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カメラは2度買え。

 地方だと、フォトスポットまでの移動は車という方が多いのではないでしょうか。
 かく言う自分も、車で撮影目的地に行くのが普通でしたが、スナップが主な撮影ジャンルなので、車で行くとなればましてやこのご時世、スナップできる場所は限られてしまいます。
 そんな時に自転車はいいよって話を書こうかと思ったのですが、趣味を2つ持っていることをつらつら書いていたらタイトルのような結論が出ました。
 今から趣味でカメラを始めようと言う方、これ、カメラでなくてもいいのですが、こうやって買うと痛手という名の出費が嵩まなくて良いですよ、という話です。でも、多分、そんな話はあちこちでされていることかもしれません。
 オススメのための文章なので、いつもと文体を変えてお送りいたします。なかなか本題に行かないし、長いのですが、ダラダラと読んでいただけたら幸いです。

自転車、カメラ両方を趣味にしている人

車もバイクもな多趣味な方

 自分の身の回りでも、自転車とカメラを趣味とされている方が複数名いらっしゃいます。お一方は自転車とカメラ双方と言うか、多趣味。車も好き、バイクも好きで、上がってくるSNSではこの一年でジムニーとコペン、それから詳しくないので名前まではわかりませんが、単車一台手に入れてらっしゃいます。高級志向でないところがまた良くて、さらに面白いのは、古いジムニーを自分で手直しできてしまう、と言うところです。
 自転車も良いのをお持ちのようです。カーボンロードとあと一台は持っているようで、ミニベロもブロンプトンを所持されています。
 この方は基本は自転車のときは自転車、カメラの時はカメラと分けて楽しんでおられるように思います。

互いに影響を受けて

 次に自分の兄です。もともと自分の自転車趣味は兄の影響が強いのですが、ある日突然、クロスバイクを購入、ホイールをマウンテンバイクのそれに履き替えられるもののようでしたから、サスペンション付きというのも考えるとあれはマウンテンバイクだったかもしれません。今は親父が使っているようです。
 その後ビアンキのロードバイクに変更、カメラの方は最初、僕のお古を使っていましたが壊れたのを機に自分でCanonのエントリーを購入、シグマの50mm アートを使っていました。そのエントリーも故障して、カメラ何がいい?と聞いてきたので、フジフイルムを勧めました。結果当時最新で、手振れ補正もつき、Canonと操作性もあまり変わらないX-S10と僕がほしくて仕方がなかったXF90mmを、子どもが動きまくるからこのくらい距離あった方がいいとゴリ押しし、それに合わせてXF23ミリf2を購入。永久的に貸すよと貸したカメラとレンズは、どちらも壊れて返ってきませんでした(涙)。
 そんな兄もまた釣りという趣味があり、こちらもしっかりハマっているようです。もともと子供の頃はそれなりに釣りには行っていましたが、魚あんまり食べない兄弟だったのに魚好きになったようです。
 他にもバイク(TWだったかな)に手を出したり、アウトドアに片足突っ込んでいたりしましたが、今は自転車はあまり乗らないようで、主に写真と釣りみたいです。

地元の市議会議員さん

 知り合いの知り合いですが、この方、とても凄い方です。アサヒカメラの年間賞かなんかを撮られています。地元の小さなギャラリーで時々グループ展などをされていますが、スタイルが確立されているのと、パッと見て、他の方とは群を抜いてうまいとわかるほどです。
 時々街中で見かけるのですが、GRやX100F、Nikondf、SONYα7Ⅱなんかを使っておられるようです。ブログがあるので見てみると、ズミクロンもお持ち。
 自転車もお乗りになっているようですがブログのエントリーで、ブロンプトンをヤフオクで落札した記事を読みました。時折自転車で移動されている姿も見かけます。地元を自転車に優しい街にしようとされている方でもあり、ぜひ進めて行って欲しいところです。自転車に優しい街は人にも車にも優しい街だと思います。

