはいられなかったのです。
「どう思う?」と訊かれて率直に「いや…こんな事思っちゃいけない筈なのに……」と言うと「大丈夫、気持ちは分かるよ。今ここに(彼女が)いるんじゃないのだから素直に言ったって良い。」と返して頂き、私も「ええ。正直、嬉しいと思ってしまいます。機会が巡ってきたかも知れないと思わずにいられなくて。」

師長さんは深く頷いて、こう話してくれました。
「別に嫌いだとかあなたとは付き合えないと言われた訳じゃないのなら、チャレンジしてみたらどう?
どっちにしたって何もしなかったら可能性は生まれない訳だし、上手くいけばトライして良かったねって事になると思うよ。ああ勿論いきなり『付き合ってくれ』なんて言ったら向こうも戸惑うだろうから、前も言ったみたいに軽く食事でもどうですかって感じで提案してみるのが良いんじゃないのかな。」

それに、私の考え方として受け身になるのではなく、これだと決断した時には自分の方から動き出したいという思いがあったので、成り行きに任せず自分の意志で行動した方が良いと思い至りました。

10月上旬に一度、
“突然の連絡失礼致します。
4月の時は大変申し訳ありませんでした。
また、誠実なお答えを頂き本当にありがとうございました。

この度、改めて仕事終わりにお食事でも御一緒出来ればと思い連絡致しました。
勿論、無理にお願いする事は出来ませんが、お嫌で無ければ御検討頂ければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。”
このようにLINEを送りました。

すると翌日に返信があり
“お疲れ様です。
4月はお気持ちを伝えて頂きありがとうございます。

お食事のお誘い嬉しいのですが、大変申し訳ありません。当初もお伝えした通り2人きりでの食事等は控えております。

改めてのお誘いありがとうございました。
宜しくお願い致します。”

これを読んで、ああ、いよいよもう脈は無いのだなと感じました。
背景としてはいくつか想定されうると思います。
実はあの時の彼氏さんとは別れていなかったか、純粋に私に恋愛対象としての興味が全く無いか、或いは既に別の方との交際をスタートされていたか。
ただ、そこで理由を突っ込んで訊くなんて事はあまりに失礼ですし、きっとそれを質問した所で、じゃあやっぱり何処かへ御一緒しますとはならなかった筈です。

ですからここでこの話は終わっていてもおかしくは無かったと思っています。

しかし、ふとした事からまた別の方向へ事態は動き出しました。

○院内で偶然の再会
翌年(2022年)1月の下旬頃だったと思います。仕事を終えて帰る時に偶然そのRさんと院内の階段で出くわしたのです。お互い目が合ったので即座に認識はしたと思います。私としては、まあこういう場面もいつかは来るだろうと思っていたので、「ああ、お疲れ様です。」と言って会釈をしてから立ち去ろうとしました。
しかし他ならぬ彼女の方から私に話しかけてきました。
「今もイベントとか行かれてるんですか?」と。

ちょうどその頃私は、鞄にメイファンかクロディーヌのキーホルダーを付けていたと記憶しているので、恐らくはそれを見て言及されたのでしょう。

それに対して私は「ええ、今でもスタァライトは追い続けていて、来月スピンオフの舞台を観に行くんです。」と返答しました。
(ちなみにここで言っている舞台とは-The LIVE エーデル- Delightの事です) 
するとRさんの方も「えっ!高い競争率をくぐり抜けて当選されるなんて凄いことですね!」と話を合わせて盛り上がってくれて、そこから数分、アイマスの話なども含めて話は弾みました。

こちらから以前の事をわざわざ持ち出すのも憚られたので別れ際に「またカンファレンスや病棟の仕事で御一緒する機会がありましたら宜しくお願い致します。」とお伝えし、「こちらこそよろしくお願いします。」と返して来られたので少なくとも私を嫌っている訳では無いみたいだ、と凄くほっとしました。

