「今よりもエキサイティングな挑戦を」執行役員 阪 茉紘氏とプレイドの出会いに迫る。
2020年12月に東証マザーズに上場し、「データによって人の価値を最大化する」をミッションに、CX(顧客体験)プラットフォーム『KARTE』などデータ統合、解析サービスを展開する株式会社プレイド。Googleや大企業とのアライアンスやM&Aなど様々な取り組みを加速させる同社のブランディングを執行役員として支える阪 茉紘(Mahiro Saka)氏のキャリア形成、企業選択の軸に迫ります。
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“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。for Startups, Inc.のヒューマンキャピタリスト安室朝常と申します。
私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計170名以上のCXO・経営幹部層のご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。
EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです。
『データによって人の価値を最大化する』壮大なミッションへの挑戦
-- まずはプレイドの事業について教えていただけますか?
プレイドは、「データによって人の価値を最大化する」をミッションに、様々なプロダクトを展開しています。主軸であるCXプラットフォーム「KARTE」は、”知る・合わせる”というコンセプトを大事にしていて、WEBサイトやアプリを訪れたお客さんが求めていることを見える化するサービスです。お客さんをきちんと知ることで、ニーズに応じたコミュニケーションの提供を実現します。
-- 最近では、新規事業開発や社外アライアンスを促進するプロジェクト「STUDIO ZERO」を立ち上げたりと、2020年12月のIPO後にも新しい挑戦をされている印象がありますね。
私たちとしては、社会に届ける価値を「KARTE」だけに収めるつもりはありません。『データによって人の価値を最大化する』というミッションを掲げているように、データと人で解決できることはもっとあると考え、一歩先へ進みます。私たちが解決できる社会課題や産業課題はまだまだあります。
例えば、直近では、多数のアパレルブランドを手掛けるとある企業と共同で、新しい”店舗体験”を開発する取り組みが始まりました。現代は、スマートフォンでいつでも買い物できることが当たり前になり、店舗というリアルの場での顧客体験のあり方が改めて問われています。更に、コロナ禍で店舗体験のアップデートへの動きは国内でも加速しています。
そのような中で、KARTEのテクノロジーをコアにしながら、オンラインだけにとどまらずオンもオフもなくシームレスにショッピングを楽しむ顧客により便利で自由な体験を届けるチャレンジをしています。これは顧客目線に立った時の「店舗ならでは」の価値を再定義する試みであり、そこで働く従業員の方々をより支援するためのトライでもあります。この取り組みでの知見は小売業界が抱える課題の解決に向けてどんどん還元していきたいと考えています。
-- プレイドにおける阪さんの役割を教えてください。
プレイドや「KARTE」のブランド価値を進化させていくことを担っています。ブランドコミュニケーションというよりは、どういった提供価値を創っていくのか、そのためにどのように進化させていくのかという観点でブランドと向き合っています。取り組む課題の設定やアプローチ方法はその時の狙いや課題によって都度変わりますが、プロダクトやサービスをどのように変えていくのかであったり、クライアントと共創関係を構築することで新しいKARTEの価値開発に取り組んだりしています。
チームで高い目標を追い続けた学生時代
-- 阪さんがプレイドに至るまでのキャリアについて遡らせてください。スタートアップで活躍されている方の中には、学生時代からスタートアップでインターンで活躍されていた、という方も多いように思いますが、学生の頃からスタートアップに興味があったのでしょうか?
いえ、学生の頃はスタートアップでのキャリアは想像していませんでした。就職活動以外でのインターンも受けていません。ただ、学生の頃と言われると、中学高校はバスケットボール部でプレーヤーとして、大学では男子ラクロス部でマネージャー・トレーナーとしてとずっとチームスポーツに携わっていました。
目標を高くセットし、努力して目指していくことは、今に通じるところがあったのかなと思います。
-- チームで高い目標を追いかけていくところは、確かにスタートアップとも共通する要素ですね。大学でプレーヤーからサポート側に転向されることは大きな変化と思いますが、なぜその選択をされたのでしょうか?
