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非イスラーム教徒からの輸血はいいのか

 日本人にとって、まぁ、どうでもいい内容なのですが、イスラーム教徒に華人などの非イスラーム教徒の血を輸血できるのかという内容をちょっとお話します。

 結果から先にお話すると、これはOKなのだそうです。

 イスラーム教徒であるマレー人は献血が大好き。それはイスラーム教徒の義務の一つである「喜捨」の一つとして捉えているのでしょう。モールの催事場などでよく献血している人たちを見かけます。

 イスラーム教徒の血がイスラーム教徒の方に輸血されるのは問題ないと思われますが、さて、豚も酒も食した人の血をイスラーム教徒に輸血ができるのか。その血は「ハラール」ではありません。このあたりのことは当のイスラーム教徒らもかつて気にしていたようです。

 マレーシアにはイスラーム法の法解釈などをめぐって議論する「ファトワ」という組織があります。この組織は法解釈などの最高権威でさまざまな法学者などが見解を議論します。

 このファトワが輸血について1982年に見解を出しています。ここでは「豚肉のような非ハラール食品を食べた可能性のある非イスラーム教徒からの献血について、輸血されるのは血液だけであり、豚肉のエッセンスではないため、イスラームでは許可されている」としています。
 
 ファトワは世界のイスラーム諸国の法学者らの見解も参考にしますが、エジプトの法学者の見解も披露しています。

 「イスラーム法ではほかに治療するすべがなく、危機的で絶望的な状態である場合、その治療が許されない物質の使用を必要とする場合であっても、治療することが許される」

 とのこと。人命には変えられないという立場から非イスラーム教徒からの輸血も許可しているのです。ただ、イスラーム教の医師による最終判断が必要とも付け加えています。

 また、臓器移植についても同様です。2018年に見解を示したファトワではイスラーム教徒と非イスラーム教徒間の臓器移植は問題ないと。当時のファトワの長であったズルキフリ・モハマド・アルバクリ氏は、

「人間の臓器はイスラーム的か非イスラーム的かではなく、人間の生命を支える道具である。非イスラーム教徒の臓器がイスラーム教徒の身体に移植されると、その臓器はイスラーム教徒の身体の一部となる。そして、その臓器はアッラーが命じられた目的のために使用されるのだ」

との見解です。

 マレーシアは宗教も異なるさまざまな民族が住む国です。人口の6割がイスラーム教徒ですが、残り4割が非イスラーム教徒。ただでさえ、輸血する血液が慢性的に不足している中で、イスラーム教徒かどうかの選別は理にかなっていません。ファトワもそういったことも鑑みているのでしょう。

 そのため、マレーシアで日本人が献血しても、それはしっかりと使われるのです。



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