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【レトロゲーム回顧録】エアーコンバットの思い出


対戦格闘ゲームに馴染む事が出来なかった

1993年は対戦格闘ゲームが流行っていたが、私はブームについていけなかった。理由は簡単で技を出すためのコマンド入力が中々上手くいかない事や、連続技の出し方が全く理解出来ない状態だったからだ。それに加えて対人対戦において、相手を一方的にハメ倒す行為に強い嫌悪感を覚えて対戦格闘ゲームに馴染む事が出来なかった。
 それでも私は対戦格闘ゲームを遊ばなかったわけではなかった。
 セガのダークエッジとナムコのナクッルヘッズは割と気に入った作品で、細々と非対戦のゲーム台を選んで楽しんでいた。
だが、どちらの作品も同じ時代の作品であるスト2シリーズや餓狼伝説2、餓狼伝説スペシャル・龍͡虎の拳・サムライスピリッツに比べてマイナー過ぎる作品だった為、稼働率が低くゲームセンターからすぐに撤去された。
 またこの時代のゲームセンターはシューティングゲームやアクションゲーム等、その他のジャンルも往時の勢いが無くなりつつあった。パズルゲームのぷよぷよは人気があったが、私にとってはゲームセンターに遊びに行くのはあまり楽しくなかった。
 
 しかし、ある日突然入荷してきたゲ-ムが、私をゲームセンターに引き留めてくれた。
 ジャンルはフライトシューティングゲーム、ゲーム名はエアーコンバット‼

エアーコンバットとの衝撃的な出会い

6月のある日、近くのショッピングモールにエアーコンバットは突然入荷した。
 エアーコンバットの自機は、F16ファイティングファルコン。
 DX筐体は50インチの大型モニターを備えおり、戦闘機のコックピットを模した操縦席風の座席の左側には、自機の速度を調整するスロットルレバーを備え、真ん中の操縦桿にはバルカン砲のトリガーと少し左下にミサイルの発射ボタン、操縦桿の少し手前の所にスタートボタンがあり、右の所から操縦席の乗り降りする事が出来た。30年以上経った今では、コインの投入口の位置は忘れましたが……。
しばらくして、隣町の駅の隣にあるゲームセンターにもエアーコンバットが入荷した。
 しかし、1回のプレイ料金は200円。当時、金欠貧乏学生の私には値段が高かったが、それでも当時珍しかったポリゴンの技術を使い戦闘機に乗り込んで大空を自由に飛び回る事はとても新鮮で楽しかった。対戦格闘ゲームに辟易していた当時の私の鬱屈した嫌な気持ちを全部忘れさせてくれた。その後、1回のプレイ料金が100円と安くなりゲームをより楽しんでいった。
 特にエアーコンバットの初級と中級ステージでゲーム中に流れる音楽は、ノリとテンポが良く覚えやすい明るい曲であり、今でも私のお気に入りのひとつである

初期タイムは60秒、ミスは痛恨のリプレイとロスタイムのペナルティー

エアーコンバットの初期タイムは60秒で、敵機を撃墜すれば残りタイムにボーナスタイムが加算される。そのため敵機を素早く撃墜する必要がある。
 ゲーム中に誤って敵機にぶつかったり、敵の戦闘機の撃ってきた誘導ミサイルに当たったり、自機が地上や海上に激突してミスをすると自分の起こしたミスをリプレイされる。余計なタイムロスによるペナルティーが生じる事になるので、プレイヤーは緊張感を持ってゲームをプレイする事になる。
 後に続編となるエアーコンバット22ではプレイヤーが起こしたミスによるロスタイムのペナルティーは廃止された。これによりプレイヤーはミスを気にすること無くゲームのプレイに集中する事ができるようになった。
 店によってはゲームスタート時の初期タイムが60秒から70秒に増やされて初級と中級コースが遊ぶのが多少楽になり、これによりゲームクリアが一歩進みやすくなった。
上級モードでプレイすると、最初の敵機を捕捉して攻撃するのが困難で、最悪の場合、最初の敵機を見つける事ができないまま、持ち時間が無くなって簡単にゲームオーバーになってしまう。その為、最初の初期タイムが70秒ではゲームをクリアするのが難しく、初期の持ち時間の延長を個人的に望んでいた。
 店によっては、エアーコンバットの初期タイムを80秒から90秒に延長してくれた良心的な店もあった。

エアーコンバットと「エリア88」

エアーコンバットが発表される少し前後ぐらいに何故か漫画「エリア88」に強い興味を持ち、少ないお金をやりくりしながら、当時ワイド版になって復刻した漫画を全巻買いそろえた。
 本屋の店主だったおばさんから、「エリア88」の古い単行本を全巻購入する話があったのですが、私がやんわりと断った時の駆け引きは今でも忘れられない思い出のひとつになっており、「エリア88」を読みながらエアーコンバットを遊ぶ時に気分を盛り上げていった。