カフェのマスター

 だった方です。誤解を恐れずに、憶測で言えば、趣味でカフェをやってらしたと言った感じ。お客さんも写真趣味か自転車趣味の方が多く訪れていました。帰郷して喫茶店難民だった僕の行きつけとなりました。
 お店をたたんだのち、しばらく一緒にフォトポタリングをする仲になりました。向こうの方が年上なのですが、脚力は遥かに向こうが上。おまけに持っている自転車もなかなかなものでした。はじめてカンパニョーロを見たのは彼のロードバイクでした。自分の持っているロードとケタが違います。
 カメラは喫茶店営業当時はフォーサーズを使用しておりましたが、ズミルックスを持っていると聞いていました。
 最近写真展の会場でお会いしたらライカM10P ブラッククロームを手にされていました。これまたケタが違う。
 かつてのお店でも真空管アンプでジャズを流していたり、腕時計なんかも下手に高いのではなく品のあるものをつけられていたり、下世話な話も嫌いじゃない方ですが、基本品の良い方です。今度、彼と先に挙げた市議さんとで展示を行う予定となり、今どんなふうにするかを考えています。

 と、身近に両方を趣味にしている方を挙げましたが、両方というか多趣味なうちの一つ、あるいはメインがその2つって感じかなと思います。

自転車が先か、カメラが先か。

出費に差が出る

 趣味として自転車に乗ることを先に、そして後にカメラに入った人は、きっと出かけて行く先々の景色をきれいにおさめたいという欲求からだと思います。だから、カメラは自転車に乗ることを軸に選定されます。小さなコンデジとか、軽いボディーとかそういうのが基準となるでしょう。
 一方で、カメラから入った人は車や公共交通機関、あるいは徒歩以外の移動手段が欲しくて手に入れた方が多いのではないかと推測します。
 ですので、どちらが先かで、機材への力の入れようも違うのではないか、機材の選定の基準も変わるのではないか、と思います。
 僕の場合は、写真が先で、後で自転車を加えたので、お金のことについて言えばカメラへの出費が明らかに多い。自転車もけっこうな出費でしたが、それでも、十分の一とまではいきませんが、けっこうな開きがあったりします。

 しかし、先のマスターのように、どちらにもちょっと金かけてんなあ、という方もおられますし、人それぞれ、家計でそれぞれなんでしょうが、機材を揃えていくなら貯金をちょこちょこ貯めていくしかありませんね。

一度勉強しているはずなので

 ただ、この趣味が2つある、というのは、一度、趣味だから安いのでいいや、から、結局フラッグシップ購入に至るという、遠回り現象を食い止めることができるはずなのです。


 自分もコダックのコンパクトデジカメから始まり、エントリーの一眼レフにして、高いから標準ズームだけだったのが望遠欲しいとなり、連写が必要ないのに中級機を手に入れ、フルサイズのカメラを手にして、そこから単焦点レンズに代わり、ようやっと自分の撮り方だと小さいカメラの方がいいなと気づいて、ミラーレスに行き、とかなりの出費をしています。その間に、普段はあまり使わないと予測しながらもマクロや魚眼などにも手を出していますから、出血著しい状況です。自分の必要なものがわかるのにまあ、遠回りしまくりです。
 その過程で気づいたのは、趣味としてハマるのが分かっていたなら撮り方のスタイルは別としても、最初からそこそこのを買っておけ、でした。
 ですが、それが分かっていながらも自転車で、同じ轍を踏むんですよ。これが。
 ちょっと運動したいね、自転車いいかもね、と言うことでロードを持つ兄に相談したものの、やっぱり乗ってみないとわからないと言われ、近くの自転車屋さんに試乗しに行きました。クロスバイクとその時あったミニベロロードに乗り、ミニベロロードのかわいさに惹かれるものの、結局はビアンキ、エントリークラスのクロスバイクにしました。どちらかと言うとレトロなビジュアルが好きなので、ミニベロロードはなかなか好みではあったのですが、一つは価格で手が引き、もう一つはハンドルの幅が狭くて、バランス取るのが難しいね、ということで判断しました。

 ところが、これで30キロも50キロも走ると上を知りたくなるのです。
 いわゆるハマったというわけですね。間にルノーの重量7キロしかない折り畳み自転車を買ったりもすると、ロードというのは自分の持つ折り畳みと同じく軽くて、さらにスピードが出るというじゃないか、果たしてそれはどんなもんかと欲しくなるわけです。ほらやっぱり、同じ轍を踏むのですよ。

