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断食が始まります

 イスラーム教徒の義務のひとつである「断食」が3月12日から始まります。よく知られるラマダーン月はイスラーム暦の第9月目にあたり、このとくは毎年「断食」が行われるのです。


■「断食」なんのですが。。。

  よく「断食」と呼ばれるのですが、ラマダーン月は日中の食事だけでなく、喫煙や性交など欲望を断つ月です。東京のトルコ文化センターが発行した「サウムの手引き」では日本語で「斎戒」(以後、この言葉を使います)と表現していますが、このほうがしっくりくるでしょう。ただ、斎戒という言葉はあまり知られていないので、「断食」と言ったほうが理解はしやすいのですが。

 この期間は静かに暮らすことが求められ、嘘をついたり、争いを起こしてもいけません。怒りはエネルギーを消費するため、この期間は極力これも避けます。マレーシアでは犯罪率も心なしか少ない気がします。

 斎戒は病人や旅行者、妊婦、生理中の女性たちは対象外。ラマダーン月後に日数分の斎戒をすればいいことになっています。また、ラマダーン中にうっかり食べてしまった場合はその日数分を償います。性交もうっかりしてしまう人たちがいるようで、そのときは「2か月の斎戒」が義務付けられています。

 さて、聖典『コーラン』第2章(雌牛)183節ではイスラーム教徒に斎戒が定められていると述べ、「きっとおまえたちは神を畏れてくれることであろう」と指摘して信者全体の連帯感を高めています。これが主な目的で生活困窮者を理解することもその一つになっているのです。

 この期間は世界のイスラーム教徒17億人が一斉に斎戒をしますが、これは苦行であるものの、一種の楽しみで喜んでする人が多い。また、この期間は「禊」としても位置づけられているようで、ラマダーン月が明けるとそれまでの罪がなくなるとも信者は考えています。まあ、今でこそあまりありませんが、日本の神社で水浴行為をしてそれまでの罪や穢れを取り除く行為に似ているのです。

■この期間のイスラーム教徒の生活について

 信者のこの期間の生活ですが、午前4時ぐらいには起き、夜明け前までに食事(サフール)を済ませます。マレーシアの一部モスクのスピーカーからは「起きろ! 食べろ!」と発せられるところもあります。これは非イスラーム教徒にとっては大迷惑なんです。

 日中はもちろん飲まず食わず。最初の1週間はやはりきつく、午後になるぐったりしています。昼休みはもちろん食べられないので、ぐったりと食堂で寝ていたりする姿をよくみかけます。勤務時間が終われば、さっさと帰宅して食事の準備。退勤時間は大変混むので、会社によっては出退勤時間を早めるところもあります。

 各地には午後遅くになるとラマダーン・バザールが開かれます。断食明けの食事(イフタール)を販売しているのですが、あまり見られない食事もこのときに売っていたりするので、面白いです。バザールは結構規模が大きく、たいがいの食べ物がここで手に入れられるといってもいいでしょう。

 そして、イスラーム教徒らは日没前にお祈りを済ませ、日没後に一斉に食べます。ただ、突然食べるのはあまり体にもよくないようで、とても甘い乾燥ナツメヤシ(マレーシアではクルマといいます)を先に食べる人が多い。このため、スーパーでこの時期に販売されるのです。こんのクルマはマレーシア国内では作れないようで、ほぼ中東からの輸入品。このため、そんなに安くはないのですが、結構売れるようです。

クルマ。チュニジア産が多い。

 夕方の断食明けの信者らは基本的に家族と一緒に食べます。斎戒を通して家族との絆も深めるため、1人で食べることはめったにしないのです。

■東海岸でのラマダーン月

 さて、ラマダーン月の街の風景はクアラルンプールとイスラーム教徒が90%以上を占めるマレー半島東海岸とでは異なります。

 クアラルンプールやペナン州だと華人が多いため、レストランはたいがい開いていますが、東海岸でのレストランはほぼ日中は閉まります。そもそも食べる人がいないため、客がいない。そんな中開けていても仕方がないので、閉めてしまうのですが、非イスラーム教徒にとって結構面倒です。レストランはほとんど閉まっているので、日中は自炊するほうがいいでしょう。スーパーは開いているので、食材は買えます。

 以前、新型コロナのパンデミック時のラマダーン月はもう昼も夜も何も開いていない状況でした。このときばかりはかなり閉口しました。政府によるレストランの開店禁止措置が出ていたので。そのため、自炊をせざるを得なかったのを記録しています。

 また、この期間はすべてにおいて「スローモーション」になります。クアラルンプールだと華人も多いのである程度はメリハリの動きがありますが、東海岸だとほぼ絶望的に遅くなります。特に午後は空腹が極限に達するため、ほぼ全員のエネルギーがない状態になります。このため、小売店に行ったとして対応が非常に遅くなったりするのです。

 いずれにしても、マレーシア国内ではイスラーム教徒が多数を占めるところとそうではないところでは、対応が異なるので、この期間の旅行は控えたほうがいいでしょう。特に夕方の断食明けの時間はほぼ何も動かなくなるので要注意です。
 

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