そして翌月の2月、天王洲へ観劇に行っている間も頭の片隅でずっと考えていました。
降って湧いたチャンスで偶然にも楽しく会話をする事が出来た。そして本人に訊く訳にはいかないし確実とは言えないけど以前の彼氏さんと別れたらしいという情報はある。
もう一度アタックするなら今しか無い。
けれども同時に慎重に動かなければいけないと考えました。

仮にプレゼントするために公演のTシャツやパンフレットを購入してきたなどと言うと前のめりの印象が強すぎて引かれてしまう可能性が高い。昨年10月の提案も断られているのだからあくまでも何かのついでという軽い形で無ければ多分また断られてしまう。
では来場者特典であればどうだろう。厳密に言えば入場チケットの料金に含まれていると言えなくも無いけれど、少なくとも見かけ上は入場時に無料で配布される物だし、実際2公演観て2組手元にあるのだから嘘をつく事にもならない。

何度も文面を考えた末に
“先日、東京でレヴュースタァライトの舞台を観てきました。2公演観劇したので来場者特典も2組手元にあり、せっかくなら1組差し上げたいと思いました。”と伝え、”勿論その見返りにどこかへ一緒に行って欲しいなどと求めるものではありません。気軽に受け取って貰えると嬉しいですが無理強いはしたくないので、要らないというのであれば遠慮なく断って下さい。”
とメッセージを送信しました。

すると
“お疲れ様です。
東京で舞台を見てこられたんですね!
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます。
でも東京まで行って見に行った舞台なので記念に持っていても良いのではないでしょうか。
階段で会った時話せて楽しかったです。
お気遣いありがとうございます。”

というのが返信の文章。この時も提案には乗って頂けませんでした。
しかし、予想していたと言うのは言い過ぎですが、この返信が来る可能性も有り得るとは考えており、次に考えていた内容を送りました。

“承知しました。それではお渡しするのは止めておきますね。
物凄い迫力で圧倒されました!

話は変わるのですが一つ伺いたい事があります。Rさんが今おすすめされるアニメやゲームはありますか?
というのも私は3月いっぱいでこちらを退職し、A病院に移ることになりました。
そんな中で仕事だけではなかなか辛いものがあり、何か息抜きが無いかと思って、”

これは別に私の意思で転勤を決めたのではなくて、若手の医者は基本的に1〜2年単位で所属する大学の教室(医局)の関連病院を転勤しながら経験を積むのが一般的であり、これも医局人事に伴うものでした。
(ちなみに、ここでの医局というのは先程と異なり病院内の場所を示すのではなく、医師が所属する大学の講座・教室の意味です。)

他の病院に転勤してしまってからでは本当に接点は持てなくなる。直接会えるかどうかは置いておいて、細くでも何か繋がりを保っていないと望みはゼロになるのは明らかでした。

するとRさんは返信の中で、その時はIDOLY PRIDEや原神というゲームをやっているという事を教えて頂けたと共に、私の事を研修医と思っている事も分かりました。(“転勤先の病院でも研修医として働かれるのですか?”という一文があったため)
それらを踏まえて送った私からの文章が以下になります。

“返信ありがとうございます。

原神というのは名前だけ聞いたことがありました。

アイドリープライドは出始めの頃にインストールだけして全然やっていなかったので、改めてやってみようと思います。

私は以前に2年間の初期研修(所謂、世間一般で言われる研修医)は修了し、3年目からの後期研修が始まると同時にこちらに赴任してきました。
今後は引き続き後期研修医(専攻医)としてA病院で臨床を行い、もしかすると今後、リハビリテーション科専門医を取得して再度こちらの病院に戻ってくるかも知れません。

趣味の事をお話できて本当に良かったです。これまでに職場でそうした話の出来る方がいなかったもので……
温かい御言葉ありがとうございます。
よろしければ、今後もあくまでも友人としてしつこくない程度に、趣味の話題で連絡させて頂いてよろしいでしょうか?”

