et sona の暮らし方改革 / 移住の記し no.10
この場所だ、という大きな「きっかけ」を、つかんだかも。
(no.7:移住を思い立ち、さてどうした? の続き)
あの日のことは、よく覚えている。
2017年6月19日。
初めて、カジくんに会った。
たまたま見つけた、というよりも、もう「ついに出会った!」という感覚さえある、ステキな谷あいのあの集落。あの場所がどういったところなのか?、あのあたりに空き家はないのか?、という気持ちばかりが先走るなか、一人、待ち合わせ場所のまるみデパートに車を走らせた。
一度会って話をしましょう、その際に、空き家バンクの登録や登録物件の閲覧パスワードもお渡しします。
空き家バンクの登録に、一度、御調(みつぎ)町に直接来てくれ?
それまでにも、いくつかの市町村の空き家バンクに登録していたが、手続きに出向いてくれ、と言われたのは初めてだ。なんともハードルが高いなぁ(東京からだと交通費だってバカにならない)、とも思ったが、移住者の多い尾道市とはいえ、御調町は、皆が知る尾道の市街地からは遠く離れた山間の田舎町。こんなところですよ、ということをちゃんと知ってもらった上で、どうします?、ということなのだろうと想像した。
まぁ、尾道市というだけでの問い合わせをふるいにかける意味もあるだろうし、もしかしたら過去の移住者で、お前何しに来たんだ?!、というとんでもなヤツがいたり(勝手な想像だけどw)して、まずは直接会っておく必要がある、ということなのかもしれない。いずれにせよ、誰でもいいから来てくれ!とは、完全に一線を画してるな、とも感じた。
過去に二度、まるみデパートを訪れたことはある。が、運悪く二度とも閉館日だったのでw、中に入るのは初めて。なにもないただの田舎町に、なんだこの小洒落た空間は(まるみデパートの様子は、こちらのインスタで)! 落ち着いた雰囲気の中に、センスの良い家具やインテリア、雑貨が、主張しすぎずに配置してある。どうみてもこれ、文化系、あるいはアート系な人だよね、とカジくんを待ち構えていたら、浅黒く日焼けした、もう毎日外で仕事してます、といった感じの好青年が現れた。
あら、そう?、と思いながらも、ギラギラしたその目を見て、あっ、なんか普通じゃないなこの人、とも直感的に悟ったw この日、当初は軽く挨拶を交わす程度かと思っていたら、結果8時間ほど行動を共にすることに!
で、ひとまずは、「初めまして」の挨拶。とはいえ、お互いまったく知らない人、というわけでもなかった。
前職での同僚が、古くからのカジくんの知り合いで、御調でまるみデパートという面白いことをやっている人がいると教えてくれていたし(それゆえ過去に二度訪問)、しばらく仕事をしていたデザイナーさんもまた知り合いだったり。さらに、それまでに何度か会っていた尾道パパイヤの洋くんは、実はカジくんの仲の良い同級生だったのだけど、彼を紹介してくれたのは、福山で「ママの日々」というNPO法人を主宰しているいとこのエミちゃんだったりと、お互いの周りにいる人は、既になにかしら繋がっていた。
ひとしきり定型の手続きを済ませ、お互い周りにいる人たちはなぜか繋がってるんですよね、なんて世間話の後、本題のw、あの場所の話を切り出した。
「あの場所は、僕らも大切にしたいと思っている場所なんですよ」と、カジくん。
とはいえ、今は、高齢のご夫婦がひと組だけ住まわれている限界集落、というよりは、もうほとんど消滅集落。町に移り住んだ人たちが、今でも田んぼを管理しているから美しい谷の景観を維持できているけれど、あそこに住む、というのは、相当な覚悟が必要で、ライフラインにも問題があれば、ある意味では山で暮らすスキルも必要になり、移住うんぬんよりもさらにハードルが高くなる…。
ある程度想像はしていたが、人が住む、にはどうかという場所。やっぱりな…。なんて思いながらも、とはいえ、あそこしかない!、ぐらいの勢いで御調に乗り込んできたわけで、(今思えばおかしくもあるがw)オレなら大丈夫!、というなんの根拠もない自信、というよりも過信に取り憑かれ、「台所の近くに畑」が理想で、「山の中で、畑に囲まれたポツンと一軒家」を、ずっと探している旨を熱く伝えた。
あのような場所は、他にも(御調に)無くはないが、すぐにどうこうという物件は今はない。もしよかったら、少し町を案内し、(探しているものとはまったく違うが)すぐに住める物件もあるのでちょっと見てみますか?、と二人で町内散策に出かけることに。
紹介された物件は、数年前に農園を廃業したおばあちゃんが、空いていた土地に建てたという、ほぼ新築のきれいな一軒家。町の中心からは少し離れているが、程よい距離感で民家が点在している、いかにもな田舎の田園風景。庭もあり、畑も貸してくれるということで、のどかな田舎暮らしをと考えれば、まぁこれ以上の物件はないだろうとさえ思えるもの。
