Be Place シニアのネットウォーキング
社会とつながる指先探訪
●下手の考え休むに似たり
リタイアしたシニアの居場所探しはなかなかうまくいかない。出かけて行けるような場所はもちろん、いわゆる心の拠り所とか気持ちの置き所なんかはもっとみつけられない。今までは必要に迫られて否応なくアクションしてきた日々そのものがリアルな居場所だったりしたのかもしれません。呪縛から解き放たれた反動でしょうか、漠然としながら無から有を生む苦しさとはこういうことなのかと気が付いて気力が萎えてしまうことも。
識者によれば自由人になってからの焦りは禁物だそうですが、何もしないことで感じる重圧感はこれまでの仕事人生で幾度となく味わったプレッシャーとはまったく違って深い闇のようにじわじわと沈殿していきます。そんなとき「出口戦略を考えなければ」といったように使い古したビジネス用語など思い出してみても役に立たないどころかため息ものです。とはいえ、とにかく気分転換に外に出かけようかと無理強いしても路頭に迷うだけ、「書を捨てよ、町へ出よう」という言葉が魅力的に響いたのは若かりし遠い過去のことでした。ただ、疲れるだけです。
でも、そんなときこそ「下手の考え休むに似たり」、逆手にとって居直ってみましょう。もともと休んでいるようなものですから人には迷惑をかけず、あせらず無益なことでもあれこれとゆっくり思案に浸りながら、無理せずウォーキングを。でも、ほんとうの散歩じゃなくてネットでウォーキングです。
●ネット道、便利と危険の分水嶺
本来、技術の革新・進歩は生活を便利にするためのものであるはずですが。いまシニアと呼ばれる人たちは生まれたときに当然パソコンなどはなく、電話も固定電話からはじまりその後はフィーチャーフォンやらガラケー、スマホと機能の進化とともに名称をカメレオンのように変えつづける携帯電話を手にしました。スマホはもはや通信手段というより日常生活を過ごすためのマストアイテムです。
しかし、居酒屋での注文もスマホでやってくれといわれる時代はシニアにとって便利なのかどうかは疑問な側面もちらほらと。もしかすると利便性を通り越してフィッシング詐欺に引っかかるきっかけもあったりするので要注意な道具でもあります。もはや身に馴染んだレベルに留まって、新しい機能やアプリを追いかけたりせずに必要最低限だと思われる自分にとって便利な領域だけを使うぐらいでちょうど良いのかもしれません。
●動かずして世間を知る
「ネットサーフィン」は確かに死語ですが、かといって「ブラウジング」や「ググる」というように似合わないフレーズは止めましょう。ここでは身の丈に合ったところの「ネットでウォーキングする」くらいのイメージです。もっとも何をやっているのかなんて人に聞かれもしないし発表することもありませんので、動かずして世間をゆっくりと知る旅に出かけましょう、いわゆる検索の旅へ。
では、何を調べるのか? それこそ自由ですが目的が無ければ動きづらいし煮詰まってしまいます。何かきっかけさえあればどんどんつながってサーフィン、いやいやウォーキングのように前に進み始められますが、さて。
●目的は違ってもどうせ散歩ですから
どうやら世の中では「副業」が注目を浴びています。「複業」とも表記されることもあります。現役世代の収入増狙いだけでなく、キャリアアップや将来の独立を算段したケースもあったりしますが、シニア世代も年金にプラスして生活費補充というリアルな側面も取りざたされていますのでどこかで見聞きしたことのあるテーマではないでしょうか。
「副業」はもちろん収入を目的にするものですが、あまりそのことは考えないでどんなものがあるのかネットで調べてみます。「クラウドワーク」などさまざまなネットサービスがありますが手始めは登録にあまり負担の無いものからが始めるのがよいでしょう。
続いてアプローチするジャンルは、当然、自宅もしくはどこからでもパソコンやスマホで参加できる案件です。人はそれぞれ興味や得意分野が違いますから依頼案件に対する獲得実績だけを目標にすると着手案件も絞られますが、もともとそれほど収入に固執してなければ自分にとって何がヒントになるか分かりませんので興味本位でアクセスするぐらいの余裕をもって選びます。
ただ、散歩のつもりでアプローチするならネット上でのやり取りとはいえ時間や条件に制約事項が多くあるものは避けた方が良いかもしれません。イメージでいうと「公募」のようなものだと良い意味で責任がなくエントリーできるのでお勧めです。最初はアクセスするために登録したりする必要があるかもしれませんがハードルはそんなに高くないはずです。
●社会勉強からリハビリへ
たとえば、「キャッチコピー」や「会社名・店舗名」の募集があったとします。クライアントは多岐に広がっていてなかにはとてもニッチなものもあり、オーダー内容に全く知らない業種や専門用語が混じっていることが往々にしてあります。さて、そこでなにやら検索がはじまります。結果、キャッチコピーやネーミングが上手く思いつかなくても色々調べていくうちに「へえ」とか「なるほど」とか今更ながら勉強になることも多いのでは。
それらは自分が長く携わってきた仕事領域とは全く関係のない世界に触れる場面でもあったりしてそれなりに面白い気づきもあります。そうやって少しは社会勉強なり世の中の動きにリハビリ感覚でアクセスするのがシニアの「ネットウォーキング」。分かりやすい「居場所」ではありませんがきっかけぐらいにはなるかもしれません。ただし、ウォーキング感覚です、決して「徘徊」にはならないように。
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