初めての対話、アーッ! 武人転生(20241101)
どうやら移動ストレスや深夜までの作業が祟ったようで、副鼻腔炎に罹ったようです。かなり鼻の奥がきつい他、なにをするにも咳き込んでしまい、周囲のヘイトを集めています。早めに耳鼻科の薬を飲むことで治していきたいですね。
逃亡テレメトリー
マーサ・ウェルズ『逃亡テレメトリー』創元SF文庫、2022
かつて人型警備ユニットとして、指揮下にある人々を冷徹な支配で震え上がらせていた”弊機”。いろいろあってブリザベーション連合で落ち着いたものの、その矢先に連合ステーションの内部で人の死体を発見する。もしや連合のトップであるメンサー博士を付け狙う何者かの仕業かと、弊機は捜査を開始する。
短編集。ミステリ仕立てだが、うーん。ちょっと『ニーア・オートマタ』を彷彿とさせるつくりでした。
タイムスタンプやフィードIDなどのSF用語を学べるのは楽しい。しかし今回は短いせいか、専門用語はそれほど出てきませんでした。
ちなみに既に次作が発売されているようで、購入予定です。がっつり長編のようで、期待が持てます。
難点というかアヤをつけるような話ですが、キャラクターの人名や用語が様々にあるのですが、どういった人が出てきても人種や肌の色は登場しないし、特徴的な振る舞いをするわけでもないので、「宇宙だなあ」「宇宙に進出したからみんな画一的になったのかな」「この人誰だったかな」という感想になりがちです。そのため、周辺の文脈を見ながら、多分この人はこういう性格でこの役割で……と判断するしかない。
同じ本の収録作である『義務』の、弊機が初めて喋るところが好きです(ムードもへったくれもない状況ですが、ムードなしにズバズバ喋ることは、弊機の特徴だしな……)。
膚
岩田奎『膚』ふらんす堂、2022
句集。第二版とあり、人気があることが窺えます。
字体がおおむね旧字体なので、読んでいて歯ごたえがあります。植物もドンドン登場するので、かなり頭を使います。
「銜える」「罅」「椹」……など、慣れないうちは辞書が必要になりますね!
〈天の川バス停どれも対をなし〉は良い出来なので唸ってしまいます。
山梨や千葉の地名も出てきますし、伊予・五色浜の俳句や、甲斐、日川に関する俳句もあります。正直、どこも行ったことがないので、読みながらスマホで検索するのも一興です。
〈冷房車床を麦酒の缶走り〉や、〈血清の届けられたる海の家〉など、身近な題材から絶妙な切り出し方をしており、面白い。
〈霍乱やプールの柵のあを緑〉は、言葉の使い方が面白く、かなり勉強になります。
個人的にイチオシの作品は、
〈稲の花ラジオは馬の名を呼んで〉
でした。広々と広がる稲の畑に、競馬の実況が流れていく風景。短編を一本書けそうな景色の広がり方があり、なんでもない日常と日常をくっつけることで、発見がある句集です。
次点、〈枯野にてアーッと怒り始めたる〉。
可能性を感じさせすぎだろ……と思いました。「枯野」と「アーッ」とか考えたこともないぜ。俳句すごいな。相当やり尽くされたと思いましたが、まだまだ奥行きがある。しかもただ怒っているだけなのに芸術になるのだから凄い。
聞いた限りだと天才だと呼ばれる岩田奎。まだ若年と聞くので、これからどのように進化していくか、非常に期待できます。
凶乱令嬢ニア・リストン
南野海風『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録1』HJ文庫、2022
かつて武勇を振るった武人が病弱な少女に転生した……という作品なのですが、そもそも転生前の自分がどんなだったのか、記憶がないため、一体どのような人物だったのか? とミステリとして機能しているのが面白い。おそらく別世界だと思うが、過去、あるいは未来から飛ばされてきた可能性もあるか……?
転生時点のニアは幼かったので、スクスク育って大人になってから順当に無双していくのかな……と思っていたら、ニアの家の仕事が配信チャンネルの制作会社だったので、テレビ(Youtube?)事業やテレビ出演に乗り出すことになりました。マジかよ。それでいて幼女の身で無双してます。
おそらく今後の展開としては、双方向型の舞台とか、投げ銭機能やコメントがたくさん流れる配信とかに乗り出すのではないかと思いますが、この先出てきそうなVtuberの扱いをどうするか、かなり気になりますね。
ニアだけで活躍しているわけではなく、途中でニアのライバルになりえそうな令嬢、レリアレッド・シルヴァーが登場しています。なんというか、かなり丁寧に伏線を張っている印象があるので、今後すごい勢いで競り合うことになりそうです。
他の姉妹たちも一癖二癖ありそうなので強そうだと思います。ねちゃっとした笑みを浮かべるオタク気質の女子も多いというか、同人誌を描いてそうなオタク女子が登場する設定、最近の作品だとかなりデフォルトになった気がします。「同人誌は腐女子のたしなみ」とかありそう。
ちなみに……百合があります! お嬢様とメイドの百合、お嬢様と舞台女優の百合っていうか、お嬢様が百合されていく、一方通行の矢印が力強いです。
今回は以上です。
《終わり》