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ヨーロッパ的なるもの:小話17 そこここに高級?車、クラシック?カー

【そこここに高級?車、クラシック?カー】
 
 ヨーロッパの街角は、ヨーロッパ車で埋まっています。当たり前です。ヨーロッパではヨーロッパ車が”国産”車なのですから。日本車の方が”外車”です。その”普通”の車は国によって異なります。ドイツではフォルクスワーゲン、BMW、アウディ、メルセデス(ヨーロッパではベンツという呼び方は聞かない)が、フランスではシトロエン、ルノー、プジョーが普通の車になるのは当然です。英国では、これらに加えて国産のジャギュア(ジャガーとは言わない)、ランドローバーが加わります。アメリカ車、日本車、韓国車は主流とは言えず、日々の暮らしの中で周囲にあるのはこれらのヨーロッパ車です。
 
 ヨーロッパ車にも手ごろな車から高級車までありますが、ヨーロッパ車が身近にあるのが当たり前の状態で暮らしていると、その中に高級車が混ざっていても気にしなくなります。日本の駐車場で多くの日本車の中にレクサスがあっても、わざわざ見に行ったりしないのと同じです。気にもせず通り過ぎる。これと同じことが、ヨーロッパでも起こります。

 もしそれが英国なら、その辺にアストン・マーチンやベントレーが停めてあっても誰も特に気にしません。ロンドンの高級ホテル、ザ・サヴォイにロールス・ロイスが停まっていても、サヴォイだしねーと思うぐらいです。
 
 イングランドの田舎に行った時に、コンビニにアストン・マーチンが停まっていました。一緒にいた地元の人に聞くと、それはある館の奥さんのものだとか。旦那はベントレーを自分で運転し、奥さんには買い物用にアストン・マーチンを買ったのとのこと。で、奥さんは007の車でコンビニにー。
 
 ロンドンに多い100年以上経った集合住宅(フラット)には地下駐車場が無いことが多く、高級住宅街であっても多くの車が路上駐車をしています。これは役所に駐車料を払って確保した自分の駐車スペースです。その縦列駐車の車の中には、日本では厳重なガレージにしまわれるような車が普通に停めてあります。

アストン・マーチン @ 住宅街で路上駐車 @ロンドン
マセラッティ @ 住宅街で路上駐車 @ロンドン
ロータス @ 住宅街で路上駐車 @ロンドン

 英国人は、「人は人、自分は自分」と言う意識が強いので、他人が何の車に乗っていようと、その辺に停まっていようと気にしたり、うらやんだりしません。これらの車は特別の注目を浴びることも無く、ただ地元の風景に溶け込んでいます。写真を撮っているのは外国人です。
 
 おまけに、英国にはクラシックカー愛好家も少なくないので、天気の良い休日には郊外で、自分の前を70~80年も前の車が走っていたりします。クラシックカーは決して身近とは言えないものの、かけ離れて遠い存在でもありません。BBCのアンティーク番組の中には、アンティークを探しに行くのに、男女のプレゼンターが毎回異なるクラシックカーを交代で運転していくことを売りにしているものがあります。
 
 クラシックカーが決して絶滅種ではない英国ですが、時にはそれらがクラシックスタイルの現代車であることもあります。1909年創立のモーガンと言う会社は、クラシックカーのままのスタイルで今でも新車を作っており、結構、愛好家がいます。それに遭遇すると、著者のように車に詳しくない人は、「あっ、クラシックカーだ」と思ったら、「なんだ、モーガンか」とがっかりすることになります。
 
日本からヨーロッパ視察にやって来た社長が、駐在員に聞きました。
 社長:「君は何の車に乗っているんだ?」
 できる駐在員:「コストダウンを重視し、日本車で我慢しております」
 社長:「見上げた心がけだ」(心の中で「帰ってきたらよい役職をやろう」)
 
 ヨーロッパではどんな日本車でも、必ずヨーロッパ車より安いとは限りません。”外車”なのですから。小型のヨーロッパ車の方が、安くてコストダウンに貢献することもある。しかし、社長「なに? 君は外車に乗っているのか(こいつは-)」
 
新著紹介:「絵の中に絵」のおもしろさ
     
写真集紹介:
【ヨーロッパ的なるもの:アルバム1 街角と博物館で見るクラシックカー(その1)】
ドイツ、フランス、イタリア、英国の博物館や路上で見かけた車の写真集(有料)です。歴史的意味のある車、著者が美しいと感じた車を集めています。


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