そして更にRさんからの返信がありました。

“お疲れ様です。

原神はファイナルファンタジーのようなRPGです。
アイドリープライドは私も最近始めたゲームでまだまだですけど、少しずつ進めています。

研修医ではなく先生だったのですね、すみません。勉強不足でした。
そしたら、またお会いする機会があるかもしれないということですね。
試験等もあると思いますが頑張ってください。私はまだこちらの病院にいるつもりなので。

なかなか職場にはいないですよね。今度の赴任先にはいらっしゃらないのですか?
はい、こちらこそ。同じ趣味を持つ方とは連絡は取りたいです。ありがとうございます。”

(以下、さらにもう一往復分、私とその方のやり取りの抜粋になります)

“他職種の方からすると、研修医、専攻医、専門医などの区別はなかなかイメージが難しいでしょうし、あまり気になさらないで下さい。

専門医に向けての勉強や試験等、頑張ります。

本当でしたらこの3月に、医者になる人は医学部で何を学ぶのかや、研修医時代を含めた経歴の事、そして回復期リハビリ病棟の医師としてどのような視点から皆さんと仕事に取り組んでいるのかなどのお話を、病棟の看護師さん、療法士さん向けに行う予定で〇〇さん(※病棟看護師の主任さんの名前が入っていました)とも相談しながら準備していたのですが、昨今の事情で感染症のリスクを考慮した結果、皆で集まっての講演や勉強会が出来なくなり、ポシャってしまいました。

もし今後こちらに戻ってくることがあればその時に改めて講演させて頂くと思います。

学生の頃は、アイマスやラブライブくらいは少し分かる人が時折いましたが、それ以上深い話はなかなか出来ませんでした。
また、医者になってからは自分よりも遥かに年上の先生方と接することがほとんどだったのでそういった趣味の話をする機会自体無かったのが正直な所です。
なので、繰り返しになりますがこうした話で連絡を取り合える方が出来たのは嬉しいです。

実は最近好きが高じて二次創作(同人誌ではなく個人でやっています)を作ったりもしているのでゆくゆくはそのお話も出来ると幸いです。
(勿論、興味の無い話題に無理して合わせて頂く必要は無いので率直に言って頂ければと思います。)

この2年間色々とありがとうございます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。”

“試験応援しております。

そうだったんですね!凄いです!!
私よくイベントでサークル巡りとかしてました。

こちらこそ大変お世話になりました。ありがとうございました。”

このような経緯で、どうにか共通の趣味を持つ友人として連絡が取れそうな立場にまではこぎつける事が出来ました。
話は前後してしまいますが、院内の階段でRさんと会う少し前から主にスタァライトを題材とした二次創作は書き始めていました。
当初は失恋の悲しさを忘れられず、それをただ心の内だけに秘めておくのでは無く、この経験を何かに活かせないだろうか。そして数々の素晴らしい作品を読んで自分でも二次創作を書いてみようと考えて書いてみることにしたという経緯がありました。

形のある物を受け取って貰えないなら、形の無いものならどうだろう。
それまで書いていた小説が切り札になるかも知れないと一縷の望みをかけたのです。

○退職の際に小説を読んで頂いて
3月末、その病院での最終日の勤務を終えてから、これまでに書いた小説を3本ほどデータにしてLINEで送りました。

するとその日のうちに返信を頂き、予想していたよりも遥かに熱のこもった感想を頂きました。
以下が送った3作品それぞれに対して送られてきた感想です。
(※以下、LINEの文章から一部抜粋した部分が多く、どちらからどちらへの送信内容なのか分からないと読んでいて混乱すると思いますので、【】で表記させて頂きます。)

【Rさん→私】
《1通目》
“早速、双葉と薫子の小説を読ませていただきました。

医学に沿った話でスラスラと夢中になってあっという間に読んでしまいました…。文章もとても読みやすいです!レヴューはゲームしか触れていないのですが、双葉と薫子の組み合わせが1番好きで、信頼している仲間、友の死に関わる話でしたがとても感動しました…!”
(※香子の漢字が誤っていますが、当時送られてきた返信内容ママで載せております。)

《2通目》
“すみません。連続でそのままクロディーヌの小説も読んでしまいました…!

