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ドイツの美大入試において、実技試験をスキップして合格するには

ドイツの美大入試と日本の美大入試の違いの内の一つに、ドイツの美大入試では、事前に入りたいクラスの教授に個人でアポを取って自分の作品を紹介出来るというものがあります。特に、日本の美大を卒業した後にドイツの美大で修士をやりたい人は、何故わざわざドイツまで来てもう一度勉強したいのかを、教授にしっかりと説明した方が良いです。ここで注意が必要なのは、ベルリン芸術大学の絵画や彫刻といった所謂ファイン系の学部に行きたい場合、日本で同じファイン系の学士を持っていると、多くの場合書類審査の段階で落とされてしまうということです。(5,6年程前の情報です。必ず最新の募集要項に目を通して下さい)

ベルリン芸大のファインアート専攻には学士課程・修士過程というものはなく、ドイツに存在する他の多くの美大と同じように、ディプロムという五年制の過程が設けられている為、もし日本で学士をやっている場合、編入という形になるか一年目からやり直すことになります。私は日本の美大でデザインを専攻し、その後専攻を変えるという形なので制度上問題なく、教授との話し合いの結果編入生となりました。
例えば、もし日本で彫刻を勉強していてそれから引き続き同じことを学びたい場合は、他の大学を選ぶか、ベルリン芸大のメディアアート専攻を受けてみるのもいいかと思います。メディアアート専攻は校舎は違えどとても人気の専攻ですし、工房はファイン専攻の学生とほぼ同じように利用出来ます。大学に入ってからやっぱり学びたいことが変わったと専攻や大学まで変えるドイツ人も多く、また、専攻は変えずにクラスで自分の好きなことだけをやっている人も結構います。


題名にある、入試における実技試験のスキップの話に移りましょう。もちろんどの大学もスキップが出来るわけではありません。私はベルリンから近いという理由でライプツィヒとハンブルクの美大にもポートフォリオを送っていますが、どちらもポートフォリオのみ試験なしで合格しています。スキップのための第一条件は先に言った、教授と事前に会うことです。私は出願時期より早くに教授の個人アドレスにポートフォリオを添付したメールを送り、是非クラスで勉強したい旨を伝えました。メールを送った直後は全く落ち着かず、果たして返事は来るのだろうか、来たとしてもここはドイツなのだからずっと後だろうと考えました。しかし実際には、メールを送った数時間後には教授から返信が届き、そしてその文面から、教授がかなりこちらに興味を示していることが伺えました。教授は私の作品を詩的で素晴らしいと絶賛し、是非会いに来てと言ってくれました。


多くの場合、メールを送っても返事はなく、とても親切な教授の場合には一言断りのメールが届くそうです。とある学生は、大学のホームページに載っている教授のメールアドレスに片っ端からメールを送り、とにかく返信をくれた教授の大学に編入しただけだと言っていました。
私が出願時期より前に教授とコンタクトを取ったのは、ポートフォリオ提出の時期では他の受験生も皆一斉にメールを送り、私のメールもその中に埋もれてしまうと考えたからです。実際に後から教授に話を聞くと、教授陣はその時期に毎年百通近くのメールを受け取るそうです。ですから、出来ることなら早めにポートフォリオは完成させて、早めに教授に丁寧なメールを送ることをお勧めします


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教授から指定された日時に大学に行くと、教授一人が部屋で待っているか、もしくはクラスの学生の前でプレゼンテーションをすることになります。プレゼンの形式は自由で、スライドに映しても良いし、作品実物を持って来ている人や紙のポートフォリオを持って来ている人もいました。私はスライドで説明をしたのですが、その際にはUSBだけでなく、多少重くても自分が普段使っているパソコンを持って行くことを強くお勧めします。なぜなら、私がプレゼンを行っている最中に大学のパソコンがフリーズし、写真・映像なしの状態で、自分の作品の説明をドイツ語で、二十人のドイツ人を前に行わなければならないという血も凍る事態になったからです。


ドイツの学生と教授は、プレゼンの最後に必ずいくつもの質問を投げかけて来るので、事前にある程度質問を予測して準備しましょう。質問が沢山来れば、それは彼らがこちらの作品に興味を持っているという証拠です。
無事にプレゼンが終わり、教授と学生に作品を気に入られれば、その日のうちか後日に教授からの推薦状が貰えます。それをポートフォリオ提出の際に同封して送り、その後大学の試験委員会がポートフォリオを審査し、試験の必要がないくらい実力が十分だと判断されれば、実技試験をスキップして面接に進むことが出来ます。

ありがとうございます。もっと記事を書きます。