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江月堂『MONOCHLOG』――ラフから広がる、広げる世界

みちお(江月堂)『MONOCHLOG』、2018を読んだ。同人誌である。

2013年から2018年までの絵を抜粋した画集だ。スケッチがメインで、三百枚くらい収録してある。スケッチは様々な絵があり、上半身のみ描いたものから、上半身や下半身をキッチリ描いたものまで収録してあるので、模写したい時にはピッタリかもしれない。

収録されている絵はモノクロだが、ツールはエンピツ絵からボールペンと多岐である。筆絵もある。サークルカットの下書きや年賀状ラフもあるので、隅々にまで手が届く。漫画の下書きもあるので、どういう雰囲気を紙面に載せたかったのかを想像することもできる。

一ページの中に2013年の絵や2015年の絵が混ざっているところも面白い。眉や目の造りが若干異なるところもあるので、「時間が経つとこんな風に入れ替わっていくんだな」と感じられる。ラフの集合体なので物語性はそこまでないが、物語を取り払ったために、かえって作者性を感じることができる。

ラフ絵を見ていて面白いのは、作者がどういう順序で筆を入れていったのかが、なんとなくわかるところである。また、どこまで筆を入れて、どこまでをサクッと描けば、人物を人物らしく作れるのかもなんとなくわかりそうになる。髪の毛はどこまで描くか? 服はどうする? 下半身はどのエリアまで作り込めばいいのか? ラフをどこまで作るべきか、どれほどたくさん描くべきかは、絵を描く人にとってかなり大きな課題だが、この画集はちょっとした助けになる……かもしれない。

あるいは作者の真似をして、大きな紙にラフを模写してみるのも楽しいだろう。技法のひとつにクロッキーがある。五分から二十分ほどの時間で区切り、サッと全体的に描いてしまう技法だ。時間は限られているので、それほど緻密には描かない。クロッキーには色んな目的があり、物の形を覚えるためにクロッキーしたり、あるいは線を引くための練習、もしくは単純な線だけで、いかに自分の個性を出すかを試すための訓練にもなる。

ここでは他人の絵の模写をすることで、「自分の筆がよく乗るところ」「逆に筆が乗りにくいところ」を知ることができる。逆説的に自分の個性について学べるのだ。

文末にはみちおさんのコメントが記されている。

『この5年は

 僕が江月堂として

 コミティアに出展するようになってからの5年間でもあります

 人間ひとりひとりに個性があるように

 ひとつひとつの絵にも個性があると

 それらは僕の想像の産物でもあり

 見てきたものの記録でもあります

 これからもたくさんのものを見て、感じて

 また絵を描くのでしょう』

 作者はおそらく多くのものを見てきた。これからも多くのものを見ていくのだろう。その一旦を垣間見られる画集だった。

《終わり》

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