インドが嫌いな先輩の話
私の先輩であり、前任者であり、私が加わった時にはもう辞めることが決まっていたので短期間ながらインド現地採用生活のメンター(私の中で)でもあった先輩がいます。正直、彼と仕事した期間は仕事とは別に人生最大級にブルーな出来事が重なり、多大な迷惑と心配を彼にかけてしまいました。私はまたいつか会いたいけれど、良い印象の後輩だったとはひっくり返っても言えないので、きっと会ってくれないでしょう。そもそも、私が来る前から辞めたらインドで培った人間関係とは一切連絡を取らない、と宣言していたキャラクターの先輩でした。
今回は、彼の話を交えながら、今回のインド全土のロックダウンについてひとりの外国人として思ったことをふんわり話したいと思います。私の政治的嗜好性に基づく感想が含まれていますので、気になる方はリターンバック。
ロックダウン後半戦5日目
3月24日から本格的に始まったインド全土のロックダウンも、1度目の終わりを迎えようとした4月14日に延長が発表され、現在は5月3日終了のアナウンスがされています。依然新型コロナウィルス感染症への感染者数・それによる死者数は減らず、じわじわと増加を続けています。
(参考)インド健康省Webサイト:https://www.mohfw.gov.in/
私はというと、2ヶ月目に突入した自分のアパートでのリモートワークにある程度慣れつつも、外出の機会が少ないことでQoLが下がっています。インドのアパートって砂埃対策にか大きな窓が開いてないので、どうしても自然光が入りにくく過ごしづらいんですよね。まあ、もともとひきこもり体質なので部屋の中ばかりなのは良いんですけど、引っ越したばかりで物が十分になく(手にも入らず)、ひとりはさみしく、ベッドは1m先にあるので時々仕事の弊害です。
経済全捨ての施策とインド経済の未来
現在、インドはモディ首相主導でインド全土のロックダウンと市民の外出制限が行われています。もちろん私企業の活動も制限されているので、Essentialワークを除き経済的には停止している状態です。世論も概ねこの人命最優先の施策に賛同していて、国が一丸となってこのショックに対応している印象を受けます。加えて、モディ首相の呼びかけに呼応して、3月22日にはEssentialワークに就く人々への賛辞を、4月5日には再生を願う光を灯す儀式(花火あげる人とかもいたけど)を国民の多くが行いました。少なくとも、私の住むエリアでは多くの人が呼応していました。
与えられる自由は自由といえるのか
インドに来る日本人・インドラブな日本人は、今回のインド政府の対応と国民が一丸となって呼応している姿勢に感動している人が多いように思いました。でも、国家が国民の自由を強く制限できる、日本でいう緊急事態宣言(但し要請ではなく制限付き)って必要なんでしょうか?しかも、国民がそれに疑問なく呼応することって素晴らしいこととは限らないのではないかな、と。
人、ひとりひとりが何を考えて何をするかの自由って、国などの枠組みを超えた社会の構造の前に存在するものではないかと思っています。自由は国や制度から与えられるものではなく、自分で得てキープするもので、市民は何したっていいし、何をしなくたっていい。国家だったり、大きな組織はその自由がお互いの自由を侵害しすぎることで、かえって本人の害にならないように最低限の決まりだけ作ればいいんじゃないのかな、と。
市民が作った経済とそれを作る市民こそが国の力
今回でいうと、インドは国家主導で様々なことが動いているし、日本では国に様々な動きや補償を求める声が多いように思います。でも、市民ができること・すべきことって、自分たちが声をあげて民間からボトムアップで1が全となり多くを動かす力なんじゃないでしょうか。
例えば、企業の休業要請だって国に求めることじゃなくって民間の組合や横のつながりで民間が決めて補償も民間で決めてしまえばいい。そもそも、日本の休業補償だって法律で行わないといけないこととその割合が決められているだけで、財源は各企業なわけですし。(そこにどう国が金銭的に介入するかとか、それにもれる体力のない企業を救う・救わないを含めたセーフティネットの話はまた別のお話)
そうやって民間で動くことで、最適なタイミングで最適な判断が現場感覚ででき、各企業はより成長するのではないかなと。その成長に従って成長するはずの国家の機会も逃しているのではないかと思います。
これまで考えていたインドの将来予想と、これからの予想
2020年現在、数年見てきたインドの雰囲気から、技術の進歩と流入・機会の増加に経済規模と法制度が今なお追い付いていないんじゃないかなと感じていて、さらに人材や企業のグローバル化で人材の国外流出が進み、将来的には国を支えるキーパーソンが少なるなるのではないかと思っていました。そして、インドの経済成長は一般的に思われているものより、もっと緩やかになる。と、今まで私がしていたインドの将来予想はこんな感じでした。
ポストコロナショックはこれに一層近づいていくのではないかと感じています。
今、リモートワークの浸透などにより、場所を選ぶことがなくなるのがより加速しだしたということは、外国企業への人材流出・交流がより進むということです。ただでさえ条件の違いなどから国外への人材流出が続く今のインドがそれに勝てるとはあんまり思えません。国が自由の制限を多く行ったりする父権的な国家の見直しが問われているのではないでしょうか。
早急な制度の敷設で、人材を囲い込むのではなく、このグローバル社会と共存する扶助をすることが経済・国家延命の処方箋ではないかと思います。
インド人は好きですが、インドは嫌いです
この言葉は先輩の発言の中で特に力を込めて言っていた言葉のひとつです。事あるごとにこの言葉と共に「結論が出たから日本に帰る」って言っていました。そもそも昨今のインド推しに疑問を持ったから、実地に入って考えると言ってインドに来た、一貫性のある殊勝な人でした。
インドで働き始めて約2年半、この会社でまだ1年目のひよっこの私ですが、私は早くも彼とおそらく同意見を持っています。当時私はこの「インド」を文化的な全体の総称を表すおおよその言葉だと受け取っていました。多分、彼が言っていたのは国家や政治制度として線引きがはっきりとされた「インド」だったんだなと今では思います。
もしそうであれば、もしかしたら美味しいお酒が酌み交わせる仲だったかもしれません。今は何してるんでしょうか?某・京都市のリサーチ会社にかなり良い条件で内定が決まったところまでは編集長が教えてくれて知っています。京都で働いていたらいいな。人付き合いについて激しい後悔をした出来事のひとつでした。
彼は昨年2019年末で帰国したのですが、ぶっちゃけタイミング良すぎでしょ…!!って思っています。疑問は再燃してませんか?いつでも待っています(笑)
そんな感じです。
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