 しかしさすがに今回は違います。僕はこう思いました。
 カメラであんなに遠回りしたんだから、ここは予算の許す限り、多少オーバーしても良いものにしたれ。その方が遠回りしないで、結果安上がりである、と。
 調べた結果、ラレーというメーカーの、それはイギリスのメーカーで、今は日本の企業がライセンスを取得しており、製造は台湾製という、なにがなんだか分からないところのロードに目星をつけました。台湾は自転車の製造が盛んで、多くのメーカーがここで作られていることも知りました。
 ラレーCRFはコンポがフル105、つまりレースに出たければこのグレートにはしておけ、というギアやブレーキなどの総称という認識ですが、このフルコンポでこの値段というのはお買い得だという記事を見て、見た目も鉄製、クロモリフレーム(正確にはマンガンモリブデン)のスリムでレトロな感じが気に入り、重さも10キロを切っていることから購入第一候補に上がります。更には運良く?自転車屋さんにお客さんが発注した現物があり、間近で見ることができたので、これはいいぞと購入するに至りました。ロード業界の事情もその頃には知っていたので、本当は違う色が欲しかったのですが、在庫がもうないことを知ってそこは妥協しました。

 レースには出ないだろうし、コンポも安いもので良かったのですが、どうせハマるとわかっているのなら、出来るだけ良いのを買う、というのは、正解だったと思います。加速、スピードが伸びる感じ、そのどれもが最高でした。
 もちろん上を見ればキリがありません。カーボン製がどんなものか見てみたくもなります。しかし、自分の好きをぴったり具現化してくれたこの自転車は予算を多少オーバーしていても買って良かったと思います。もし、少しグレードを下げようとしていたら、多分また、買い換えようとしていたんじゃないかな。そんなことをしていたら、メインのカメラに支障が出ます(既に出ているけれど)。カメラが先で、自転車が後だった僕は、自転車では大きな遠回りをしないですんだわけです


 って、わけでもないですし、今後ももっとひどいことをしそうな気もしないでもないですが……。でも、少しはマシだったとは思います。

カメラは2度買え、というのは

お試し期間を設ける

 今度カメラを買いたいのだけれど、何がいい?と聞かれることがあります。最近はどんなのを買っても問題はないので、見た目で気に入ったものがいいですよ、と応えることにしています。そうすると、子どもさんの撮影のためとか、そういう実用性で選ぼうとされている方は、たいてい大手のエントリークラスのカメラをダブルズームキットで購入されています。
 趣味として始めたいという方も、だいたいはそう。このカメラはなんだ、あれはどうだ、と言ったとして価格との問題で、そうなることが多いように思います。そしてそれはそれでいいと思うのです。何を撮りたいかでも、カメラは異なってくるけれど、趣味として始めたい人が何を撮りたいかなんて予め分かるわけがない。むしろそれが明確な人であれば、自分で調べてしまうはずで、相談が来たとしても、そこには既に機種の候補などがあがっているはずです。
 だから、手放しでカメラ何がいい? と尋ねてくる人に、少なくとも、cannonのМシリーズは先があやしいので、趣味として続けるならやめておいたほうがいい、とか、ちょっと前のオリンパスなら、少し不安定だね、とか、そういうことは言えるけれど、用途にあったカメラを、用途が見えないのに、これ!とは言えないと思うのです。
 だから、もし、本当にカメラは何がいいのか、写真を趣味にしようと考えている人には、中古で安いのでいいから買ってみるといいよ、と言うのがいいのではないか、と思うわけです。それで、あ、これはハマるな、と思ったら、そこから本気でメーカー選びから機種選定をすればいい。最初から高いものを購入して、結局使わなかった、となれば大損ですが(売ればいい、という考えもありますから、そういう手も。買いたたかれるのは仕方がないとして)、そういうことを防ぐ意味では、最良の方法ではないかと思います。あ、これはハマるな、と考えてからカメラを考える。そのころには、色々自分で調べてもいることでしょう。このお試し期間を設けることにより、できるだけ低リスクで、より機種選定が楽しく、そしてしっかりできるはずです。

