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「1年でポートレート撮影を確実に上達させるためにしてきたことを書いておきますので、ご参考になれば幸いです。」って話。

ども、ミツハシです。
昨年一年は、本当にアホみたいに写真を撮りまくった一年でした。
スナップやポートレートだけでは飽き足らず、ストリートライブも飛び込みで撮らせていただいた事もありました。
スナップ撮影での気付きをポートレート撮影で活かし、逆にポートレート撮影での気付きをスナップ撮影で活かした事もありました。
スナップ撮影もポートレート撮影も、突き詰めると「いかに被写体を切り取るか」ということに尽きるわけです。
そんな訳で昨年一年で10万枚くらい撮影してたみたいで、それだけ撮れば上手くならない筈がないと言われればその通りなんですが、自分自身で「上達した」と思えるまで、どの様な事を考えてどんな姿勢で撮影に取り組んだのかを書いていこうと思います。
あくまでも自身の体験から導き出した話ですので、他にもっと合理的な方法もあるでしょうし異論反論もあるかと思いますので、これまでの自分の足跡を後に振り替えるための備忘録として書きますので、読者の皆様が参考になる部分がありましたら今後の写真活動の一助にしていただきますことを願っております。

モデル:hayu 様 LUMIX DC-G99 / LEICA SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH.

ポートレート撮影で大事にしていたこと

被写体について

ポートレート撮影の主役は間違いなく被写体である人物ですが、私が一年間サロンモデルさんの宣材写真の撮影に携われたこともあって、スキントーンと髪の毛の色と艶・光沢を常に重要視していました。
モデルとしてカメラの前に立つ方は男女問わず、お肌のコンディションと髪の毛をしっかりケアして撮影に臨まれますし、サロンモデルですから髪の艶と天使の輪っか(古いですか?)はしっかり出したいと思っていました。
スキントーンは幸いなことにLUMIX + LECA DG レンズのしっとりとした質感のスキントーンを活かすことができました。
SNSで多くのポートレート写真を拝見しますが、全体に低コントラストで低照度下での撮影で肌色までくすませている写真を散見しますことも多いですが、全体の色調に肌色を合わせるのではなく肌色を優先してレタッチすれば……と思ってしまいます。

モデル:HONOKA 様 LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

背景処理について

ポートレート撮影において、背景をボカすのは鉄則と考える方が多いと思います。
そのため、撮影では常に開放F値で撮影される方もいらっしゃると思いますが、真後ろにある背の低い木々(ツツジなど)を絞り開放で撮影してしまうとグリーンバックで撮影した様な、どこで撮影したのかすら判別できない写真になってしまうこともあり得ます。
「背景をボカす」ことの真意は、背景と被写体を分離させることです。
また、ロケ撮影において背景をどこで撮影したのか分からないくらいボカすのは、ロケ撮影する意味すらなくなってしまいます。
その場の雰囲気も切り取ることで、被写体に当たる光とそれによる影に意味が生まれると考えています。
ボケを活かすのであれば、あえて背景に抜けのある場所を選ぶべきではないでしょうか。
また、ボケに意識がいき過ぎて被写体の鼻先にしかピントが合っていない・片目だけピントが合っているという事態になってしまったら本末転倒です。
レンズやカメラが好きなカメラマンは、時としてボケの美しさを表現してしまいますが、モデルも見る人も被写体がキレイに写っている写真を求めていることを忘れないで下さい。

モデル:Yukari 様 LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

影すら取り込む

これは宣材写真としては「やってはいけないこと」になるかもしれませんし、ポートレート撮影でも推奨できないことかもしれないのですが、私は積極的にモデルに影を被せて撮影していました。
これはカメラマンとモデルの「陰」の表現というべきでしょうか。
明るく元気なイメージではなく、暗く重い表情を写真でストレートに表現したというべきでしょうか。
ここでは「同じことをしてみてください」と伝えたいのではなく、こうすべきと言われていることに疑問を持ってくださいと伝えたいのです。
本来、表現というものに「してはいけない」というルールはなく、衝動や感情をどう表現するべきかを考えるべきだと思うんです。
周囲の風景も取り入れたいと考えて、あえて広角レンズでポートレート撮影を行うのもアリですし、200mmの望遠レンズでの長距離撮影だってアリなんです。
「こういう表現をしたい」から逆算してどのレンズを使い、どの様に撮影するか?
あるいは手持ちのレンズでどこまで表現できるのか?
誰かが言っていたと言われた手法が全てではありません。
自分に最適な手段を自分で考え編み出してみてください。

モデル:まりや様 LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

写真活動でもPDCAサイクルを回そう

PDCAサイクルと聞いて苦虫を嚙み潰したような顔をされた方、ごめんなさい。
ですが、仕事だけでなくスポーツや趣味の世界で上達していく方の多くが、自然とPDCAサイクルを回していたりします。
私も振り返って考えてみると、PDCAサイクルだったと思っているので、実際の撮影を振り返りながら、それぞれの項目を解説していこうと思います。

