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ブロンプトンをちょっとカスタムする

 日本人の男性の身長の平均よりかなり低い、まるで体が正方形とでも形容すればいいのだろうか、そんな自分だと、実はブロンプトンのMハンドル(新しい呼称がなかなか覚えられない)は、けっこう勝手が悪い。ほぼママチャリのスタイルになってしまうのです。そうと知りつつもブロンプトンを手に入れるとき、Mハンドルにしたのは、その形状からくるクラシックな印象にほれ込んだから。トップチューブのゆるやかなカーブに加え、Mハンドルがもたらすクラシック感は、どうしても自転車を新たに手に入れたいと思わせるのに十分な魅力を持っていました。持っているカメラから察しはつくでしょうが、どうしたって僕はクラシックな印象のものが好きらしい。

 それに、このママチャリスタイルも、ことフォトポタリングを楽しむにあたっては悪くない姿勢ではあります。視野が高い方が周りを見渡せるし、安全にも良い。それにごりごり走るのならロードバイクもあるし、こちらはゆるりとしたポタリングに使えばいいとも思っていました。

 そんなある朝、地元のサイクリングロードに通じる自転車歩行者専用の道を走っていたところ、前に高校生のママチャリが走っていたのです。部活だろうか、彼は、まあ、いわゆる普通の速度より少し速いくらいのペースで自転車を漕いでいました
 自分も少しはやめの速度を出していたのだけれど(ただし、正方形な体の人間なので、通常の自転車乗りさんよりはかなり遅いと思われます)、その速度は、高校生の漕ぐ自転車の速度よりちょっと速いくらい。つまり、抜いてしまうんですね。で、抜いてしまうと、速度を緩めるわけにはいかない、というわけの分からない意地が出て来るんですね。
 そんな阿呆なことを、大人げないと言われそうなのですが、速度を緩めずに走ろうとするどころか、ちょっと引き離そうとか思ってしまうのですよ。近くにつかれて、ふとしたときに抜かれると、「なんだこのデブ、調子に乗って抜いたくせに」などと思われたらどうしよう、などと、自意識過剰なことを思ってしまうわけです。
 そこで、ペダルを回すのです。ぐいんぐいん回すのですが、すると足だけでペダルを回している感じが強くて、なかなか持続できないのです。これは自分のエンジンが悪いだけではないぞ、と思うくらい、足だけが疲労してしまうのです。

 そういうわけで、いよいよこれは前傾姿勢を作ったほうがいいかな、と思うに至ったのです。

 購入直後から、ハンドルを低くする、というカスタムは考えていました。前傾姿勢の効果はロードでも感じていましたし、なにより、緩くMの字を描くスタイルは、純正の深いMの形よりむしろ好みでした。他にも考えてきたのは、前のギアの歯数を小さくして、漕ぎ具合を軽くすること、また二者択一としてМハンドルではなく、ミニPハンドルをつけてみる、という案もありました。

 ギアの変更については、この2、3年乗ってきて、軽くするよりはむしろこのままの方が合っているように感じてきています。ロードでよく使う重さが、ゆるいときと少しはやめに漕ぐときとで、ブロンプトンの3段と4段とほぼ同じのように感じたんですね。それでも何か体力を消耗してしまうのは、その間のギアがなく小刻みにギアを変えられないことと、ミニベロゆえにタイヤの回り続ける慣性が弱いこと、それからフロントバッグの影響、そして前傾姿勢がとれないことなのでは、と思ったのです。そのうちこの前傾姿勢は、ハンドルを低くすることで可能なわけですから、そちらをカスタムする方向に行くことにしたわけです。

 すると出て来た選択肢が緩いライザーのハンドルか、Pハンドルかということになるのですが、Pハンドルは下ハンドルを握るにしても、ブレーキの関係で場所が限られます(今にして思えば、しゃかりきに漕ぐときって、周りが安全な時ですから普段のフォトポタリングのときと使い分けできて良かったかも)。あとはやはり目立つ。目立ちますよね。スタイリングとしては純正のPハンドルは間延びした感じがあったけれど、ミニPハンドルは嫌いじゃなかった。だからそうしても良かったのだけれど、結局、ライザーバーにしてしまいました。

 少し乗ってみた感想としては、ずいぶんと違う、でした。前傾具合は自分のロードよりも少し緩め。ロード自体、サドルと同じ高さ程度なのだけれど、それより緩めなので、乗り心地もちょうどいい。クロスバイクならこのくらいかな、という程度。しかしそれで漕ぎ出してみると、すうっとスピードが乗る感じがします。それまで足だけで踏んでいた感触が、体を使って回している感じになりました。
 身長の低い自分なので、これくらいがちょうど良かったんですね。

 ついでにグリップも替えました。純正は安っぽさがあったけれど、グリップ具合はとてもよく、滑らない。なのでけっこういい加減な握り方をしても全然不安がありません。ところが今回は見た目を重視してブルックスの革製のものにしたところ、けっこうツルツルなんですね。おまけにクッション性も弱くなり、体重を腕にかけてしまうとすぐに痺れがくるように。これはもちろん姿勢も影響を与えているのだと思います。しっかりペダル回せる人は荷重をちゃんと足に持って行けますから。
 それでも、その見た目はなかなかに良くって、このままサドルもレザーのものに替えてバランスを取りたくなってきます。

 さて、そんなわけで、ハンドルをカスタムしたブロンプトンですが、まだそれなりの距離を走ってはいません。なので、実際のところ前傾姿勢となって、体のどこに不具合がくるかまだわかりません。できたらどこかの休日にそこそこの距離を走ってみたいと思ってはいますが、その日がいつになるか…。その日を楽しみにしつつ、日々を送りたいと思います。

微妙にサドルよりハンドルが上にあるのがちょうど良い。
ライトはブロンプトン定位置にはつけず、すぐにつけたり消したりがしやすい場所に。

…と書いたあとで、35kmほど走った。その後でラレーのクロモリロードに乗ってみると、加速に差があったのが、そこまで大きく変わらなくなったように感じた。もちろん車輪の大きさで、転がり具合は違うんだけど。いや、105の性能はそれ以上かな。でも、いかに前傾姿勢が大事なのかをよく分かる経験となった。

 それから、ずっとブロンプトンに乗っていて、加速しやすいサドルの高さにしていたら、ロードでこれ以上は高くできないと思っていた高さをゆうに超えてサドルを高くしないと窮屈に感じられるように。徐々に上げて行って、都合3センチは高くした。

 某峠を攻める車マンガで、もはや旧式なハチロクと、新型の4WDを交互に乗るということをして走りの磨きをかけるというエピソードがあったけれど、これと同じことを僕はしていたようだって言ったら大げさだな…。
 

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