志磨遼平 その1

はじめて知ってからティン・パン・アレイを聞く(2020年春)まで

たしか中学生の頃に、ラジオからドレスコーズの存在を知った。トートロジーめちゃくちゃかっこいい!!!というのが最初の印象で、その後もゴッホとか 好きだなあとぼんやり思っていた。(時計は回って誤魔化すんだよ、って歌詞がずっとお気に入り)

それからはバンド・デシネというアルバムとか人間ビデオという曲とか、(毛皮のマリーズの)ビューティフルとか愛のテーマとかを断片的に好きでいて、たまに聞くくらいの生活をしていた。2年くらい前にビューティフル/愛する or dieをたまたま買ったり。

今年の春、きっかけはなんだったか忘れたけど毛皮のマリーズのティン・パン・アレイを聴いた。最高だった。最高のアルバムだった。なんで今まで聞いてこなかったんだ…と聞いてこなかった時期を後悔して落ち込むくらいいいアルバムだった。

1.序曲(冬の朝)
2.恋するロデオ
3.さよならベイビー・ブルー
4.おっさん On The Corner
5.Mary Lou
6.C列車で行こう
7.おおハレルヤ
8.星の王子さま(バイオリンのための)
9.愛のテーマ
10.欲望
11.弦楽四重奏曲第9番ホ長調「東京」

すごい並びだなあ。ひとりで散歩するくらいのラフさが垣間見えるなあと思う部分と、気もちの深いところを見せてくれる部分のバランスのよさが完璧だと思う。「序曲」は、アルバムをはじめますという宣言みたいに聞こえる。そこからアルバムがはじまってるからそう感じるだけかも。でも、そこに置いてあるから、そういう宣言みたいな意味合いを感じていいと思う。

前半は比較的お散歩なんだけど、Mary Louで すこし深くまで沈んでいくような感覚をもって、C列車で行こうでまた地上に戻ってくる。地上というか、社会性を前提とした現実世界の一員に戻るかんじ。

恋するロデオは一人きりでする散歩だけど、沈む方向へのゆっくりとした助走というかMary Louまでの道のりの途中。Mary Louは、たのしい一人ぼっちの夢と目覚め みたい。(おっさん On The Cornerは散歩の途中でこんなおっさん見かけたよ、なってみたいな 知りたいな っていう日記)C列車は、一応規律のある現実世界の話だけど、これが終わったあともずっとここにはいないだろうな、と思う。

存在するのにすぐ隣にはいなくて、すこし離れた場所にいるひと(「君」とか)に向けて手紙を書いている、という感覚が おおハレルヤあたりから強くなる。星の王子さまは、おおハレルヤのときよりも遠いところから歌っているし、すこし相手のことがはっきりとは見えなくなっていたり、再会が遠のいているようなかんじがある。ここで愛のテーマがくると、遠く離れた忘れられない人に対する強い願いごとみたいに聞こえる。「出会えた」って言ってるけど、実現していない、これから実現させたいと強く願うみたいなこととか、夢だったりするのかなあ。その次の欲望で、「夢から覚めた」って言ってるのが 曲をまたいで生きているとしたら、愛のテーマは夢だったとも解釈できそうだ。ずっと距離は遠いまま。そうなってくると、欲望は再会前夜の曲に聞こえてくる。「大丈夫」も、自分に言い聞かせるための言葉で。
東京は、おやすみからおはようまでの歌で、特にはじまりが強調されているみたいに聞こえる。一旦夜になって終わりを迎えるから、ここでのおはようは「開始」というより「再開」かな。夜明けぐらいに眠るときのかんじがすごくする。

アルバム全体で 一人を中心としてぐるぐる回る気もちが、丁寧に適当に描かれているかんじがあって救済みたいに感じる。長い夜に書いた手紙みたい。絶望かどうかはわからないけど、深く沈むことを経て、夜明けを迎えられたときのまぶしさみたいなものが音と歌詞 総動員で表現されてる。アルバムのジャケットは、このまぶしさを表現したみたいに見える。

全体的に するすると入りこんできて、押し付けはしないけど これを受け取りたいと願う人には受け取ってもらえるように力をこめているかんじ。すきだなあ。

ティン・パン・アレイをたびたび聴く生活をしていたら、志磨遼平の発音のひらがなに気付いた。恋するロデオの「アイラぶゆー」など。そしたら、親切に厳選志磨遼平おすすめプレイリストをつくってくれたひとが…(ありがたい…)知ってるすきな曲も、知らない良い曲もたくさん詰め込んだすっごくいいプレイリスト。これについても、すきなところを言葉にしたい気もちがあるから後日します。

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