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エトとピアノ

私は3歳の時から中1までピアノを習っていた。

母が『エリーゼのために』を弾くことに憧れがあって、それがそのまま私の目標になった。
3歳では自分の意志なんて無かった。

私は練習嫌いで、早くから始めたわりに大して上達しなかった。
レッスン前だけ練習する、ありふれた子供だった。

小学生になって、音楽の時間に合唱やら合奏の伴奏者を選ぶため、
「ピアノ習ってる人~?」
と聞かれた時は、手を挙げた。
正直な子供だった。

ピアノを習っていたのは私だけじゃなく、もっと上手い子もたくさんいたのに、私はいつも伴奏者になった。
引っ込み思案のくせにしゃしゃりな子供だった。

高学年になって、合唱の本番前。
友達から別の友達が「エトちゃんのピアノは音小さすぎて聴こえない」って言ってた~と告げ口され、本番では力任せに弾いた。
それくらいは子供だった。

中学生になって、ますます練習しなくなった。
レッスン直前に、練習してなさすぎて行きたくないと思っていたら、態度に出ていたようで、母に、
「そんなんやったらやめな。月謝代だって高いんやで。」
と言われた。
お金のことを言われたら、もうやめるしかなかった。

その日のレッスン中、やめるとも言い出せないまま、ずっと泣いていた。
迎えの母が来て、やめると伝えた。

最後のレッスンの日、先生は、
「エトちゃんは私もうらやましいほど曲に感情を乗せられる」と言った。
普段に言ってほしかった。
「でもそういう子は技術的な練習が嫌いだね。」

遅かれ早かれやめたと思うし、やめたことを後悔しているわけじゃない。
ただ、自分で決めなかったことを後悔している。



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