カップリングという表記をしていいのか分かりませんが、ふたかおと真矢クロが好きで、キャラクターではクロディーヌが一番好きなんです。

クロディーヌの真矢への気持ちが沢山溢れた話でとても好きです。真矢のクロディーヌの気持ちを否定しない所が愛だなと感じました!”

《3通目》
“純那の小説も全て読ませていただきました。通知うるさくしてしまいすみません。

適応障害特有の症状に悩む純那に寄り添うななの関係がとても胸に染みます…!

医学と好きな作品を掛け合わせるのも良いですね…!劇場の内容にも触れて本来の世界観を壊さずに物語を組み立てられるのは凄いです…!

すみません、幼稚な感想しか言えなくて…。小説ありがとうございました。”

この3つのメッセージを立て続けに頂いて、心底胸が熱くなりました。
失恋の苦しさを何とかして昇華しようと書き始めた小説が、こんな形で私とRさんとの繋がりを残してくれるなんて。本当に嬉しかった。

【私→Rさん】
“こんなに絶賛して頂けるとは思っていなかったので恐縮です。
自分の知っている方で、かつ原作を理解している方に読んで頂くのが初めてだったのでかなり緊張していたのですが、熱意の込もった感想を頂けてとても、とても嬉しいです!

こちらこそありがとうございます。
ここしばらくの間、小説を書くのが自分の息抜きになっていました。

ふたかお、真矢クロが好きと言う意見、分かります。
私も聖翔で一番好きなキャラクターはクロディーヌで、色々とグッズを買い集めています。

私は一番好きな作品もスタァライトなのでこれまではスタァライトに絞って書いてきましたが、Rさんの好きな作品を教えて頂ければ、その中から題材を選んで書いてみようかと考えています。

宜しければいくつか、好きなアニメやキャラクターを教えて頂けないでしょうか?”

【Rさん→私】
“感想や意見など自分の言葉にしようとすると語彙が不足してなかなか上手く伝えられなくて恥ずかしいのですが、内容とても素敵でした…!

クロちゃん可愛いですよね!

私の好きな作品はジャンプ作品が多いのでちはムギ先生(※実際には私の名字です)の趣味とはまた違うのかなと思いますが、今は呪術廻戦が特にお気に入りで、乙骨憂太と夏油傑が1番好きです。

他だと、アイマスは徳川まつり、大槻唯、佐藤心、SideMだと木村龍が好きです。ラブライブは東條希ですかね。”

このように話が進み、それを受けて私は以下のように文章を打ちました。

【私→Rさん】
“なるほど、確かにジャンプ系は全然詳しくないので呪術廻戦も名前を聞いたことがあるくらいの認識でした。不勉強で申し訳ありません。

実は以前はミリマスPだったのでその中で選ぶなら徳川まつりでしょうか。

東條希も面白そうですね。ただ、ラブライブは見ているのがサンシャイン以降からなので、μ'sのキャラクターはどこまで深く理解して書けるか少し難しいかも知れませんが、この機会に初代も勉強してみようかとも思っています。
私はAqoursは黒澤ダイヤ、Liellaでは葉月恋が好きなのですが、サンシャイン以降のシリーズでは好きなキャラクターはいますか?”

【Rさん→私】
“趣味はそれぞれなので大丈夫ですよ!
気になさらないでください。
サンシャインは小原鞠莉が好きです。以降は未履修です…。
被ってるコンテンツの方が描きやすいですよね。”

【私→Rさん】
“色々と教えて頂いてありがとうございます!

