J2第12節 ザスパクサツ群馬vs Vファーレン長崎 マッチレビュー

勝負を分けた最初の20分。対照的なビルドアップのスタイル

お互いに丁寧に後ろから繋ぎサイドの選手をうまく使って前進するスタイル。だけど思想は異なる。

長崎はできるだけゴール前でパワーを使うためにも無駄にビルドアップ隊に人を配置しない。
しっかりとGKが前に出てきてGK+2CBで3バックを形成して、アンカーの位置に入る秋野が無駄に下がりすぎずしっかりとアンカーの役割をすることで、4枚でビルドアップを行い、両SBが高い位置をとりながらビルドアップ隊の全進をサポートする。

ピッチ全体を広く使い、選手それぞれが正しいポジションに配置(ポジショナル)することによって、無駄にビルドアップに人を割かない良さが出たのが長崎の2点目のシーン。

群馬が左シャドーが一列前、左WBが前に吊り出されてるところを櫛引が右WGの増山に一気にロングフィードで前進。

増山が縦に仕掛けて、エジガルがBOX内で相手との素晴らしい駆け引きでマイナスに。うまくシュートはミートしないものもマテちゃんがつめて長崎追加点。

ビルドアップにエネルギーを割きすぎないからこそ、一気に前進してスピードアップしてる状態でも最後BOX内に3人入り込めて詰めきったような形。

サイドで相手の背中取れても中0枚みたいなのがよく起きる新潟の試合を普段見てるものとしては、相手がローブロックじゃない状態で中に3枚いて、中のFWが相手と駆け引きして動いていることが非常に羨ましい。

群馬のビルドアップも非常に面白い。
後ろ3枚がサイドに広がらず近距離で形成。3-2の形を形成しながら左右の進行方向を相手に定めさせず中をグッと絞めさせる状況を作る。
中を閉めさせた状態で左CBの中塩が巻くボールで高い位置のWBに当てるか、中央のCBの城和が右のサイドに張っている選手にロングフィードを入れて前進していくスタイル。

中塩からいいボールが左WBの川上エドオジョンに渡るけど、長崎はビルドアップ同様、相手の3-2ビルドアップに対して2トップの2枚しか人を割いていないので、川上にボールが割った状態で右WGと右SBで1vs2の状況を作り出す。

群馬はビルドアップでGK含めると6~7人使っており、それに対して長崎は2~4人という状態。当然前進した先では優位な状況は作れない。

凄い面白いやり方してるし、ビルドアップのミスが失点に直結する分、ビルドアップの安定化を図るためにも今の群馬のやり方自体は間違っていないと思う。

ただお互いの対照的なビルドアップが結果に出た前半の20分間に感じた。

守備のやり方変更。それがハマった群馬とハメられた長崎。

5-2-3のような形で守備をスタートした群馬。
しかし2失点目のようにWBが縦スライド、CBが横スライドという部分がうまくいかずなかなか守備でハマらない。

2点リードされている状況ではあるものも途中から5-4-1にシフトチェンジ。シャドーの2枚両方撤退して4枚が中を絞りながらサイドにボールが配給されたらそれぞれのシャドー又はWBがサイドの選手に強くアタックする形に。

その形がすぐさま得点につながる。

群馬の右WB大畑が長崎の左WG笠柳に対してボールが入った時に2回連続で強くアタック。2回目のアタックで笠柳のバックパスが大畑にあたりボールがそれる。
それを平松が見逃さず奪取。後ろから出てきたボランチの高橋へ。
長崎は両SB高い位置にいるため逆サイドの右SBモヨも帰陣できずそのスペースを左の北川が使いマイナスに来たボールも冷静にコントロールしてゴール。

5-4-1の撤退した守備が見事にハマった群馬。そして2点リードしてるところ難しいところ、相手が狙っているところに配給してしまった長崎が見事にハメられた形のシーンだった。

ポジショナルがぶつかる壁

本当長崎は見てて綺麗なサッカーするなという印象で今の新潟にないものが見れて、癒しを求め長崎アウェーの試合は見に来てしまいます。(ホームの試合はカメラワーククソすぎて酔ってしまうので見れません笑)

長崎がやっているサッカーはめちゃくちゃ正統派の静的ポジショナルだと認識してます。(以下私が認識するポジショナルの説明)

ピッチを広くつかい適切な立ち位置を取ることで相手を動かし、それによってスペースを生み出して、それぞれの選手の強みが最大化で発揮されること(質的優位な状況)で盤面を優位に進めていくのがポジショナルプレーの思想だと私は思っています。

実際に長崎の2点目は右SBのモヨが相手の左WBを吊り出したことで増山にスペースができて、増山が仕掛ける状況生まれ、増山が抜いたことで相手のDFラインが下がり、エジガルのマイナスのスペースが生まれシュートまで持っていくという、ピッチを広く使い、それぞれ役者を生かす形(スペースを享受する形)で行われた攻撃はまさしくポジショナルの真骨頂だと思います。

で、過去に新潟も似たようなサッカーをやっていたんですけど、引かれた相手に対してどうするか!でそれがこの長崎の試合でも起きてたなというふうに感じます。

静的ポジショナルがいう自分達が適切な立ち位置に立って相手を動かすって、「相手がボールを奪いにくるから相手が動いてスペースが生まれる」というもと成り立っていて、ボールを奪いに来ず守備側が待ち構える形になるとスペースがなくなりうまく盤面的に優位な状況を作れなくなる。

2021の新潟は今のJ2と同じ12試合終わった時点で勝ち点32と驚異的な勝ち点を積んでたのですが、そこからそのような対策をされて見事に崖から崩れ落ちたわけですよ。

新潟の場合は役者の役不足でピッチを広くつかうポジショナル撤退、近い距離感で連動的なサッカーで2022J2→J1の道へ行けたのですが、長崎の場合は完全に役者はJ1でも全然戦えるくらい完璧に揃ってるので、いかに相手に引かれてスペースがない状況でも役者たちに時間とスペースを享受できるのかが今後のポイントになってくるのかなと思います。

その点米田選手は味方にスペースを作るのが上手。しっかり相手のSBないしはWBを食いつかせて左サイドのアタッカーに前を向いてボールが持てるスペースを生み出せる。

そういうことができる選手が多くなってくると本当長崎誰も止められないだろうなというのが外部から見た印象です。

長崎のウィークをつけなかった群馬

群馬は中塩の配給が素晴らしくてうまく左サイドで前進できるけど、長崎の増山のプレスバック、モヨ-櫛引のスライドも素晴らしくそこまで長崎目線で脅威になれなかった印象。

長崎のウィークは4枚でDF守ってる中で横へのスライドもガンガンするので逆サイドが大きく空いてしまうところ。そして左WGの笠柳があまり守備をしないところのように感じた。

最初に書いたビルドアップに人数をかけているからこそ前進した先で人が相手より少ないからこそ、もう一手加えて逆から攻めれば長崎としても怖かったと思う。

ただ群馬のボランチが両方左ききだったんですよね〜。
左から右への展開は難しくなってきますよね〜。

一瞬流れで川上が右サイドやったシーンがあったんですけど、それもっと見たかった。相手が戻ってくる前に縦に持ってける川上を右で見たかったです。

最後に

長崎は本当いいチームで新潟もぜひ参考にしてほしいチーム。群馬はなぜ最下位と疑問しかでないくらいGOODチームだし、選手個々で見てもいい選手ばかり。めちゃくちゃ楽しいゲームでした。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?