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After All -とどのつまり、こころを打ち明けることは思った以上に難しい-

新曲「After All」がリリースされました。あまり今までやったことがないテイストの曲で、メンバーそれぞれが新しいことに挑戦していると思います。リリースに伴って久々に駄文を連ねますが、曲を聴きながらお付き合いいただけたら。

↓楽曲は各種サブスクより配信中

https://orcd.co/ano-afterall


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「自分のこと、なんでもっとちゃんとわかってくれないんだろう」
というようなことを、切実に思ったことがある人は結構多いと思う。別に恋愛に限らず、人間関係一般について、こういうフラストレーションを覚えることは、よくある。

僕は、「人と人は原理的に理解し合えない」ということを大きなテーマとしてしつこいくらい曲にしてきている(し、これからもずっと作り続けたいと思う)。こういう考えからすると、まぁ他人の心は分からなくて当然というか、人間ってそういうもんだから仕方ないよねと言いたくもなる。ただ、この「分かり合えなさ」を言い訳にして、「どうせ言っても分かんないから」と諦めるのも違う感じがするし、かといって「言わなくても察してよ」というのもなんか傲慢な感じがする。別の考え方をすると、「分かり合えないからこそ伝えようと努力する」べきだし、聞き手は「分からないからこそ少しでも理解できるように努力する」べきなんだろうと思う。出来るかどうかはさて置き、そのように他者と向き合う姿勢のことを言っているのである。

だが、この「伝える」ということが厄介だ。自分の思うようにことが進まないとき逐一素直にその気持ちを伝えていたら、それこそただのわがままになってしまう。言いたいことははっきり言ったほうがいいと、頭ではわかっていても、それが受け手の側にとってどう響くか。面倒なヤツだと思われたら嫌だな、こいつと話すのしんどいな、とか思われないだろうか…。そんなつもりなかったのに、気付いたら喧嘩になってしまったり。そんなことを細かく突き詰めていくと、自分と他者との絶対的な断絶を目の前にして、身動きが取れなくなってしまうようだ。悪循環。


とどのつまり、こころを打ち明けることは思った以上に難しい。


当たり前のことを言っているように思われるが、このことは非常に高度な倫理的態度の問題だ。でも、そういう風に葛藤しながら、時には自分の醜さを露呈しながらも、相手に伝わるはずだと信じて向き合うその姿勢は、この上なく人間っぽいと思う。自分の心を相手に伝えようとする行為は、それゆえに、尊いものだとも思う。しばしば、意見が異なることがよくないことだと思われがちだが、実は考えが違うこと自体は悪いことでもなんでもなくて(それこそ分かり合えないのだから当然である)、じゃあどうやって足並み揃えましょうかね、って向き合う姿勢を放棄したとき、人は愚かになるのだ。

だから、完全な余談ではあるが、「俺たちとは意見が違うからアイツは敵だ!」みたいなのはホントに辟易する(こういう風潮はここ数年でかなり目につくようになったように思う)。「政治の本質は友と敵を峻別することだ」とある思想家は言ったが、まさにそのことを極端に悪い方向に具現化しているような世の中。「で、お前は敵なのか味方なのか、どっちだ」なんて恐ろしいこと、僕は他人には口が裂けても言えない。敵でも味方でもない、何だか良くわからない立場があってもいいと思うんだけど。


…と、毎度のことながら抽象的な事柄についてでした。コミュニケーションの(不)可能性みたいなことが、この曲の一つのテーマとしてはあります。


楽曲のサウンド面としては、いわゆるコンテンポラリーのR&B、ネオソウルあたりを目指して作り始めた。数年前から、日本のポピュラー音楽にブラックミュージックが取り入れられるというその仕方が、以前に増して顕著になった。個人的には特に2015〜6年とか。


タイムラグはあるが、もれなく自分もそういうスウィートな曲がやりたいと思ってこの曲を書いたのだが、レコーディングを終えてみると、やっぱりevening cinemaっぽくなっちゃったと思う。特にメロディーラインと歌い方なんだと思うけど、あまり落ち着いて聴けないというか、ソワソワしちゃうというか、なかなか按配が難しい(笑)。でも、それで良いんだと思ってる。ダラダラしたい時、リラックスしたい時に聴き流してもらえるような曲も素晴らしいんだけど、どちらかと言えば、絶賛恋愛中で、下手な覚悟で聴くと重くてメンタル持ってかれちゃう、みたいな…。結果的には、ポップスとR&Bの中間を狙うという落とし所を見つけまして、いい出来になったんじゃないかなぁと。


ま、それぞれが自分の聴き方で楽しんでくれれば、それで良い。


新曲は溜まりまくっていて、鋭意制作中。これからもよろしくお願いします。

↓「After All」配信リンク

https://orcd.co/ano-afterall








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