時間はかかるかも知れませんが、今名前が出た中からどれか選んで書いてみます。
またよろしければ完成したら読んで頂けると嬉しいです。宜しくお願い致します。”

【Rさん→私】
“お疲れ様です。

小説楽しみにしています。

余談なのですが、私、来年度(※)より理学療法士から介護士へ転職することにしました。ちはムギ先生がこちらの病院に戻られることになったらまたその時は宜しくお願いいたします。”
(※来年度、とありますがこれはRさんの書き間違いか勘違いだったようで、実際にはこの直後の4月からも理学療法士として勤務されていたようです。)

ここまでがその日にやり取りしたメッセージ内容です。
(その時点から見て)およそ1年前にきっかけとなった医局での会話以来、ここまでRさんが前向きに色々と伝えて下さったのは初めてで、一気に視界が開けたように感じられました。

勤務最終日にして糸口を掴む事が出来た私は、次に書く小説のテーマをRさんの好きな作品の中からどれにしようかと早速考え始めていたのを覚えています。

新年度になってからは月に1回、新しく書いた小説をデータにして送信し、翌日にはその感想とともに近況を伝え合う。そして最後にはまた来月、メッセージを交換する約束をして一区切りにする。
そんな生活が4月、5月と続き、特に5月の時にはミリマスでは紗代子視点でまつりとの関係を描いた小説を、ラブライブサンシャインではダイヤの視点から鞠莉との関係性を描いた小説を書いて送りました。

勿論Pixivという場で様々な方に二次創作の小説を読んで頂ける事はこの上なくありがたい事です。
しかしながら誰か一人に読んで頂くために小説を書き、見知った相手から真剣な感想を返して貰えるというのはまた大いに違った緊張感と喜びがあり、冗談抜きで一日、一日が楽しかったです。

また、5月に小説を送った時にはちょうど誕生日の時期だった事もあって、一層喜んで頂きました。

【Rさん→私】
“お疲れ様です。
贈り物の小説嬉しいです。さっそく読ませていただきます!

お忙しい中、作っていただきありがとうございます。”
(以下は引き続いて、Rさんからのメッセージです)
“2つの小説読ませていただきました。
マリーとまつりの話でとても嬉しいです。ダイ鞠で誕生日のお祝いの内容でとても読みやすかったです。大学生になっても幼馴染のことを思い出しながら過ごしていてほしいなって思える内容でとても好きです。

アイマスの小説も書いてくださったんですね。紗代子視点でのまつりとのお話ですね、紗代子視点なのがとても印象的でした。成長してアイドルを辞めた後も何かのきっかけでまた新たな関係が築かれるのいいですよね。
2つの作品どちらもとても読みやすかったです…!

素敵な作品をいつも送ってくださりありがとうございます。”

次に私からはこう送りました。

【私→Rさん】
“返信ありがとうございます。

素敵な作品だと言って頂く事が出来て良かったです。

最近では忙しい中でも時間を見つけて小説を書くのがこれまで以上にストレス解消になっており、以前にもお好きなキャラクターを伺いましたがそれ以外にも好きなキャラや、こういったキャラクター、作品、テーマの小説が読んでみたいというものがありましたら、また書いてみようと思うので教えて頂ければと思います。”

【Rさん→私】
“また作品楽しみにしております。

私はウマ娘だとゴルシが好きです。シャニマスだと千雪を担当しております。
五等分の花嫁は内容は分からないのですが、キャラクターだけだと二乃が好きですね。
バンドリは名前しか存じ上げません…。

余計なお世話だとは思いますが、ちはムギ先生の体調優先で大丈夫ですので…。また新しい作品が出来ましたら教えていただきたいです。”

【私→Rさん】
“御心配頂いて本当にありがとうございます。余計なお世話だなんてことは全くありません。気遣って頂けるのは心から有難い事です。

確かに体は資本と言いますし、自分の中でもバランスを取りつつ書くことも続けていきたいと思います。
どうかRさんもご自愛されて下さい。”

そしてこの日のラストにRさんから頂いたメッセージが以下の内容でした。

【Rさん→私】
“先生も仕事と後輩の指導などが重なり負担が大きくなっているかと思います。お元気に過ごせるよう祈っております。

送って頂いた小説を読むのがとても気分転換になっております。素敵なプレゼントありがとうございます。

ありがとうございます。とてもいい1日になりました。”