P:撮影の前段階

撮影前の準備としてはロケハンと、それに基づいて撮影に必要な機材の準備と考えられると思いますが、ここでは更に前に考えておくべきことを書いていきます。
皆さんはお使いなっているカメラの「色」について、どのくらい把握されていますか?
特にスキントーンについて、基本的な色の傾向と光の違い(自然光と白色灯・タングステン灯)での発色の変化も含めて把握しておくと、レタッチの段階で狙った色を出しやすくなるので、これは是非お勧めしたいです。
「ということは、自分のカメラのスキントーンを把握していないとポートレート撮影に行くなってこと?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、それを把握するためのPDCAサイクルですので、実際の肌色より白っぽいとか再現性が高いとか、はじめはその程度で十分です。
自分のカメラの発色傾向を把握した上で、どういう写真を撮影するのかを考え、機材とレンズを揃えて撮影イメージを固める……撮影の前段階ですべきは自分のカメラがどんな写真を出すのかを知ることだと思うんです。

モデル:kazuki 様 LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

D:撮影中に考えること

ポートレート撮影における作品へのアプローチは、セットを含めたカメラマンのイメージをモデルと共有して進めていく方法と、モデルの自然な表情を引き出す方法の2つがあると考えています。
前者の場合、カメラマンがリードして撮影を進めていくことになりますが、後者の場合はリードするというよりモデルがリラックスするのを待つように撮影を進めるようになります。
カメラマンとしては自然な表情を撮りたいと思う方のほうが圧倒的に多いと思いますが、実はカメラマンのイメージ先行で撮影する方がカメラマンがリードできるという意味で撮影は進めやすいんです。
それでもモデルの自然な表情をどうしても撮りたいとお考えの方は……諦めてください。
理由は簡単で、初対面の人にあなたはすぐに心を開けますか? ということなんです。
しかも、目の前の相手はしかめっ面でこちらを見てくるという状況で、あなたは自然に笑えますか?
しかめっ面のあなたに「笑って」と言われても、モデルさんは自然な笑顔は出せないですよね。
心を開いて欲しいのなら、先に自分が心を開く。
笑顔でいて欲しいなら、自分が笑う。
これはカメラの技術とか理論ではなく、人との関わり合いとかコミュニケーションの問題です。
「モデルがリラックスするのを待つ」というのは、撮影する空間を楽しい(悲しい・落ち着いた etc.)雰囲気を作った上で待つという、言わば「積極的見守り」状態で撮影するということです。
風景スナップ撮影とポートレート撮影の決定的な違いは、被写体に感情があるかないかです。

モデル:蓮望 様 LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

C:レタッチ後にすること

レタッチを終えたら、自分の好みの色合いだったりカメラの得意な色合いがきちんと把握できると思います。
カメラの得意な色合いを限界まで突き詰めて、自分の好きな色合いに仕上げるー上手いと思わせるポートレート写真は、そういう試行錯誤の先に生まれるものだと思います。
これは自分の写真表現の奥行きを深めていく作業なんですが、表現の幅を深めるには他のカメラマンのポートレート写真を研究するしかありません。
その点において、私の参加している0円撮影会では同じロケーションで同じモデルをほぼ同時刻で撮影するため、表現の違いや撮影アプローチの違いをより明確に確認することができます。

この記事でも書きましたが、比較というのは優劣をつけることだけではありません。
比較することでしか見えない「自分の持ち味」を見つけること、他のカメラマンの表現方法が自分にもできるのか、できない理由は何か・他の表現で同じ効果を狙えるのか、そういう気付きを得るための比較なんです。
そしてそれは、他のカメラマンも同じことなんです。
誰かの作品を「他山の石」として成長の糧とするなら、あなたの作品も「他山の石」となりえるのです。

モデル:kazuki 様 LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

A:次の撮影に向けて

1回のポートレート撮影で、自分が出来た事・出来なかった事を確認できたら、次回の撮影に向けて課題も見えてきたと思います。
その課題を次回のポートレート撮影でクリアすることも良いのですが、色調(トーン)や構図などの技術的な課題は、ポートレート撮影だけでなくスナップ撮影でもクリアすることは可能です。
写真の問題は、写真でしか解決できません。
課題をクリアするための方法も、実践しなければ机上の空論です。
クリアする道筋が見えるまで撮り続ける、しかも闇雲に撮るのではなく明確な意図を持って撮り続けることが重要です。
なんとなく撮った1000枚より四隅まで細心の注意を払いながら撮った1枚の方が、成長する量は圧倒的に多い筈です。

この繰り返しを続けることが、写真撮影のPDCAサイクルとして一年を通して続けてきたことです。
全てのカメラマンにお勧めできることではないと思っていますが、あらゆるジャンルで上達するということは、形こそ違うけれどこういう事なんだと思っています。

モデル:羽村アメリ様 LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

まとめ

今回はあえてテクニカルなことには触れずに、心構えというかポートレート撮影をどう考えるかといったことをメインに書いていきました。
撮影技術というのは、「こういうイメージの写真を撮りたい」というゴールに最短で辿り着くために必要なもので、技術ありきのゴールであってはならないと思うんです。
撮りたいイメージに近付くために、必要な技術を身に着けてください。
技術やセオリーに、ご自身の自由な発想とモデルさんを目の当たりにした時の衝動を押し潰されない様にしてください。
そして、ご自身だけでなく撮影されたモデルさんも幸せにするような作品を撮影できるカメラマンとなってください。

モデル:mayu 様 LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4ⅡASPH.

今後の創作活動をより良いものにするために、皆様からのご支援をお待ちしております。