でも、そうじゃないんですよね? ここから、「あの場所」に通ずる別の道があるので、ちょっと行ってみますか?、というカジくんの提案に、即座に首を縦にふる。車中、この道を使う人はもうほとんどいないので…と切り出された道は、舗装されてはいるが、轍(わだち)を残して雑草が生え、完全に木々に覆われたトンネルのような状態。いやマジでこの道しばらく誰も通ってないでしょ!w と、半笑い状態でいると、「あの場所」の、一番底にたどり着いた。
あの美しい谷の底は、こんなところだったか。荒れ果てた田んぼに、廃墟となった民家が完全に木々に飲み込まれ、人の気配なんてまったくない。まぁ、山深い田舎ではよく目にする光景だが、夜はちょっと恐ろしいだろうな、と想像できる。
ひとまず、細い坂道を登り(車は4WDでないと無理w)、1ヶ月前に立った場所を目指す。現在住まれているのは一軒だけだが、民家自体は四軒ほどが目に入る。上のほうの田んぼはきれいに管理された棚田で、田植えもされているし、いくつかある耕作放棄地も、長い間放置されたという感じでもない。谷の中央には充分な量の水もちゃんと流れている。きれいに草が植わっていると思えば、おっと、牛も居るじゃないか! へぇ、そうかそうか、となずきながら、二度目の訪問にして、やはりここはステキな場所だ!、と再確認。その美しい谷の風景は、腕を上げ、手を拡げれば、そのまま飛べるんじゃないか?!、とさえ錯覚してしまうほど(くれぐれも、変な薬を常用しているとかではなしw)。
そのうち、お腹空きましたよね?、グリランでお昼を食べません?、と昼食までご馳走になることに。グリラン=みつぎグリーンランドというのは、彼ら(みつぎさいこう)が、尾道市から委託管理の指定を受け運営していたキャンプ場。そうか、キャンプ場も運営していたのか、それでカジくんはそんなに日焼けしているのか、と腑に落ちたw ちなみに、彼は、グリランやまるみデパートの運営を行ってもいるが、個人で映像制作やデザインの仕事も引き受けているし、他方、アーティストでもあって、本当に様々に活動している。
ここで少しばかり話はそれるが、「みつぎグリーンランド」というキャンプ場も運営して「いた」、としたのは、荒れかけたキャンプ場を、3年余りの月日をかけ整備し、多くのキャンパーや家族づれから親しまれるまでにしたが、非常に残念なことに、今夏の豪雨災害で大量の土砂が流れ込み、現在は休園状態に陥っているから。再開の目処はまったくたっておらず、とても厳しい状況にある。何度となく通ううち、ここで、あんなことも出来るだろうし、こんなことも出来るよね、といろいろ話していただけに、本当に残念。
話を戻して、ではグリランでまかないをいただこう、となって向かう車中、「あのような場所を考えるのであれば、いきなりは無理だと思います。本当にそうしたいのであれば、段階的に移り住むという手段もありますよ」、と真顔のカジくん。リスクが高い、というのは、まぁ誰の目にも明らか。カジくんからすれば、そもそもあなたはもしかしたら大丈夫かもしれないけれど、奥さんはどうなんですか?、同じ思いなんですか?、一緒に移住するんですよね?、という思いはあっただろうし、「僕らも大切にしたいと思っている場所」にいきなりよそからやって来て、やっぱしんどいから無理!、といつのまにか去っていく、なんてことはどうにも我慢できないし! という思いもあったかもしれない。
今から思えば、熱意だけは汲んでくれていたと思うが、なにせ初めて会ったばかりでお互いまだまだ互いを測りかねていたし、真剣に移住を考えているのであれば、互いに確認すべきことはまだまだあるので、あまり急がずに、少し時間をかけて移住の方向性を探りましょう、ということでもあったかと。
グリランで昼食をいただきつつ、次回はカミさんと一緒に、来月(まだまだ焦っているw)再訪します、と約束。
その後、せっかくだから?、と尾道パパイヤのミーティングに参加することにw 資材置き場にもなっているハウスの中で、あーしたら?、こうしたら?、といろいろ意見をぶつけ合う。気づけばもはや夕刻。夜には、お気に入りの田丸屋で、義父とのサシ飲みも待っているw 急いで帰らねば!
帰りの車中、「みつぎさいこう」かぁ、なんだか、カジくんという人間がいる町というだけでも面白そうだなぁ、と思い始めていた。初対面ではあったが、8時間あまり行動を共にして、信頼できる人間だとも感じていたし、なぜか初めて会ったという感じもしなかったしw ステキな谷あいの集落にたまたま出会い、まるみデパートを訪れることに、そして、創造力でまちづくりをと考える人に出会い、いろいろと話をしたことで、移住に向け、なにか大きな「きっかけ」をつかんだ実感が、すでにそこにはあった。
続きは、おいおいw
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