 低リスクな趣味が楽しいのかどうか、は分かりませんけれども……。

レンズは、でもできたらキットレンズではないほうがいい

 これはよく言われることですよね。もちろん、キットレンズはコスパもいいのですが、できたらちょっと違うレンズを同時に手に入れるのがいいような気がします。
 よくこれも言われるのが、格安だけれど、明るいレンズ。cannonのEF50mmF1.8のような。各社にそういう撒き餌レンズがあるといいですよね。スマホの台頭で、ぱっとみの写真の美しさがそう変わらない今、レンズによるボケの表現は、カメラを使って撮ることの醍醐味だと思います。その安い単焦点レンズを付けて、単焦点が不安であれば、キットズームにプラスする形で購入するといいように思います。
 他にも、例えばマクロレンズとか魚眼とか、望遠とか、そういうスマホではなかなかできない撮り方が可能なものを一本手に入れてもいいとは思います。カメラのことを何も知らない人でも、自分は鳥を撮ってみたいんだ、とか、子どもの姿を、とか、花をきれいに、とか、自分の撮影スタイルではないにしても、うすぼんやりとしたイメージはあると思います。それらを聴いて、じゃあ、このレンズはどうかな、と勧めるのもいいのではないでしょうか。ただ、あとで売却することを考えると、やっぱり大きな痛手になりにくいのは単焦点レンズの安いものを手に入れること、ではないでしょうか。

何が撮りたい、ではなく、どんなライフスタイルか

 完全なる受け売りですが、某大手カメラ関連HPに、カメラ何がいいかと尋ねられて、そのときに何を撮りたいか訊いても難しいだろうから、どんなライフスタイルかを訊くのがいい、というのがありました。なるほど、と思いました。
 30代後半、家族で年に2度の旅行が生きがい。
 60代、まもなく孫が生まれる
 20代、休日は基本ごろごろ、でも夕方の散歩は欠かせない。

 そんなふうにその人の暮らしを尋ねて答えてもらうほうが、カメラ選びにも道筋が見えるような気がします。
 そうすれば安い中古のカメラということを前提として、こんなのはどうか?など答えることもできますし、ライフスタイルを鑑みてAFが弱くてもいいっていうのであれば、X-pro2でなくX-pro1というようにすればかなりの出費を抑えられるでしょう。そうして一つレンズを手に入れる。それでハマらなかったらすっぱりとやめて仕舞えば傷口は浅くてすみますよね。

自分のことを振り返って

でも、そうは簡単に行くものでもない

 ここまで、とりあえずカメラ始めてみようかなという人に、中古を安く手に入れてお試し期間を設けてみよう、できればレンズを一つ特徴あるものにしてみようと言うことを書いてきました。
 自分のこととして、じゃあそれでコストをかけないでいられるか、と言うと、実はそうではなかった、という話も付け加えてみます。

 先程挙げた自転車の話ですが、ロードバイクに乗っていて、今度は別の需要、つまり欲望が出てきたのです。
 僕の場合、カメラが先で自転車が後、なタイプでしたので、自転車を100キロ漕ぐとしても、カメラは必ず持って行くわけです。それもレンズを数本抱えて走ります。アホか、と言いたくなります。軽いのが正義のロードで数キロにもなるカメラを持ち運ぶわけです。
 おまけに、ロードの姿勢とスピードは、ちょっといい風景に出会ったとしても、止まりたくなくなります。また、スタンドが付いていないので、どこかの壁に立てかけるか、地面に寝かせなくてはなりません。
 カメラやカメラバッグを肩に斜めがけしてロードで走るのは実はそんなに苦ではありません。前傾姿勢になるからカメラの重さを背中が支えてくれるからです。前傾姿勢の浅い自転車だとむしろ結構大変です。とはいえ、やはり何十キロも走ればやはりお荷物感は否めませんし、もっとストップアンドゴーのしやすい自転車が欲しくなってきます。
 また、ロードは折り畳みできませんから、それまで家から離れたところに行くにあたっては、車に載せて行ったりもしていたのですが、チャイルドシートの着いた車ではそれも難しい。じゃあ先に購入していたルノーの軽い自転車で用途としては充分じゃないか、となるのですが、その自転車がタイヤが小さすぎて神経を使うし、アルミ製故の突き上げもあり、街乗りをする分にはいいのですが、距離を稼ぐとなるともう地獄の沙汰のような状態に。そんな言い訳をしつつ、やっぱりいいのが欲しくなるわけです。
 そうやって折り畳み自転車を購入したわけですが、それはスピードを求めて走るロードとはまた違ったマインドが必要となります。そしてそのマインドが写真趣味とよく合う。気になったところでちょいと止まって撮る、それでいてそれなりの距離も走れる。総合的な速度はやはりロードのそれにはかないませんが、いざとなれば公共交通機関が利用しやすいこともあり、自分にとっての使いやすい自転車は、より早く遠くへ、というロードより、細やかなストップアンドゴーのできる折り畳み自転車だったのです。

