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真夜中のインターフォン


ひとり暮らしをして予定外のインターフォンは無視するようになった。

実家は埼玉の住宅地で、「ピンポーン」となったら「はーい」と出ていくようなのどかなエリアなので無視なんてとんでもない。

今でも実家に帰るとインターフォンの画面を覗かずに母親は玄関に駆けていく。

ひとり暮らしを始めてからインターフォンでは何回か怖い思いをした。
1つ強烈な思い出がある。


今のマンションは、まず入り口で第一の関門(ビデオ付きインターフォン)を通り、次のドアで第二の関門(ビデオなしインターフォン)を突破し、エレベーターホールまで行く。

そして最後の関門、玄関のインターフォン(ビデオなし)がある。

3つのインターフォンだ。


ある土曜日の夜、お酒を飲みながら友人と長電話をしていた。

すると「ピンポーン」とインターフォンが鳴った。

??なんか届く予定あったっけ?

あれ?いきなり玄関のインターフォンが鳴っている。

とりあえず無視しよう。


「ピンポーン」


「ピンポーン」


「ピンポーン」



すごく鳴らされている。
どうしよう。誰だろう

「のぞき穴見れば?」と友人は言うが、怖くて覗けなかった。


そんな会話をしている間もずっとインターフォンは鳴っている。


とりあえずセコムに電話することにした。
でもセコムに電話するということは、友人との電話を切ることになる。

それも怖い!


友人はそこまで近くに住んでいないが「何かあったら行くから連絡して」と言ってくれて、一旦電話を切った。


鳴り続けるインターフォンを聞きながら、セコムに電話をした。

既に23時を過ぎていたが事情を伝えると、10分ぐらいで来てくれるということだった。


心臓を掴まれるぐらい不安な気持ちでセコムの到着を待っていた。
確か10分もかかっていなかったと思うが、私の中では恐ろしく長い時間だった。


突然電話が鳴ってビクッとしたが到着したセコムの隊員さんだった。


「今から1Fから最上階まで全部見てくるので、戻ってきたらまた電話します。それまで絶対に玄関を開けないでください」と言われて、震える声で返事をし連絡を待った。


しばらくするとまた電話がかかってきて「今から玄関まで行くので、ドアをノックしたらのぞき穴を見てからドアを開けてください」と言われた。


言われたとおりに動き、セコムの方だと確認しドアを開けた。


優しい隊員の方が言うには全ての階を見て回ったが誰もいなかったそうだ。


その間、インターフォンは鳴っていなかったのだが、隊員さんと一緒に玄関に出ていた時にまた鳴り始めた。


「故障かもしれませんね。ちょっと掃除してみますので、また部屋の中に入って鍵を締めてください」

と隊員さんに言われ、部屋の中でしばし待機。


ドアがノックされ、のぞき穴を見てから開けると隊員さんは「とりあえず交換しましょう。今日は土曜日だから月曜日に管理会社さんと連絡を取ってまたご連絡します」と言った。


「まだしばらく鳴り続けるかもしれないので、インターフォンを切りますか?」と聞かれたが、迷った結果鳴り続ける方を選んだ。

インターフォンを切るとそれはそれでノーガードな気がしたからだ。


セコムの方が帰って心細かったのでTVを観ようと思ったが、インターフォンは鳴っているので全く集中できない。

もうイヤホンして眠ろう。と思ったものの、こんな状況で眠れるわけがない。


友人にLINEで報告をして、その後はネットやTwitterを見ながら過ごしていたが、インターフォンが鳴り続ける真夜中はかつて経験がないぐらい恐ろしかった。


ビクビクしながら夜を過ごして、ようやく夜が明けた。

日が昇ると、どういうわけかインターフォンは止まった。


恐ろしいことにその日以降インターフォン交換までの3日間、インターフォンは一切鳴らなかったのだ。


最近この話を思い出し、自称霊感がある後輩女子に話したところ「誰か入りたかったんですかねー」と言われて、この言葉が一番ゾッとした。



多分インターフォンは壊れていたんだろう。

でも、あの時もしドアののぞき穴を覗いていたら何かが見えたのだろうか。

何かが見えても何も見えなくても怖かっただろうな。

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