見出し画像

おもちゃの役割

16世紀の画家、ピーテル・ブリューゲルの作品に『子供の遊戯』と言うものがあります。当時の幼児から若者に至る子どもたちが遊ぶ様子が、実に多様に描かれています。これを見るとあそびと言うものは、根源的なところでは時代にあまり左右されないものだと言うことが見て取れます。

画像1

ちなみに、この作品を中心とした遊びの図像学的研究は森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」』(未来社)に詳しい。

時代が変わっても遊びは変わらない

さて、実を言うと16世紀に遡るまでもなく、僕が幼少期にやっていた遊びと、姫(4歳)の毎日の遊びの中身も変わりません。積木遊び、おままごと、なりきり遊び、ブロックで何かを作ったり、工作したり、追いかけっこをしたり。

唯一、時代に応じて変わるものといえば、テクノロジーによるものだと思います。スマートフォンのゲームなどはその際たるものですが、最近流行のプログラミングトイなども、昭和の時代にはありませんでしたし、ドローンのようなものもありません。

プリキュアがいなかったとか、変身ベルトがすごくなっているなどのご意見もあるかもしれませんが、「遊びの原理」と言う点では両者ともに「ごっこ遊び」と言うことに違いはなく、キャラクターが変わっただけに過ぎません。

遊びを通じて生き方を学ぶ

これは遊びが子どもの発達や成長に大きく影響していることに起因すると思います。遊びとは子どもの成長に必要な行為だからあまり大きく変化しないのでしょう。いつの時代でも子どもは子どもです。

子どもにとって遊びと言うのは、野生動物の幼生が兄弟や親と戯れている様に近いかもしれません。想像ですがじゃれついて、逃げたり追いかけたりする中で、肉食動物であれば狩りを覚えるのかもしれません。人間の場合には遊びの中で「社会性」を学ぶのだろうと思います。

おもちゃはなくてもなんとかなる!?

さて、現代の子どもの遊びに欠かせないのが「おもちゃ」です。大人を悩ませるくらいたくさんのおもちゃが存在していますが、「遊びは時代を経ても変わらない」のだとすると、おもちゃはなくてもなんとかなる!と言うのが僕のスタンスです。
※誤解のないよう白状しますが、僕の家には仕事もあって娘のおもちゃがたーーーくさんあります。

おもちゃがなくてもなんとかなると言うのは、例えばこう言うこと。粘土がなかったら小麦粉で代用が可能です。※アレルギーにはご注意ください。

仮に世界にLEGOと言う発明がなかったとして、ブロック玩具が今ほど種類がなかったとしても、組み立て遊びは綿棒や洗濯ばさみでもかなり楽しい。

つまりおもちゃがなくても、遊び自体は変わらないのだから、作る・代用すると言ったことで、遊びを発現させることは可能だと思うんです。

おもちゃが果たす役割

ただしこれにはある程度の知識と経験がいると思います。日々成長し、興味関心も移ろう子どもの「今」に適した遊びを提供すると言うのは意外と難しい。だからおもちゃがあるのだと思います。さらに忙しい現代の親はいちいちおもちゃを作っている時間などありません。だから「買う」と言う選択をするのかなとも思います。

また、「子どもとどう遊べばいいかわからない」と言う声も根強く聞かれます。こういうときにもおもちゃは有効です。この点においては僕はおもちゃはメディアだと思っていて、親と子をつなげるメディアと言っても過言ではないと思っています。

特に父親の場合、臍の緒という物理的なつながりを持つ母とは異なり、誕生後につながりをもちます。そのつながりはスキンシップを含めた遊びで生まれるのだと思います。遊び方がわからない時でも優れたおもちゃがあれば、遊びに導いてくれます。もちろんすべてのおもちゃがそうだとはいえません。そこは選ぶ必要があります。

乳児期にはハンドパペットのようなものも良いと思っています。赤ちゃんに話しかけたり、こちょこちょしたりすると、とっても嬉しい気持ちになるでしょう。

あるいは手先の器用なとーちゃんが、さささっとプラモデルを組み上げたり、LEGOでなんかすごいの作っちゃったり。と言うのはよく聞く話。

おもちゃが遊びを誘発する

認知心理学に「アフォーダンス」と言う概念があるのですが、環境や道具が人(動物)に与える影響を指したもので、afford(与える)を語源とする造語です。例えば、マグカップがあるとすると、僕たちはマグカップの取手を握るわけですが、これは取手の方が握られせている、握るようにアフォードしていると考えることができるわけです。

画像2

おもちゃはそれに近いのかもしれません。説明書など読めない子どもたちは、自然と使いこなして遊びだします。逆にいえばおもちゃには「こう使わないといけない」と言う決まりは無い、あるいは決まりの無いものが優れたおもちゃであるとも言えるかもしれません。

このあたりはまた詳しく書きたいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?