このメッセージを見て思ったのは、紆余曲折あったけれど諦めずに心から好きだと想える人にアプローチしてきて本当に良かった。ということ。

このまま地道に連絡を続けていけばいつか交際する事を実現できるかも知れない。
そしてそうなれば最も嬉しい事だけれども、仮に交際する形にならなくても共通の趣味で話が出来る異性の友人としての関係性を保って行くことが出来たなら、私の生活に張り合いも出る事でしょうし、Rさんにとってもプラスになっていれば良いなと考えるようになっていました。

○2022年6月、突然の……

それから私は以前にもまして小説の執筆に力を入れ、今までは月の下旬に送っていた所を、この時には上旬の6月6日に送信したのです。
普段は当日か、翌日には反応を頂きますがこの時は違いました。

最初はお忙しい中で直ぐには既読が付かないのも当然だと思いました。療法士の方々も院内での配置転換や、後輩の指導もあることでしょう。焦らないで待とうと。
ですが普段なら遅くとも翌日には返信が来ていたのが、この時には4日、5日と経っても既読が付かない。それだけお仕事が立て込んでいるんだと考えつつも徐々に今までと違う嫌な予感も生じてきていました。

もし本当に多忙な中で私から催促するのは大変失礼で申し訳無い事になるので、もう一回連絡するのなら何らかの別の理由があった方が良い。
そして考えついたのはちょうど1週間でLINEで送信したWordファイルの閲覧期限が切れる形となるので、それを過ぎても既読が無いようならもう一度同じファイルを送ってみることにしました。

果たして1週間経過しても状況に変化は無く、念の為さらに数日待った後に
“以前送ったファイルの閲覧期限が切れてしまったかと思うので、再度送信させて頂きます。急かすつもりは全くありませんので、お時間のある時に見て頂けますと幸いです。
宜しくお願い致します。”

改めてWordファイルと共に、このようにメッセージを送信したのですが、結局その後も1週間、2週間としても既読を含めた反応が全く無い。
もしかしたら……頭に過ってはいたけれども確かめるのが怖くて後回しにしていた事をいよいよ調べなくてはいけないと決断しました。

アニメや漫画などのスタンプは元から持っている可能性が高いから所持していないであろうスタンプを選んでプレゼントを押す…
画面に表示されたのは
【相手はこのスタンプを持っているためプレゼントできません】
どうして、いやたまたま同じスタンプを持っていたのではないかと何度他のスタンプに変更して試みても結果は同じでした。

LINEの仕様上、【あなたはブロックされています】と表示される事はありませんから100%の断言は出来ません。
しかし、スタンプのプレゼントを試みた際のシステムメッセージや既読がつかない事、その他にも相手から反応が得られない事を総合すると、かなりの確率でブロックされているという結論に達しました。

ブロックされたであろう事に対して、すぐに思い当たる理由はありませんでした。
少なくともこれまでの連絡においては相手が突然連絡を断ち切りたくなるような様子は無かったですし、直近の5月の時には先に述べたようにお互い良い印象で連絡を締めくくる事が出来ていたと思うからです。
いつもより半月程早い時期の連絡だったから向こうが引いてしまった、もしくは今回の小説の内容自体がお気に召さなかった……とするのは無理があるように思われます。
そもそも送ったファイルが閲覧されていないので小説の内容からRさんが気分を害する事は無い筈ですし、受信したメッセージを他のアプリ等を使って既読を付けないように読んだとしてもブロックの操作をするならLINEのトーク画面は開く筈。そうして考えていくと、前回の連絡からの10日間程の間に、私から今回の連絡を行う前には既にブロックされていたとするのが最も自然と考えられました。

勿論、有り得る展開を想定するならどなたかと急遽結婚が決まったという事も考えられるでしょう。ともすると、介護士への転身を検討されていたのは以前から交際されていた介護士の男性との話し合いでそうなったのか、あるいはまた別の介護福祉士の方との結婚の話が持ち上がり、同じ職種として働けるようにと考えての事かも知れません。
しかしそうであっても何の兆候も無く完全に連絡を取れなくなるのはどのような理由を考えたにせよ自然に理解出来るものではありませんでした。

