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第10話 情熱と刺激の春

これは、クウ星のとある街にある、少食さん向けの会員制隠れ家カフェのお話。
花の上で小さな虫がお昼寝をしている、そんな4月のある日です。
 
たまたま同じタイミングでカフェの前で出会ったサッゴさんとテテノさん。
2人が仲良く入店すると、なんとそこには右手に布巾を持ったままのマーチさんが、テーブルに伏せって寝落ちしている姿がありました。
 
マーチさんはハッと顔を上げました。 その顔を見た2人はさらに驚きました。
『マ、ママさんその顔!!』
「えっ」
マーチさんは慌ててお店の奥に入っていきました。
マーチさんの顔は、目と鼻と口が赤く腫れていたのです。
しばらくしてお水とおしぼりを持って戻ってきたマーチさんはマスクをしていました。
「御見苦しい所を……目はサングラスでもしないと隠せませんが、さすがに……」
 
「か、花粉症、では無さそうですね……ママさん大丈夫ですか?」
サッゴさんが心配しました。
するとマーチさんは少しモジモジした後、赤く腫れた目をキラッと輝かせました。
「実は先日、お客様からリクエストをいただいたんです! 激辛料理に挑戦したいと!」
サッゴさんとテテノさんは予想外の答えにまたまた驚き、赤い顔の理由に納得しました。
 
「でも、他のお店だと辛くて食べきれない以前に、量が多くて食べきれない不安が大きいそうで……」
「なるほど、我々にしてみれば最初にして最大の関門ですね」
たしかに、とサッゴさんも深く頷きます。
 
「辛さには自信があるご様子でしたが、量が多くて残しても、辛くてギブアップしたと思われちゃうのがちょっとモヤモヤする、ともおっしゃってまして……他のお店の事はどうする事もできませんが、でもせめて、ここで激辛に挑戦した事で少しでもその方の心を満たせたなら、とても意味のある事だと思い、私も頑張ってるんです!」
やる気に燃えるママさん。 そんなママさんの心意気に2人の心も自然と高揚しています。
 
「ですが、作れば作るほど迷い路に入り込んでしまい……。 辛さにも色んな種類がありますし、スープ系・ご飯系など料理も無限大……、さらにはどこからが激辛なのかも分からなくなってしまって、ずっと試作を繰り返していたんです」
 
テテノさんは「ふうむ……」と手を口に当て、考えを巡らせた後、マーチさんに色んなアイディアを提案し始めました。 その展開にマーチさんだけでなく、サッゴさんも更にワクワクしてきました。
「僕も最初のフェアが開催されたら、少なめ激辛《小手調べレベル》に挑戦してみたいなぁ」
「はい! 是非是非挑戦してみてください! あ! 長々とすみません、ご注文が決まりましたらお呼びください……!」
 
こうして、カフェでの食事を終えたサッゴさんは、マーチさんのやる気やポリシー、激辛フェアへの期待など、沢山の刺激を受けた事で、お腹だけでなく不思議といつも以上に気力が満ちてきたのでした。

当作品は架空の宇宙(星)のお話です。
登場するキャラクター・名称・店名・イベント等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
色んな感覚の方がいらっしゃるので、合わないなと思った方は閲覧を控えてください。

●作者コメント●
私もママさんのようにありたいですね。
ただでさえ激辛は沢山食べるのが至難の業ですが、少食だと尚更ハードルがあがりそうです。
お話の最後がまた駆け足になっちゃいましたが、一番書きたかった部分がかけたのと、冒頭のお昼寝→寝落ちの展開を何とか思いつけたのは良かったかなと思います。
ではではまたのご来店をお待ちしております!

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