実は高校で膝の靭帯を切ってしまい、プレーヤーとして自分が努力をして高い目標を目指すことが難しい状態になってしまったことがきっかけです。「自分にとって何がやりがいなんだろう」と考えたときに、プレーすることよりも、チームで当たり前のように高い目標を目指す楽しさが、その環境が自分にとっては一番大事なんだということに気づきました。怪我をした時に、部活の顧問に「プレーをしている人たちだけではなく、サポートする側の力もチームの強さの一つ」だと教わったことが大きかったですね。
そこで、大学でチームとして強く、高い目標を目指していた男子ラクロス部のマネージャーになりました。
-- 役割に依存せず壮大な目標を追いかける価値観は、プレイドの自律分散型の組織に通ずるものですね。
そうですね。チームにいる人のキャラクターや役割が異なっていても、高い目標を掲げ、そこに対して頑張るという共通意思があれば、一人では達成できない目標に向かってコトベースで進んでいける、というのは昔からずっと考えていたことですね。
振り返るとチームというか所属する団体を選ぶ際に、「このチームは何を目指しているのか」は、一つ大事にしている軸になっていますね。これまで3社経験していますが、いずれもそのチームが目指していることに面白みを感じていました。
”人の心を動かす”マーケティングに関心を惹かれ
-- その後、消費財マーケティングで世界的に有名なP&Gに入社されていますが、新卒でP&Gを選ばれた理由を教えてください。
就職活動をしていた当時、領域問わず複数の業界を検討していたのですが、大学のOBOGからの紹介で、P&Gのインターンシップを受けてみて、そこでマーケティングは”人の心を動かす”ものだということに興味を持ったことがきっかけです。
-- ”人の心を動かす”とは素敵な言葉ですね。
「この動きは何によって起きたんだろう?」、「この結果はどのように起きたんだろう?」ということを定性・定量的に捉え、見つけた学びを踏まえてどのような戦略/戦術を打つか考えて、実践してみる。これによって、顧客の心を変えられるということに純粋に面白みを感じました。
-- 当時は、コンシューマーインサイトの領域でのキャリアを描いていたのでしょうか?
はい。"数字を数字で終わらせずに、その裏側にある人それぞれの感情や思考の揺れ動きを捉える”というのはすべてのコアだなと思っていましたので、この領域でキャリアを歩んでいこうと考えていましたね。
今よりもエキサイティングな挑戦でなければ意味がない
-- ”数字を数字で終わらせずに、その裏側にある人それぞれの感情や思考の揺れ動きを捉える”というのはプレイドの思想と通じるところもある考え方なのかなと思います。その後、P&Gからマクドナルドへ転職されていますよね。一見すると同じ外資、かつコンシューマーインサイトが強い企業で、共通点も多いように思うのですが、なぜその道を選ばれたのでしょうか。
転職を検討する際もP&Gは好きでしたし、キャリアの幅も豊かで、周囲のメンバーもとても頼もしく優秀でしたので、かなり恵まれた環境だと思っていました。何より仕事が面白かったです。しかし、自分の次のトライや今後の人生を考えた時に、一度他のところと比較してから決めてもいいのではないかと思ったことが転職活動のきっかけです。
-- そこからマクドナルドを選ばれたポイントは何でしょうか。
当時のマクドナルドは、会社として業績がかなり苦しいタイミングでした。インターブランド社が発表している世界のブランドランキングでも上位に位置するような当たり前に知られているブランドが苦しい時期をどう乗り越えていくのか、そこにはきっと他では得られない経験があるのではないかと考えました。この状態を切り抜けることも、「人の心をどう動かしていくか」がポイントになるだろうと感じました。
そこに対して自分の人生をかけてみるのも面白いのではないかなと思いましたね。
-- あえて苦しい時期の会社に転職するという発想がすごいですね。
今よりエキサイティングな環境で、新しいチャレンジができると思わなければ転職するモチベーションだったり、ある意味勇気を感じないかもしれません。これは、マクドナルドからプレイドに転職する時も同じでした。転職を考えるときは、チームへの愛着心と、次への挑戦心の狭間で葛藤します。だからこそ、そのチームが掲げている目標は何なのか、そこに向けて自分が何をしたいと思えるのかは深く考えるようにしてきましたね。
P&Gとマクドナルドで共通して感じた目標の求心力と、複数事業と単一事業のカルチャーの違い
-- P&Gとマクドナルド、共通点も多い両社ですが会社の置かれた状況以外で、違いを感じられたところはありましたでしょうか?