それに確定ではないにせよ、私が数年後にまた同じ病院に戻って来る可能性もある事を伝えた上での彼女の行動(実際、RさんからもLINEのやり取りにおいて
“先生がこちらの病院に戻られることになったらまたその時は宜しくお願いいたします”とあったようにこの事は理解されていた筈)であり、余程の差し迫った事情か強固な意思により決定なされた事なのだと思います。

LINEの操作を何かのはずみで間違って行ってしまったという事もそうそう考えにくいとは思いながらも、何かの間違いで起こった可能性は否定してからでなければ諦めるのはまだ早い。
自分から負けを認めるのは本当に最後の最後に至ってからでありたい。

そう考えて私はWordファイルで送っていた小説を改めて紙に印刷し、手書きの手紙と共に郵送しました。

手紙の文章が以下になります。

〈Rさんへ
 この度はお手紙という形で御連絡させて頂いた事に驚かれたと思います。
まずは先日、Rさんのお誕生日の時に色々とメッセージでやり取りをさせて頂けて本当に嬉しかったです。

 次に今回こうして連絡するに至った理由を説明させて下さい。
去る6月6日に、いつもより早い時期ではありますが以前より書いていたスタァライトの小説が完成し、これまでと同様にWordファイルにしたものをLINEで送信致しました。

 今までは恐らく、読んですぐにお返事を書いて頂いていたのだと思いますが時には御多忙の中でお時間が取れない事もあると思いましたし、そうした時に催促するような事はしたくなかったので待っておりました。
 しかし今回、何日かしてもRさんからの反応が得られなかった事に加えてLINEでの添付ファイルの閲覧期限が1週間ということもあり、改めて6月19日に同じファイルをLINEで送りました。

 しかしながら今に至るまでメッセージに既読が付かず、もしかすると体調を崩されていたりなどしてしばらくの間LINEも開けない状況なのであれば連絡すること自体が負担になってしまうのではと迷う思いがありましたが、郵便であればご都合の良い時に読んで頂けるのではと考え、大変失礼を承知の上でこうして手紙を送った次第です。

 率直に申し上げるなら何らかの理由で私が嫌われてしまい、既読が付かないように立ち回られているのではという事も考えないでは無かったですし、あるいは反対に先程書いたことは完全に取り越し苦労で、単にお仕事やその他の事柄でお忙しかったという事なのかも知れません。
 あくまで私には推察する事しか出来ませんが前述した考えからの行動であったことは御理解下されば幸いです。

 今回、小説は紙に印刷したものを同封します。
 勿論、私は読んで頂く事を強制できるような立場では無いというのは重々承知しております。
 ですがもしRさんが嫌だというのでなければ読んでのご感想を頂き、お互いの趣味の事などについて連絡を取る事が出来るなら、それは私にとってはこの上ない喜びです。

 この手紙を読んだ上で、Rさんの意思として私と連絡はしたくないという事であればそれは尊重して受け止めるしかないと思っております。
 しかしその場合でも、せめて一度だけでも(仮に大過なく生活されておられるならその旨だけでも)LINE、手紙、どういった形でも構いません。
Rさんからのお返事を頂ける事を切に、願っております。〉

ですがその後、一度も返信は届きませんでした。
最悪、封筒を開封せず捨てられてしまったとしても私から郵便が届いた事は認識したでしょうし、その上でどのような形式でも私と連絡しないと選択されたのなら、もう受け入れるしかありませんでした。

これが正真正銘の、Rさんとの最後のやり取りでした。

◇◇◇

○今の私の思いとこれから
今年の6月で、あれからちょうど2年になります。
これは建前ではなく本心からの思いとして、Rさんに対して恨んでいるとか憎いといった感情はありません。
ただこうして今でも克明に覚えているのは、素直に言うならば無念さと、自分が選ばれなかった事への悔しさを強く感じているからです。

