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人材育成、目標設定、数字の達成—Emoで学んだのはベンチャーマネージャーが対峙する壁に立ち向かうためのマネジメントの型

急成長を目指すベンチャーマネージャーを対象としたスクール&コミュニティ「Emo」。ここでマネジメントの体系的なスキルと生きた知を学んだビジネスパーソンたちがいま、その可能性を次々と広げています。そんなEmoの卒業生たちにフォーカスを当て、マネジメントを学ぶことがどうキャリアを前進させていくのかうかがっていく本連載。第3回は、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに掲げ、さまざまなデータやコンテンツを提供するユーザベースのSaaS事業コミュニティ担当執行役員、大沢遼平さんです。

【大沢さんのご経歴】
2014年:京都大学大学院を修了し、丸紅に入社。同社電力本部にて、豪州、米国の電力IPP(Independent Power Producer)事業(投資事業)に従事。
2016年:ユーザベースに参画し、プロフェッショナルファーム(ファンド、コンサルティングファーム、アドバイザリー等)や事業会社の事業開発チームを中心とした多くのお客様にSPEEDAを届けるフィールドセールス・リテンションセールスを担当。
2019年:SPEEDA事業のセールス担当からマーケティング担当へ。オフラインマーケティングの企画を構想するも、コロナ禍でチームの状況も変わり、思うように仕事が進まなくなる。
2020年:INITIAL事業のカスタマーサクセスの立ち上げに参画。
2021年:チームリーダーに昇格し、初めてのピープルマネージメントに挑戦。
2022年:カスタマーサクセスDivLeaderに昇格。
2023年:INITIAL事業CCO(Chief Customer Officer)に就任。
2024年1月:ユーザベースのSaaS事業コミュニティ担当執行役員として、SaaS事業における事業開発とコミュニティ形成を担当。

「世界を変える」挑戦に惹かれてSaaS事業へキャリアチェンジ

——まずは、大沢さんのファーストキャリアについて教えてください。

大沢遼平さん(以下、大沢) 僕はもともと大学院で、人口が増加する発展途上国においてどのようにCO2排出量が推移しているのか、自分でプログラミングを書いて解析する研究をしていたんです。その研究過程で、CO2が排出されるいくつかの要因のなかでも「発電」については改善できる点があると思い、発電事業を行っている丸紅に入社しました。

そこでオーストラリアやアメリカといった海外の電力会社の株式売買を検討するIPP(独立系発電事業者)事業に取り組むことになったのですが、仕事自体はやりがいのあるものの、当初考えていた「発展途上国の電力供給や地球温暖化の解決に貢献したい」という思いがずっとあり、「このままでいいのか」と少し悩んでいました。

——そこから、まったく業界の異なるユーザベースに転職することになります。どのようなきっかけがあったのでしょうか。

大沢 ユーザベースに勤めていた大学時代の先輩に、「このままでいいか迷っている」と打ち明けたときに「うちに来たらいいんじゃないか」と勧められたんです。ユーザベースの当時のミッションは、「経済情報で、世界を変える」。世界をよりよく変えたいという野心をもっていた僕は、この言葉に強く惹かれました。当時、ユーザベースはまだまだ成長途中のスタートアップでしたが、創業者の新野(良介)や梅田(優祐)と話すなかで、彼らの目標は決して夢物語ではないと確信し、入社を決めたんです。

入社後はSaaS事業のなかで経済情報プラットフォームの「SPEEDA」を担当し、フィールドセールスとリテンションセールスを経て、マーケティングチームに参画しました。ただ、オフラインマーケティングに積極的にトライしたいという思いがあったのですが、ちょうどコロナ禍に入ってしまって思うようにいかなくなってしまって。いち実行要員としてオンラインセミナーの準備などをしているなかで、自分の適性に合っている仕事なのかと不安を覚えるようになりました。

——再び、自身のキャリアパスに疑問をもたれたんですね。

大沢 他社への転職も考えるほどだったんですが、そのときに信頼する上司から「遼平が活躍できる場所はもっとある」と引っ張ってもらって。それが、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」の事業だったんです。異動後はカスタマーサクセスの立ち上げを担当し、チームリーダーとしてメンバーをまとめることになりました。

Emoを受講したことでマネジメントを再現性のある型に昇華

——大沢さんがEmoを受講されたのは、チームリーダーとして初めてのピープルマネジメントを経験されているタイミングでした。このとき、どのような課題があって受講を決めたのでしょうか?

大沢 そもそも僕は、他者の思考や内に秘めている感情を想像してチームやメンバーの状態をよくしていくことにやりがいを感じていました。だから、チームマネージャーになってピープルマネジメントに取り組めるのは楽しかったんです。ただ、INITIAL事業そのものの将来性をメンバーと共有して実現していくうえで、やはり難しい面もありましたね。

当時のミッションは、チャーンを抑えながら新プランを提案してセールスを伸ばすというもので、比較的大きな成果を出すことができました。しかし、もう少し先を見据えて、「INITIAL事業をどう発展させていくのか」といったビジョンを示すまでには至っていなかった。そのビジョンをまずはリーダーである自分が明確に提示しないと、ほかのメンバーは賛成も反対もできないんですよね。

「世界を変えたい」という目標はあって、それを感情では伝えることができるんです。日本国内のスタートアップのデータを網羅したプラットフォームをつくれば、数多の事業が生まれるきっかけになるだろうという期待感がありました。じゃあこのビジョンを実現するためにはどうしたらいいのか——そう考えたときに、まずは体系的に目標を設定できるようになりたいと思うようになったんです。そのタイミングでEmoの存在を知って、すぐに受講を決めました。

Emoは、マネージャーのなかでも「ベンチャーマネージャー」というところにフォーカスして学ぶことができたので、ほかのベンチャー企業、スタートアップに属するマネージャーたちがどのような課題に対峙しているのかも知れるといいなという思いもありましたね。

——実際にEmoを受講するなかで、どのようなことが学びになりましたか?

