見出し画像

子どもの絵画表現、小さなことで大きく絵が変わります

小さな子どもたちは発達の過程において、文字よりも先に絵を描きます。絵と言ってもなぐり描きのようなものから始まるわけですが、絵を描くという行為はごく自然に発生します。

子どもたちは絵を描くということに苦手意識を持っていません。他者との比較に評価がつくようになったり、描くことが義務になったりすると苦手意識は生まれてくるのかもしれません。逆に言えば、未就学児の多くは絵を描くことが嫌いではないだろうと思います。

ただ、子どもを取り巻く大人からは「絵は描けない」「絵を描くのは苦手だ」というお話をよく伺います。苦手なものはしょうがないので、今日は誰でも、簡単にできる、子どもの絵が変わるポイントを考えたいと思います。

些細な工夫で、絵は大きく変わるものです。

①技術を問わない

これは些か当たり前でしょうか。子どもに対して技術的な「上手さ」を求める必要はありません。そもそも「上手い、下手」という概念はないと思って良いくらいだと思います。生まれて数年しか世界を見ていない、身体をコントロールしていない子どもたちの技術が未熟なのは当たり前です。子どもたち絵を描く手元を見ていて、「おぼつかない」「辿々しい」と思うときは、その真剣な眼差し(顔)に目をやってみてください。下手だなどと思うことはなくなるでしょう。

技術を問わないということは、「褒める」言葉も変わるはずです。できれば子どもたちにかける言葉は「上手いね!」ではなく(それでも良いんですけどね)、できるだけ具体的に、何が良いのかを言葉にしてあげて欲しいです。

「赤色が大きく塗ってあるから元気がでるね!」
「細かく描かれた線が優しいね」
「柔らかい色使いで温かい気持ちになるね」

という感じ。他愛もない落書きでも、休日にチャレンジした大作でも、ママやパパのかける言葉には魔法がこもっているはずですから。

画像1

②いつもより大きな用紙を使う

もし、いつもはお絵かき帳を使っている、A4程度の画用紙を使っている、ということであれば、文具店やホームセンターで売っている一番大きな用紙を買ってきてみてください。高価なものではありません。数百円で販売されているものです。

例えば、A4でおなじみのA版の一番大きなものはA0サイズになるのですが、841×1189mmとなります。B0はもっと大きいです。

絵を描くという行為は「身体表現」として捉えることもできます。手の動きの軌跡を画用紙などに残しているわけです。だから紙が大きければ、動作が変わるので、必然的に絵も変わってきます。

いつも椅子に座って卓上のA4くらいの紙に絵を描いているとしたら、肘、あるいは手首から先しか使っていないかもしれません。上記程度の大きな紙を床において絵を描くと、全身を使って絵を描くことになるでしょう。絵は大きくダイナミックになると思います。

画像2

また、大きな紙の上に寝転んで、自分をトレースして遊ぶなんてこともできます。

③絵の具やクレヨンなどは「もったいない」と思わない

子どもに絵具のチューブを渡すと、力加減を誤り一度に大量に絵具を出すことがあります。というか、いつもそうです。また、一度に何色もたくさんの色を出したりもします。でもそれを「もったいない」と抑制するのではなく、絵具は消耗品と思って、どんどん積極的に使ってみましょう。

なんでもそうですが、LEGOのブロックを10ピースしか持ってない場合と100ピース持っている場合とでは、できることに違いが出てきます。絵具やクレヨンもそうです。色数や量によって表現の幅は広がります。何よりたくさんの絵具は楽しいに違いありません!大人だって楽しいのですから。

画像3

④描いている間も会話をする

集中を邪魔してまで会話する必要はもちろんありません。ただ、時折声をかけてみてください。

「今描いているそれは何?」
「どうしてピンクに塗っているの?」
「次は何を描く?」

など。難しければ、子どもが描いている見たままを口にするのでも構いません。

「丸を描いているんだねー」
「綺麗に色を塗れているね」
「ギザギザを描くんだね」

という感じ。言葉にすれば子どもは反応を示してくれます。「これは〇〇なの!」とかね。そしたらそれが会話の始まりです。このことは雑誌『VERY』のウェブ版で取材していただいたときにも触れています。会話の始まりはオウム返しでも良いんです。

僕の知人の世界中の幼児教育施設を見て回る先生は、3〜5歳くらいの絵画表現を「絵と言葉とセットで作品が完成する」とおっしゃっていました。そのくらいこの時期は言葉も大切です。

親子の会話から出てくるものは、作品の説明なのですが、聞くたびに説明が変わるということも少なくありません。最初は「キリン」と言っていたものが、次に話を聞くと「クレーン車」になっているなんてことも。正解を求めるのではなくその変化を楽しんでください。「そっか、背の高いクレーン車だね」とね。

また、会話は子どもの集中力ややる気にもつながります。一人黙々と集中するタイプの子どもならば、しばらく集中させてあげると良いですが、あれもこれもやりたいタイプの子どもや、ママやパパと一緒が大好きな子どもには、会話はとにかく有効です。もちろん一緒に絵を描いたって良いです。子どもが望むのであれば、一つの作品を一緒に仕上げるなんてことも楽しいですよ。ダメなことなんて何もありません。

⑤完成を急がない

絵を描き始めて30〜60分くらいしたとします。多くの子どもたちが集中力を切らし始めるタイミングです。そしたら、その画用紙やキャンバスはそのまま保管をしてまた次のタイミングまで取っておきます。

一度の機会で完成を目指さなくても良いんです。時間をかけて少しづつ一つの作品を仕上げたら良いと思います。途中、別の作品に手を出しても良いです。

本物の画家(子どもだって本物です!)たちは、一つの作品を仕上げるまでに何度も「見る」時間を設けます。ずっと描いているわけではありません。筆を入れては眺めて、しばらくほったらかしてまた眺めて、ようやく筆をいれる、なんてこともざらにあります。

子どもたちも一度描いた絵をしばらく飾ったりしておいた後でまた描いたりすると絵が生き生きとしてくるはずです。また、途中で作風や描くモチーフが変わることもあるでしょう。それも楽しんだら良いと思います。小さな子どもたちにとっては、何を描くかということ以上に、描く行為そのものを楽しむということが大切だと思います。表現の時間を楽しんでください。

画像4

観点を変えれば、もっと色々とありそうですが、今回はここまで。また続きを考えてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?