 そのことにもっと早く想いが巡っていれば、一息にブロンプトンを買っていたのでしょう。ロードは買わなかったかもしれません。
 けれども、いや、あるいはそれならそれであとでロードも買っていたかもしれない、その実、ロードで海沿いまで走りたいと思うこともあって、そんな時はカメラは一台で、ということもあります。ただ、徒歩よりも広い範囲を走れ、車よりも広く深い範囲を見つめることのできる折り畳みの小径車は、写真を撮りながら走るのにちょうど良かったのです。

自分の使い方を知るまでには時間が、お金がかかる

 ここまで書いたように、写真が先だった僕はミニベロがぴったりだったということに気づくのにそれなりの時間がかかりました。しかしブロンプトンを乗り回している間に、もしかしたらもっと遠くへ、もっと楽に、という欲求が高まらないと言うことは言い切れません。要はあれこれ試してやっとこれかな? という自分の、大袈裟に言えばスタイルが分かってくるし、それが何かのきっかけで更新されることもあり得るということです。
 カメラでも、あれこれ取っ替え引っ替えしてから、そうして自分のスタイルにあったものを見つけられるようになる、と言えそうですよね。
 これ、趣味の話だけでなく、どんなことにも汎用性があるものだと思うのですが、仕事とか、恋愛とか、そう言うことにも言える。コストをかけないで、円満な関係性をつくることは難しい。この時のコストとはお金ではなく、時に生じてしまう軋轢の解消のための時間だとか、そういうもので、それを恐れて遠ざけていたら何も得ることなく、それらとの関係は終わらないといけない。
 趣味も同様、結局はこれだなと思うやり方を見つけるにはそれなりに時間がかかる、すなわちお金もかかるのだろうなと思うのです。もし僕がロードバイクにズッポリとハマったならば、今度はカーボンロードのコンポはカンパニョーロ、となるでしょう。そうすると今の機材は遠回りの一角になってしまうのです。

 もともと自転車とカメラの組み合わせはサイコーですよ、という話を書こうとして、なぜかカメラを始める人には安いのをとりあえず買いなよ、という話に変わってしまったわけですが、それは最初に書いた、自転車とカメラ双方趣味の人たちを挙げているうちに話が変わっていったのです。
 というのは、彼らが、けっこうな遠回りをしていることに気づいたからです。どこにそんなメセナがあるのやら、というレベルの方もおられますが、裏を返せば、そんな資金があるのであれば、最初から自分のサイコーを手にすればいいのです。もし、今の段階で、趣味に対する知識もあって、ゼロからカメラを買うならば、ライカM10Pにズミルックス50ミリ、ノクトン35mmと75mm それから中華製の50ミリf0.95とを手に入れて、フジフイルムのX-T4を買って、運動会用に望遠を手に入れることでしょう。それだとこれまで使ってきた金額をオーバーはしますが、遠回りはしなかったなあというくらいになりそうです。20年の散財は恐ろしい。けれどもカフェのマスターだった方も、数台の自転車を乗り換えているようですし、カメラも複数台持ちながら、ライカに手を出しているし、ネット徘徊した結果、指が攣る病にかかっている人など、みなそれぞれに紆余曲折を経ているような気がします。
 きっとそれは、現時点での、最良を手に入れていても、次第に自分の在り方が変わっていくからでもあるのではないかと思います。フルサイズの一眼レフで、スナップは撮れるけれど、スナップにハマれば街に溶け込みやすいカメラが欲しくなりますし、さらにはそうこうしているうちに、新型が出て心惹かれたりと、沼というのはかくも深いわけです。