誘導ミサイルの避け方

エアーコンバットの敵機は、時々自機に向かって誘導ミサイルを撃ってくるのですが、初級コースではチュートリアルで、ミサイルの接近の警告音と共にゲーム画面に四角い赤いマーカーでミサイルが表示される。丁寧に説明してくれるのだが意外とミサイルの速度は速く、ゲームに慣れない間はミサイルに当たって自機が撃墜される事も多い。ミサイルは避けたものの誤って敵機に激突したり、あるいは自機のコントロールを誤って、地面や海上に激突して自分のミスをリプレイされる事になり、余計なタイムロスが生じてしまう。                                           中級や上級コースでは、ミサイル接近の警告音とミサイルが表示される四角い赤いマーカーが現れるだけで丁寧な説明はありません。
何回かゲームを遊んでいくうちに自分なりにコツを覚え、少しずつ上手い避け方を身に着けていった。

私なりの誘導ミサイルの避け方は
1.誘導ミサイル接近の警告音と四角い赤いマーカーが現れたら、ミサイルに対して出来るだけ自機を正面に向けておき、左側にあるスロットルレバーを後ろに引き、自機の速度を遅くして間合いを取る。
2.自機の速度は遅くしたままで、左もしくは右に操縦桿を動かしてミサイルを誘導。
3.ミサイルが来るタイミングを見計らい、自機をミサイルが飛んでくる反対側に動かして避ける。
4.ミサイルを避けたら、敵機を捕捉して追撃する。 
  
 タイミングを一つ間違えると、誤って誘導ミサイルに当たるか、敵機にそのまま正面衝突する。慣れるまで多少の時間が掛かったが、上達していくうちにミサイルと敵機を避ける事ができるようになった。
 後に、私が考えて身に着けた誘導ミサイルの避け方は、約1年後に意外なジャンルとゲームで役に立つことになる。

誘導ミサイルと邪魔なチャフ

敵の戦闘機はチャフを使ってこちらの誘導ミサイルの攻撃を防いでくる。
プレイヤーが使用できる誘導ミサイルには数に限りがあり、敵機を撃墜する度に、ミサイルは4発ずつ補充されていく。
 初級コースでは敵機がチャフを使用した事をチュートリアルで丁寧に説明をしてくれる。しかし、敵戦闘機のチャフの使用率は、初級、中級、上級コースと難易度が上がるうちに、段々と敵機のチャフの使用率が高くなっていく。ミサイルでの撃墜が難しくなりゲーム終了時のスコアと成績に大きく関わってくるので、ミサイルを使用せずバルカン砲だけを使って全コース攻略を目指す事がエアーコンバットのクリアのひとつの目安になった。
 私も最初の頃は、誘導ミサイルを使って敵機を撃墜していましたが、チャフを使用して撃墜を免れた敵機に対して私はよく悪態をついて
「あの敵機チャフを使って逃げやがって!!」
とか
「あの敵機!チャフった。」
「あの敵機チャフりやがったな!!」
等と大型筐体で少し?荒い口調で独り言を言ってゲームを楽しんだ。
 プレイヤーの誘導ミサイルを敵機がチャフを使用して撃墜を免れる行動は、エアーコンバットの続編であるエアーコンバット22でもしっかりと継承されている。

私が抱えていた悩み

エアーコンバットは楽しく遊んでいた。
ある日、上級コースクリアを目指して遊んでいたが、ゲーム中に敵機が動いているのは目で分かっていつつも、自分の体が反応するのが少し遅く、約2秒から3秒くらい掛かり、そのまま最初の敵機を捕捉出来ない事が何回もあった。
運が良ければ3機ぐらい撃墜できる日もあったが、運が悪ければ最初の敵機を見失いそのまま時間切れとなり簡単にゲームオーバーになった。当時ゲーメストにエアーコンバットの攻略記事を読んだが、あまり改善する事は無かった。
もし、初期タイムが120秒に延長していれば、もしかすればエアーコンバットがクリア出来るかもしれないという自分勝手な思いと不満をいつも抱いていた。
私は、昔から運動反射神経が悪い事に強いコンプレックスを持っており、いつもその事で悩んでいた。この時ばかりは、自分の非力さを強く痛感した。
後にエアーコンバットは隣町の駅の隣にあるゲームセンター、続いてショッピングモールにあるゲームセンターからいつの間にか撤去されて、私は寂しい思いをした。
その後エアーコンバットが別のゲームセンターに入荷して、上級モードを完全にクリアするのは、それから約8か月後の事になる。

新しく開店した専門学校近くの駅前のゲームセンター

私が通っていた専門学校の近くの駅前に、10月ぐらいになって新しいゲームセンターが開店した。
地下1階には新型のアップライト筐体で対戦格闘ゲームを中心に置いており、地上1階には主にリッジレーサー2のSD筐体による通信対戦台やデイトナUSAのSD筐体の対戦台等のレースゲームが置いてあった。 
特に放課後は、私が通う専門学校の同級生達が集まる定番の憩いの場所となった。

