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vol.10 Yとの別れ 《新婚妻、放浪の旅に出る。》

Yとの物語の続きです。

私はだんだん辛くなってきました。

Yの奇想天外なシナリオ(物語)世界に、当初、私はけっこう面白がって参加していました。が、だんだんと、Yの物言いや態度・言葉のチョイスが、攻撃的だったり人を非難するようなものになってきたのです。
自分以外の人間が、シナリオ通りに動いてくれないことに苛立っているようにも感じられました。
私は、キツイ言い方や、乱暴な言葉、人を非難したり攻撃したりする言葉が嫌いです。仲間内の冗談や、おふざけであっても。
自分だって、気分次第でそういう風になってしまうことはあります。
それでもやっぱり嫌い。
だからYと一緒にいるだけで、徐々にストレスを感じるようになっていきました。
でも「私がいないとこの人はダメなんだ」という意識もあったので、「嫌なのに一緒にいる」状態になってしまい、そりゃあストレスですよね。
内心、「もう嫌だ…離れたい…アセンションとか、ツインレイとか、もう、どうでもいい!!」と思っていました。(Yのシナリオにはそういう単語がよく出てきていました)

数日そういう状態で過ごしたところで、Yと私の共通の友人・Kと豊洲で会うことになりました。
待ち合わせ場所でKの顔を見た途端、私は今までの緊張の糸がゆるんで、Kに泣きつきました。
それまで、どんなに人混みの中にいても、私とYの二人だけの世界だったのです。「私がいないとYは消えてしまう、この世界から」という思い込みの中にいるとき、他の人はいてもいなくても意味がないようなものでした。
Kは初めてその世界にくっきりとした形で現れた登場人物みたいでした。

その日の夜は三人で豊洲のビジネスホテルに泊まりました。
一晩の間に、私はYのシナリオからだいぶ脱出していたようです。朝、Yと顔を合わせたとき、二人の間に明らかな境界線があるのを感じました。Yもそれを感じていたと思います。ホテルをチェックアウトして三人でららぽーと豊洲に向かう間も、その境界線はどんどん色濃くなっていきます。

そのうち、Yが一切喋らなくなりました。

ららぽーと内の休憩用ソファに三人で並んで座りました。
三人とも、無言です。
Kも境界線を察知していました。

私は「ああ、もう、これで終わりだな」と静かに思いながらも、「ここからどう行動しよう?」と、心臓はドキドキしていました。
とりあえずトイレに行って一人で落ち着こうと思い、黙ってソファから離れ、トイレへ向かいました。そのままどこへでも行けるように、荷物は全て持ちました。

トイレを出てからも多少の迷いがあり、しばらくららぽーとの中をぐるぐると歩き回りました。
KからLINEのメッセージが入りました。
「ゆっくり散歩してきてね。Yも一人で散歩に行きました。待ち合わせ場所はららぽーとのネットカフェです。」
私はららぽーとを出てさらに歩き回り、いつの間にか豊洲駅前のバスターミナルに辿り着きました。
ここから東京駅行きのバスが出ているのを知っていました。
「どうしよう…」
と思いながらも、タイミングよく現れた東京駅八重洲口行きのバスに私の身体は吸い込まれていきました。

そしてその後、現在に至るまで、Yと再び会うことはありませんでした。

4月30日。その日は折しも、満月でした。

次回に続きます。

💫🛸ほよよ〜🛸💫