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『夢を忘れずに!』

今から約12年前、闘病の末に惜しくも亡くなったロックスターの忌野清志郎さん。

正直、私はCDを持っていたり、特別ファンだったかというとそうではないけれど、学生時代に聴き馴染みのあるナンバーを口ずさんだり、歌い回しを真似してみたり、メディアでその個性やありのままの表現手段で話題になるたびに、彼の人柄や個性にいつのまにか惹きつけられていた自分を思い浮かべます。

以前、その忌野清志郎さんの闘病生活を追ったドキュメンタリー番組を観た際に、彼の言葉で印象に残るものがありました。

それは闘病中に、ファンの方へ贈ったメッセージの最後の一言。
『夢を忘れずに!』
という言葉です。

当時は、なんとなくで捉えていましたが、この言葉は、その後ずっと現在に至るまで、私の心に残る言葉となりました。
一見、言葉としては他の人でも言えそうな表現だし、ひょっとしたらそれ以前にも別の角度から耳にしたことがあったかもしれません。
では、何故心に残ったのでしょうか。

その言葉が忌野清志郎さんの人としての魅力と共に放たれたせいか、もしくはその当時、受け止める側としての私もなにかしらの準備が整っていたのか。そのようにいろいろ思いを巡らすなかで、次第に一つの理由が固まっていきました。

睡眠中以外で、『夢』という言葉を取り扱う場合、例えば人生や仕事に目標を定める意味や、前向きにさせる表現で『夢を持つ』という言い方があります。そしてそれが、『夢を持っていない人』に対しての声がけになると、『夢を持とうよ』『夢を持て』『夢を持つことが大切だよ』といった、激励や希望を含んだ言い方になったりします。

今でもよく耳にする言い方ですが、只、元来ひねくれ者の私にとっては、当時それらの言い方にはどうしても違和感を覚えるようになっていました。

何故ならば、『夢を持っていない』という人の中で、時にその人によっては希望や激励の意味とはならず、逆に早く夢を持たなければいけないと焦ることになったり、プレッシャーとなったり、未だに夢を持っていない自分はダメなのかもしれない、といったネガティブな考えに陥ってしまう可能性も含んでいると思えたからです

もちろん、そのような表現や言い方をする人は、その時の相手のことをちゃんと思っての理由だったり、裏付けが前後にあったりでの行動だと思うので、決して私はそのような部分を否定するつもりもありません。

ただ、私の中でどうしても感じられるその違和感を、スッと消し去ってくれる言葉というのが、忌野清志郎さんの言葉。

『夢を忘れずに!』だったのです。

『忘れる』って、何かを持っていたり、何かを覚えていたりが前提に無いと出てこない言葉かと思います。
学校の宿題や家の鍵、誰かとの約束や頼まれごとだったり。
私たちは生きていく上でいろいろなものを多かれ少なかれ忘れる場合がありますが、つまり忌野清志郎さんが言うところの『夢』というのも、誰もが前提として持っているもので、人はそれをいつのまにか忘れてしまったり、早い人なら生まれた瞬間にすでに忘れてしまうもの、という捉え方ができるのです。
私自身はそう捉えることができたときに、前述した違和感は消え去り、逆に『夢』に関して寄り添えるような安心感を覚えたのです。
『夢』は誰でもすでに持っているもので、持っていないと思っている人は、ただ持っていたことを忘れているだけで、思い出せていないだけなんだと。

忌野清志郎さんは、自分を含めた、この世界中の人々、みんな漏れなく夢を持っているということを認めていて、あとは、ただひたすら忘れずに!ということを伝えてくれたんだと思っています。

それでは、忘れないようにしたり、又忘れてしまったことを思い出すにはどうしたら良いんでしょうね。
とにかくひたぶるに頭の中で探したり、人と話したり、一休みしたり、メモをとったり、方法もいっぱいありそうです。

私は絵を描くことが幼い頃から好きで、大人になった現在も続けています。ひょっとしたら夢とも言えるのかもしれません。しかし、まだそうとは言い切れない自分もいます。
きっと、まだまだ忘れていて、思い出せずにいるのかもしれません。
だからずっと私は、忘れないように思い出せるように未だに絵を描き続けているのかもしれません。

忌野清志郎さんがくれた『夢を忘れずに!』という言葉を忘れないように、今日も絵を描いて、心にメモをとっていこうと思います。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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