 その沼にハマるか、ハマらないか、人それぞれで分かりません。ハマると待っているのは沼の深淵です。深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているわけです。新型カメラの魅力をチラつかせながら。それに耐えられず、いろいろとやっちまうわけですが、こちらもおいそれと財布の紐を緩めるわけには行かない。その深淵との駆け引きの中で、あれこれ妄想して、いよいよ手が震えて夜中なんかに勝手に指がポチりとしてしまうという(家庭的な)死に至る病にかかってしまうことを幸福に感じるのであれば、どのみちコストのことなんか考慮できず、遠回りしてきたなあ、と呟きつつ、思えば遠くへ来たもんだ、と歌うしかないのかもしれません。

 同じもの何台も持ってるのにどうしてそんなに。と聞かれることがあります。はたからみればそうですよね。使わない機材なんてのも出てきます。売ればいいのに、売価の低さに売らない方がマシなどととち狂ったことを呟いたりもします。自分がいかに物欲にまみれているのかを知ってげんなりもしますが、それもまた楽しいのでしょう。いや、楽しい。

趣味は日常から抜け出す扉

 趣味は家や仕事とは別の世界を持つことだと思います。朝は7時過ぎ、夜は9時まで働いて家に帰ることの繰り返しのなかで、日常とは別の世界を持つことは素敵なことではないでしょうか。誰かが言っていましたが週に一度くらい自分の好きなことができるくらいの余裕がないくらいになってしまうのなら、その仕事はやめてしまいなさい、という言葉は、なるほどなと思わせるものでした。それは企業が真っ黒だからダメというのではなく、アウトプットばかりしていては自分が枯渇するということだからです。別に趣味がなければインプットできないというわけではありません。日常を丁寧に暮らしておられる方の豊かさは、美しくも感じます。が、日々余裕がないなかで、趣味は強引に、日々の暮らしに余白を作ってくれる装置だと思うのです。
 定年退職されてから無趣味の方と、なんやかんや楽しんでおられる方とではやはり何か違ってみえます。御年70で休日はテニス、通勤はロードという方は、年齢を聞いた時衝撃が走りました。もちろん運動されている若々しさがあってのことですが。
 もしも、あのときカメラにハマるきっかけがなく、漫画と音楽だけが癒しみたいな暮らしをしていたら、自分の場合多分仕事はやめていたかもしれないし、結婚すらしてなかったかもしれません。写真展をやったのが結婚のきっかけでしたから。
 でも、そんな大袈裟なことは言わなくても、日常に何かハリが欲しい、何か趣味が欲しい、何かないかというのであれば、とりあえずなんでもお試しをしてみるのがいいと思います。でも、そうやってとりあえず何か、と探すようにして趣味を見つけるのは、なかなかコレだというものに出会わない可能性もあります。あ、これだ、というきっかけに出会ったなら、ハマる可能性はあるでしょう。一目惚れみたいなものです。ハマる可能性も高ければ覚めるのも早いので、大怪我もしないですむかと思います。でも無趣味だからとりあえず何か、という形で、何らかのものに手を出すのは、ずるずるとりあえず機材揃えてみないとハマるかどうか分からない!みたいになるかも知れません。とは言っても、自分の嗜好に合った趣味にたまたま出会うなんてことは難しい。それこそ僕がカメラで遠回りしまくったみたいに、これ!という出会いは本当に偶然の賜物のようにも思います。とりあえずカメラやってみるか、くらいだと、カメラを棚のどこかにやってしまって持ち出さないなんてことにもなるのです。

 だからこそ、自分がハマるか否か、それを試すのに、とりあえずカメラは2度買え。結婚や仕事はそうは行かないけれど、それができるのが趣味の世界なのです。

 そしてこの写真趣味は実に良い。他の日常との親和性も高い。散歩もできちゃう。家の中でも撮れてしまう。旅に出たくもなる。日常にもハレの日にも寄り添ってくれる。スマホのカメラより、特別がある。

 少し日常に色をつけたいのなら、カメラは実はちょうどいい趣味だと思うのです。




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