私が常に自分に言い聞かせているのは捻くれない事。
自分が想いを寄せた相手に想いが通じなかった時、ともすると『どうしてこの気持ちを受け取って貰えないんだ!』とか『想いを分かってくれない相手が悪いんだ。』とついつい思いたくなります。

しかし冷静に考えれば相手の方は(自由恋愛としては)何一つ悪い事はしていない訳です。
願わくば何らかの事情があったのなら知りたいと思いましたし、連絡が取れなくなった事に深くショックは受けましたがそれもRさんの意思です。

そしてこの事を一つの教訓として、とにかく謙虚にあらゆる物事へと臨み、向き合っていくようになりました。
それまでも決して自身が医師だから看護師や療法士の方々よりも上だ、とか偉ぶった振る舞いをしても良いんだなどと考えた事はありませんでした。
ただ、この経験を通じて大きな挫折を味わった事により、医師という立場・職業にあることを理由に理学療法士の彼女が私に好意を持って貰える事は無いのだと。少なくとも私にとってはそれが恋愛面で決して強みにはならないと実感しました。
(勿論個人個人の考え方や状況によって異なるものであるのは承知の上です)

だからこそ、これまで以上にひたむきに、いつか振り返った時に恥じる事の無い生き方をしてきたと言えるようにしなければ。それが自分のやるべき事だと無理やりにでも自らに言い聞かせてどうにか過ごしてきました。

語弊を恐れずに言うなら、いつかRさんを後悔させられるような人になりたいというのが今の私の思いです。
これは別に報復をしてやろうだとか恨み言を直接ぶつけたいという意味ではありません。
むしろそんな行為をするようでは、私を振った(彼女の真意はまた異なるのかも知れないですが、あえてこう表現します)のは正しい選択だったと正当性を与えるに等しい事になるでしょう。

そうではなく、日々患者さんを目の前にして失恋の辛さに浸ってばかりもいられなかったという事情もありましたが、まずは自分がやるべき目の前の事に真剣に取り組もうと考え、症例発表や専攻医としてのレポート作成を乗り越え、リハビリテーション科の専門医を取得するまで進んで来られました。
ただ、専門医取得で満足して尊大な態度を取ったりいい加減に仕事に向かうようでは台無しになりますから絶対に慢心せず、卑屈になる事はないけれどもどんな時も謙虚に仕事にも、それ以外のあらゆる事にも向かっていこうと思います。

もし将来、Rさんが風の噂で私の事を聞いて、ほんの少しでも「ああ、あの時振ってしまったのは失敗だったな。」と思って貰える事があれば私としては十分です。
そんな機会が訪れる事が本当にあるかどうか、あったとしてもそのタイミングも私は知る由もないけれど、私はRさんとのエピソードを忘れることは出来なくとも前向きに進んでいければと思うのです。

また、私にとってスタァライトはどうしても過去の辛い経験を思い出すものであるという側面がある(特に劇場版スタァライトと-The LIVE エーデル- Delightを観直す時にはいつもその思いを強くします)、と同時にそこから立ち直るための気力を与え、日々の中で大いに自分自身を助けてくれる存在であったのもまた、紛れもなくスタァライトなのです。
この経験をしたからこそ舞台創造科として表現できる事がある……なんて言うのは自分自身や過去のエピソードのことを良く言い過ぎになるでしょうが、単に悔しい出来事だった、で終わらないように自らの糧としていきたい。私はそう考えています。

以上が今回書きたかった事になります。
長くなりましたがこの度は読んで頂き本当にありがとうございました。
同じように過去の失恋で苦しんでいる方を勇気付けたいだとかそんな偉そうな事は言えません。ただ、もし似たような経験で苦しさや辛さを感じている方がいらっしゃれば、こうやって過去の経験を捉えている者もいるんだなと知って、何かしらの感想を持って頂けますと幸いです。

重ねて、今回はお読み頂きありがとうございました。

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