大沢 前職の経験から、大企業のマネージャーがやるべきことはある程度わかっていたんですが、ベンチャーマネージャーは考えることがめちゃくちゃ多くて。メンバーの成長、数字の達成、目標の設定、新規メンバーの採用活動……。どれも大事だからこそ、優先順位をつけないといけない。その点、Emoを受けてよかったのは、それまで直感的に取り組んでいたものを具体的に言語化、体系化して再現性のある形に昇華できたことです。

例えば、組織の形には文鎮型や構造型があって、この組織は構造型で問題ないと思っていてもどこか効率が悪いといった問題が発生することがあります。その際にどこがスタックしているのかがわかれば、「じゃあ文鎮型に移行してみよう」と提案することができる。

また、スプレッドシートを使った、タスクの優先順位をつける方法論も印象に残っていますね。今やらないといけないことと、将来的なビジョンとを照らし合わせたときにやるべきことにズレが生じることがあるのですが、それを整理して改善する方法などを学びました。今は、このスプレッドシートを逐一引き出して使っているというより、自分の考え方や思考回路に浸透している感じがありますね。ほかのチームリーダーから相談を受ける際も、こうした構造的な知識を頭のなかで整理しながら答えることができていると思います。

マネジメントは人生の指針であり、社会人として生き抜くツール

——これまでのマネジメント経験やEmoでの学びが、大沢さん自身のキャリア形成に影響を与えている面はありますか。

大沢 マネジメント自体は、役職や仕事の内容に関係なく、必ずやるべきタイミングが来るものだと思います。その仕事や事象に対して自分に責任が発生すれば、目標を達成するためにマネジメントせざるを得ない。それが他者との協働であればピープルマネジメントが必要ですし、一方で、ひとりで完結させることにもマネジメントが必要な場面はあるんですよね。例えば、引越しなんかもそうです。引越しをすると決めたら、自分から業者に連絡したり日程を調整したりしないと物事は動き出さない。つまりマネジメントとは、いかに効率的にヒト・モノ・カネを動かし、決めた目標・ゴールを達成するかということ。これまでの経験は人生のすべてに活かされるし、影響していくと思います。

ただひとつ注釈を入れておきたいのは、マネジメントって、目標を達成するためにガチガチにやるものではなくて、むしろ、一生懸命やってもダメだったときにいかにカバーできるかが重要だと思うんです。それはセルフマネジメントでもピープルマネジメントでも同じです。できなかったことに対して反省したり要因を炙り出したりすることが必要なときもあるんですけど、過去はもう変えられません。ならば、コントロールできること/できないことをきちんと切り分けて、次の目標をちゃんと見据えることが大事だと考えています。

以前は僕も、数字を達成できなかったら「見立てが悪かったのかな」と反省してばかりでした。でも、そこで悩みすぎるのは時間がもったいないということを上司の教えから学んだんです。限られたリソースが100あったとして、そのうち多くの時間を反省に使うよりは、短い時間でしっかり反省して、ほぼ100すべてをリカバリーに使ったほうがいい。これまでの経験から、痛感していることですね。

——今後さらにチャレンジしていきたいことはありますか?

大沢 INITIALのCCOを経て、2024年からは、ユーザベースのSaaS事業で生まれたコミュニティを連動させて新たな価値を生む活動に取り組んでいます。

これまで僕は、INITIAL事業を通してユーザー同士の上質なつながりをつくるところにフォーカスを絞ってサービスを展開してきました。そこには大きな成果が現れていて、ユーザーとユーザーが交わることで新たなイノベーションが生まれたり、事業成長したりしていく姿を多く見ることができた。そのコミュニティを、今度はSPEEDAやFORCASといったユーザベースが展開するすべてのサービスに拡大したいと思っています。スタートアップから大企業まで、多様な層のユーザーがつながれるコミュニティをつくることで、もっと面白いことができるんじゃないかと。

——最後に、大沢さんにとってマネジメントとは何か、教えてください。

大沢 僕にとってマネジメントは、「仲間を幸せにするツール」です。「世界を変えたい」という思いは今ももちろん一番大事にしていますが、この仕事をするなかで、世界を変えるために身の回りにいる仲間が不幸な状態になるとしたら意味がないなと感じるようになって。社内のメンバーやユーザー、パートナーがちゃんと幸せになっている状態で世界を変えることが必要な条件だと思っています。

いずれは、発展途上国に電力を届けることや世界中のみんなが喜ぶようなことにも、どんな関わり方でもいいので取り組みたいと思っています。そのために今は、意志のある日本企業や個人をフィーチャーして、どういったサポートができるか考えていきたいですね。その地道な活動が、やがて世界を変えるはずだと信じて挑戦を続けています。

大沢様、ありがとうございました!


EVeM HERO INTERVIEW
インタビュイープロフィール

大沢 遼平 さん
株式会社ユーザベース
SaaS事業コミュニティ担当執行役員

※上記の部署名、役職はインタビュー当時(2024年5月時点)のものです

▼株式会社ユーザベース 様について詳しく知りたい方は、下記からご覧ください。

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