共通点も異なる点も、色々な点があると思うのですが、ここ最近のプレイドの動きの中でよく思い出しているポイントは、複数事業と単一事業のチームの違いです。
P&Gでは、ブランドやカテゴリーごとのカルチャーがありました、また複数事業あることで人の流動性が担保されていましたから、様々なチャンスが社内にありました。もちろんポートフォリオという点でより事業も堅固としやすい利点もありますよね。一方で、日々働く中で他ブランドに対する関心は持ちづらくなってしまっていた側面もあったかなと思います。
対して、マクドナルドでは、単一事業ならではの全社を通じての一体感がありました。 特に私が入社した時期は、大変な時期だったのですが、最初の店舗研修の際に店舗メンバーから「こんな大変な時期にマクドナルドに来てくれてありがとう」との言葉をいただいて、胴上げされたりして、とても嬉しかったです。店舗でも本社でも関係なく、全員が同じ方向性を向いているからこそ、”皆が繋がっているんだ”という感覚がありました。
単一事業だからこそ、何かあった際にビジネスにおける緊迫感に繋がりやすいという点では、そもそも単一事業であることの良し悪しもあるかなと思いますが、いちメンバーとしての状況に対するわかりやすさは担保しやすかったのだと思います。
せっかく両社を経験できたので、プレイドでは両方の良さをどう体現できるか、ということも考えたりしていますね。もちろん、両社とはまた別のプレイドの魅力があるので簡単には当てはまりませんが、そのようなことはよく考えています。
-- ブランドがチームの一体感に繋がるというのは面白い見方ですね。共通して好きだったポイントはあったりしますか?
前のように高い目標を持っているところはやりがいを感じる部分でした。目標に求心力があるからこそチームで仲間意識を培われていく、この流れが私にとってポジティブな要素だったと感じています。
また、プレイドも元々KARTEという一つの事業が中心だったところから、複数事業を展開するように変わってきているなかで、それぞれの属性を持つP&Gとマクドナルドを経験したことは、とてもよかったなと思いますね。
最初はプレイドの「データによって人の価値を最大化する」という言葉を信用していなかった
-- その後、マクドナルドからさらなるチャレンジの機会を探されることになるわけですが、プレイドとの出会いの経緯を教えてください。
当時、大企業、スタートアップの区別をせず、"変化に向かっている"会社であること、自分の経験を活かせることを軸に転職先の候補を探していましたが、エージェントからはそれまでの延長線上である業務内容をご紹介いただくことが多く、それであれば当時の会社で働くことが一番楽しいのではと感じていました。
そんな中、フォースタートアップス常務取締役の恒田有希子さんとお会いし、ご紹介していただいた企業の1社がプレイドでした。
最初にプレイドをご紹介いただいた時、「データによって人の価値を最大化する」というミッションをホームページで見たのですが、当時はデータという言葉をどういう意図で使っているのか読み取りきれず、ある意味信用していなくて、「興味がありません」とお伝えしたことを覚えています(笑)。
ただ、恒田さんより、「一度プレイドCEOの倉橋さんと会って話してから判断してほしい」とお勧めを受けたことをきっかけに、倉橋と話をして、プレイドの世界観に惹かれていきました。
-- プレイドの面接ではどのような印象を持ったのでしょうか?
最初に話を聞いた時は、目指している世界が正直ふわっとしていて掴みづらかったです(笑)。
他の企業だと入社後がイメージができていたことに対して、プレイドの話を聞いたときにあまりイメージができなかったんですよね。ただ一方で、なんとなく輪郭がありそうで、はっきりとは分からないということが、当時の環境よりもエキサイティングなチャレンジができると感じました。
-- 曖昧な環境だからこそ自分次第でエキサイティングな挑戦ができるということですね。その上でも覚悟を持つために、決め手になったことはあるのでしょうか?
