トライアリズム・ウォーマシン
戦争エキシビションの体験会、私が選んだのは大きなハンヴィー。座席シートがふかふかしていたからだ。あと、朝里が隣に乗れる乗り物。
「最近は戦車も有名だぞ」といったのは朝里――私の友達だ。彼女は戦闘機のエースパイロット。すごい。給料もすごい。ライバルも多いし、朝里がいると周りがザワつく。私も鼻が高い。
「チームプレイで難しそうかなって。私、運転手でいい?」
朝里は頷く。
彼女は助手席に乗り込む――今回は紅白戦だけど、今日の朝里はオフだ。だから彼女はナビ役。でも有名なので、後ろから乗り込む人が朝里をめっちゃ見ている。鼻が高い。
昔の人はVRを被っていたけど、いまはドームとしてVRを使う。入った時からVR体験は始まっているのだ。キーを挿した瞬間、世界が砂漠の基地に変わった。私も彼女も軍服を着ている。朝里は迷彩色なのにそれが映える。反則だと思う。
ゲートが開く。他の車両と一緒に出発――しようとして、基地が爆発した。
「出して」
朝里がいうが、声が焦っている。
「早く!」
私はアクセルを踏む。他のハンヴィーと列を作って走る。先頭のハンヴィーが機銃掃射を浴びてズタズタになり、中から誰かが転がり落ちた。血まみれだ。
備え付けの無線から声がする。
「そっち、誰か聞こえる? 白チーム、安城朝里って人いない?」
「澪か」
朝里が無線を取る。
「緊急事態だ。あんな演出はない。死人が出ている。手を貸してくれ」
「断る」
「なに」
「こっちでもアタシのチームは全滅したわ。でも関係ない。アンタがいるもの。アンタに三十敗したんだから、一発くらい食らわせないとね。無線で場所は割り出したから、いまからそっちに行く。まとめて吹っ飛ばしてやるわ!」
「そんなのだめ!」
気づくと私は叫んでいる。有名選手の彼女がやられるなんて、あってはならない。
「は? 誰アンタ」
「朝里の友達! 九条水琴! 私がいるんだから絶対負けない!」
【続く】
頂いたサポートは本の購入・取材・他記事サポートに使用します。