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OcuFesができるまで 2013年最大のVRコミュニティ誕生 (4)進撃の巨人風アクションを作った伊藤周さん

前々回前回と、Oculus Rift DK1を使ったVRコンテンツ体験会「Oculus Festival in Japan」(OcuFes)が立ち上がった経緯をご紹介してきました。今回は、その最初のOcuFesである第0回にVRコンテンツを出展された伊藤周さんに、出展するまでのお話を伺ってきました。伊藤さんは現在、おなかソフト代表として、ゲーム開発やコンサルティングの事業をされています。

伊藤さんは2013年当時、Unity Technologies Japanの社員として、Unityエヴァンジェリストを務めていました。主には産業界を対象として、Unityをデモしたり相談に乗ったりしてUnityを広める仕事です。さらにその前はゲーム会社に勤めていたこともあり、実際にUnityでデモプログラムを自作する機会もあったエンジニアです。

Oculus Rift DK1のクラウドファンディングでは、一番最初ではなく少し後に出資したため、日本で最初にDK1が到着したグループではありませんでした。ですが、現物が届く前からUnityでVRコンテンツを制作を開始し、2013年5月に行われたGOROmanさんの開いたOculus Rift DK1体験会にはその自作したVRコンテンツを持ち込んで動かさせてもらったとのことです。

そのVRコンテンツが、第0回のOcuFesにも出展した、人気コミック『進撃の巨人』の立体機動装置から着想を得たチェーンアクションゲームでした。

こちらはUnityを使って作られた作品ですが、あくまでも一個人として出展されたものです。

ゲーム会社での開発経験があるとはいえ、VRの要素のあるプログラミングの経験はなかったそうです。それでも簡単にコンテンツを作ることができたのが、Oculus Rift DK1が盛り上がった一つの要因だろうと感じたそうです。

「単純な話、シーンをアセットストアで買ってきて、その中にカメラのPrefab置くだけで、その世界に行けるって感じだったんです。この作りやすさで、みんな参入されたんじゃないですかね」

最初のDK1にはVRコントローラーがなかったので、キーボード、マウス、ゲームパッドなどで操作するコンテンツが多くありました。なので、それまでのUnityの開発経験がそのまま活かせることもプラスに働いたようです。

当時のUnity(バージョン4系統)は、外部プラグインを動かすには有料のPro版が必要でした。外部プラグインで動くOculus Rift DK1は、公式販路で購入すれば、UnityのPro版の短期間のライセンスがついてきたので、DK1を買えば即、Unityでの開発ができるようになっていました。

あくまでもDK、つまりDevelopers KitだったOculus Rift DK1は、Unityで開発すること自体が、一種のメインコンテンツという側面があったそうです。

当時多く開催されていたUnityの勉強会やセミナーでは、伊藤さんがUnity社内のVR推進派としてOculus Rift DK1を積極的に紹介。Unity勉強会のはずがOculus体験会のようになってしまうこともあったようです。

2013年7月上旬の「コンテンツ配信ソリューション展」のUnityブースでは、Oculus Rift DK1が体験できるようになっていました。一般の人が来場してOculusを体験できる場としては、実はOcuFesよりも先ののとです。

このような感じで、自身でVRコンテンツも制作し、積極的にたくさんの人に体験してもらっていた伊藤さん。Twitterでも盛んに発信し、Oculus Rift DK1を楽しんでいる開発者たちともつながりが深まっていたので、OcuFes開催の話が出た時にはすぐに参加を決めたとのことでした。

伊藤さんがここまでVRに前のめりになった理由として、人にかぶせて体験してもらうのが楽しかったからだと振り返ります。

「(人に体験してもらって)ね、驚いたでしょっていう一連の流れ。それ自身がコンテンツというか、その楽しみの1つだったのかなと思います。多分みんな同じだったんじゃないですかね。驚いてくれると楽しいからっていうので、 みんな積極的になんか誰かに広めたりしてたんじゃないかなと思います」

コミュニティの成長には、人が楽しんでくれる、楽しんでくれることが楽しい、というサイクルが大きな役割を果たしていることがうかがえます。


ちなみに、2013年8月のOcuFesから少し時間の進んだ2014年4月7日、Unity社が主催するイベントUnite Japan 2014にて、Oculus VR社(現在はFacebookのMeta社に買収されて同社の一部門)の創業者であるPalmer Lucky氏が登壇しました。このPalmer氏の来日に尽力したのが、伊藤さんでした。

そして、このUnite Japan 2014の開催前日の夜中、GOROmanさんが日本のVR開発者を自身が経営するXVI社のオフィスに集め、Palmer氏を招くというイベントがありました。伊藤さんは翌日の講演の準備を終えた夜にお台場のホテルからタクシーに乗ってPalmer氏とXVI社に向かい、Palmer氏に日本で生まれたVRコンテンツを体験してもらうことになります。

もともと、2014年1月のCESや2月のSteam Dev DaysでGOROmanさんとPalmer氏は面会を果たしていましたが、Palmer氏が日本のVR開発者コミュニティと広く触れ合ったのはこれが初の機会になりました。

Palmer氏と日本のVR開発者は2022年現在も交流が続いています。

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