エアーコンバットとの嬉しい再会

しばらくしてエアーコンバットの大型筐体も入荷した。
1回のプレイ料金は100円、スタート時の持ち時間は入荷した最初は80秒だったが、後に90秒から120秒に延長された。この嬉しい変更で私が長い間、待ち望んでいたエアーコンバットの上級コースクリアの道筋がやっと見えてきた。
車好きの同級生達がリッジレーサー2の対戦を楽しんでいる隣で、私は再入荷したエアーコンバットを1人でコツコツと遊んだ。
最初の頃は中級コースで遊んでいたが、しばらくしてゲームのスタート時間が延長した事をきっかけにして上級コースを選んで遊ぶ様になった。
どうにか苦労して上級コースの敵機を全部倒す事が出来たが、緊張し過ぎて何度か空母の着艦に失敗してゲームオーバーになった。それでも諦めずにゲームを続けて無事着艦出来るまで腕が上がった。
しかし、無事に空母に着艦しても無事にゲームは終わらない。上級モードの最後のエクストラミッションでは、バルカン砲1000発、ミサイル2発だけの僅かな装備で最後の敵機であるSU-27Aフランカーに挑まなければならない。私は何度か挑んだが倒しきれずに時間切れの無念のゲームオーバーになった。
上級コースを何度も挑戦し、軽快に動き回るSU-27Aフランカーに半ば翻弄され続けて危うく敵機に激突しそうになったり、たった2発しか無い貴重な誘導ミサイルを全部続けて撃ったが、2発ともSU-27Aフランカーが使用するチャフによって撃墜を阻まれた。
悪戦苦闘の末、最終的にバルカン砲を使って倒して、念願だったエアーコンバットの完全クリアを果たし、その日の午後は、私にとって忘れられない感無量の最高の思い出になった。
3月になり、専門学校を卒業する数日前、友達に無理を言って一人でゲームセンターに立ち寄り、エアーコンバットとの別れを惜しんだ。

SD筐体について

エアーコンバットはSD筐体といわれる小型の筐体がある。私は何回か初級コースと中級コースをプレイしたこと何度かあり、コンパクトで小さいながらもゲーム性は損なわれる事無くしっかりと作られている。

エアーコンバットとの忘れられない思い出

 遠くからバルカン砲で敵機を撃墜すると少し特別なセリフで喋ってくれる。
 爆撃機はゲームに慣れれば比較的簡単に撃墜できるのですが、戦闘機が相手になると難しい。特別なセリフを聞くなら、爆撃機が出てくる初級コースと中級コースがお勧めになる。
 専門学校の冬合宿の時、集合まで時間あったのでショッピングモールで景気付けにエアーコンバットをプレイした。中級コースをバルカン砲だけを使ってクリアし、気合を入れて合宿に臨んだ。
また別のゲームセンターで中級をプレイした時に、トリガーが壊れたバルカン砲だけでフルオート掃射でゲームをクリアした。
ゲームクリアの後、その日のうちにゲームセンターの店員を呼んでエアーコンバットのバルカン砲のトリガーの修理を頼んだのは言うまでもありません。
エアーコンバットを遊ぶ合間に専門学校の同級生とよく、デイトナUSAの初級コースで対戦をしていた。私が何度か1位をとってしばらくして、ある日突然、トップを走っている私の車に、同級生達が次々と逆走し始めて突っ込んできた。しかし、私がエアーコンバットのプレイの中で鍛えた誘導ミサイルの避け方を使い、当てようと迫ってくる同級生達の車を次々と避けていった。
対戦後、同級生の友達から何故あんなに逆走した車を相手に上手く避ける事が出来たのかを尋ねられた時、私はエアーコンバットのプレイ中に鍛えていた事を教えた。彼らも私の行動が読みにくい事に感心して後日の再戦に強い意欲を燃やしていた。
その後、同級生達との何度目かの対戦で、遂に私の車にアタック成功した時、彼らが嬉しそうに喜んでいた顔は、今でも楽しく心に残っている。
 しかし……。私がエアーコンバットでプレイして誘導ミサイルの避け方を覚えた事が、全く違うジャンルであるレースゲームのデイトナUSAの初級コースで役に立ったことは世の中、何が役に立つのか案外分からないものである……。

 戦闘機を模した大型筐体で、大空を自由に飛びたいという強い願望は当時の多くのシューティングゲーマー達が、誰もが夢に見ていた憧れの世界の到達点といえる。その夢を叶えてくれたのがエアーコンバットだった。
その後、この大型筐体は引き続きエアーコンバットの続編であるエアーコンバット22に引き継がれ、同じ年には初代プレイステーションで初代エースコンバットが発売されて人気作品になった。 
後にナムコはフライトシューティングゲームという新しいジャンルの礎を築き上げて、現在でも根強い人気ジャンルの作品となっている。

  • 執筆 現地改修

  • ©DIGITAL butter/EUREKA project



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