代表の倉橋に、「KARTEがあることとないことで世の中の何が違うんですか」と質問をしたところ、「働く人が変わる」という回答を受けました。「KARTEによって、生活者を想像しやすくなる、コミュニケーションする相手を想像して、アクションを起こす。そのことにより人の創造性が刺激され、その結果、豊かな世の中になる」といった話があり、その世界観に興味を持ちました。
実はこの話、入社して3年経った今では心から納得していますが、当時は正直、「ちょっとよくわからないな」と思ったんですよね。
当時マーケティングをしていた自分の身からすると、「むしろそれこそマーケティングの仕事だよね」と思ったりもしたのですが、自分なりの解釈として「生活者と企業のコミュニケーションのあり方や関係性に変化をもたらすということだな」と捉え、その世界づくりは面白そうと入社を決めました。解釈の幅があるところは今でもプレイドの良いところだと思っています。
-- それまでの経験企業とプレイドでは環境が全く異なると思いますが、当時の選択を振り返り、それまでのキャリアで得ておいて良かったご経験はありますか?
マクドナルドでPL責任を持ち、必要なことを何でもやるという経験が、振り返ってみると、今に繋がる大きな転換期でした。
それまでは戦略を立てるところを中心に担当していたのですが、PL責任を持ったことで、例えば、自分の専門分野でもないことであっても「自分が最後決める」ことをしなければいけなくなりました。
いわゆるマーケティングで扱うネーミングやキービジュアル、コマーシャルだけでなく、商品の仕様や価格、店舗でのオペレーションといった価値を提供する上でのバリューチェーン全体に対して討議や意思決定をしていくことが必要でした。わからないところを他者に頼りながら、助けてもらいながら、でも最後正解は自分の頭で考えて決める、そして価値を作り上げる、ということを経験できました。
この経験は、当時のプレイドへ挑戦していく上では得ておいて良かったと思いますし、何より「答えがわからない」世界でも、その価値創造の過程を楽しめる、今の私の1つの原点だとも思います。
仲間と共に「創造の再現性」に挑む道のりを楽しむ
-- 今後、プレイドで挑戦していきたいテーマを教えてください。
「創造の再現性」が大きなテーマです。世の中の課題を自分たちの課題として捉えて、その大きな課題解決に向けて、「KARTE」で満足せずに、「STUDIO ZERO」を生み出すなど、自社をアップデートしていくことが私たちの挑戦だと考えています。
-- 壮大なテーマだと思いますが、どのような想いを軸にされているのでしょうか?
私自身は「顧客理解」の民主化を1つ軸にしています。いわゆるマーケティングの世界は、専門性が高いことに加えて、新しい手法やフレームワークは出続けますし、いわゆるOJTの機会も限定されがちなので、習得に時間がかかってしまいます。でも、誰かのことを考えて、伝えたいことを考え実行し、その”人の心の動かす”ことは、等しく誰しもが取り組めることのはずです。それを当たり前の状態にすること、これは私にとっても会社にとっても、解決に取り組むべき大きな課題の一つだと考えています。
また、これをマーケターにとどまらず、あらゆる職種の方にその環境を実装すること。これもまた面白い課題です。
私は、事業に顧客のインサイトを吹き込むことは、世界にあるもっとも面白い仕事の一つだと考えていますので、その挑戦をプレイドで取り組んでいきたいと思っています。
-- その挑戦に向けて、一緒に働いていきたい人を教えてください。
プレイドのカルチャーとしては、変化を楽しめる人が合っているかなと思います。私自身もそうですが、プレイドでは自分も変化していかなければなりません。自分の変化と世の中の変化も、企業で働く人々の変化もポジティブに捉えられたり、時には今取り組んでいることを疑ってみることができる人と一緒に挑戦していきたいと思います。
また、私がお話した挑戦に限らず、また新たな挑戦を見つけてくれるような方々とも一緒に挑戦を楽しみたいです。
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