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MyAirlineの運航停止で思うこと

 昨年12月に運航を始めた格安航空会社MyAirlineが10月12日に運航を全面的に突然停止しました。1年も経たずに運航を停止するのはちょっと信じがたいのですが、この事態でいろんなことを考えてしまいました。あまり経営的なことを考えずに行う経営者がどうもマレーシアでは多い気がするのです。

 この会社は華人のオーナーが高らかに宣言して昨年12月16日に運航を開始。クアラルンプールを拠点として国内7都市に路線を広げ、今年6月にはバンコク便も就航させていました。バンコクにはスワンナプーム空港とドンムアン空港の両方に飛ばす珍しい航空会社でもあったのです。

 ところが、9月ぐらいになって経営陣の間で辞任が相次ぎます。取締役2人が突然やめ、10月9日は創立者の最高経営責任者も「健康上の理由」と称して辞任しました。

 僕はニュースを読んで変だなと思っていたのですが、その3日後の12日午前6時に突然運航停止を発表。その理由は「財政上の問題」。この日にフライトに乗り込むはずだった人たちは青天の霹靂だったでしょう。

 僕も11月のチケットを買っていました。「返金はする」と言っており、予約番号とともにメールを出すよう求めていたので、そうしたのですが、まだ返信はありません。なにせ12万人以上が予約していたそうで、15日の時点ですでに1万2000人から返金申込みのメールが来たといいます。まあ、まだ時間はかかるでしょう。
 
 さて、僕が不思議でならないのは、マレーシアの人たちというのは事業を行う際に向こう3年から5年ぐらいまでの事業計画は作らないのかということです。特に規模が大きい事業であればなおさらだと思うのですが。今回は「財政上の問題」といいますが、創業から1年も経たずに資金が枯渇したということだと理解しますが、そういうことも予期せずに経営をしていたということなのでしょうか。

 ちょっと話は違いますが、以前にクアラルンプールで、できたてのレストランに行ったときのこと。そこそこ美味しい中華レストランでしたが、できてから1か月後には店がなくなっていました。まったく理解ができません。そもそも事業を行えば、お金はかかるし、最初の1年ぐらいは売上に見通しはあまり立たない。そういったことも含めて事業は展開していく必要があると思うのですが、このレストランも事業計画はなかったのでしょうか。あまりにお粗末で驚いてしまいます。創業から1か月後には売上はうなぎのぼりになるとでも思っていたのでしょうか。そうだとしたらあまりに見通しが甘い。

 ほかにも屋台とかでもできたかと思ったら数か月後にはなくなっているケースがマレーシアでは多く、事業の見通しをだいぶ楽観視しているようです。まあ、楽観視することはいいことだとは思いますが、誇大に楽観視すると結局、首が回らなくなってしまいます。こういった「考え方」がどうもMyAirlineの経営陣の根本的な考え方と共通している気がします。つまり、先の見通しに対してあまりに楽観視し過ぎ、さらに華人独特の見栄もあってか、お金もさらにつぎ込む。しかし、結局どうにもならなくなって「やめた」という結末になる事業体がマレーシアには多い。利用する顧客としてはたまったものではありません。つぶれてしまうと困ってしまう顧客がいるため、事業というのは始めたら簡単にはやめることはできないのです。顧客は自分より次という考えももしかするとこういった人たちにあるのかもしれません。

 さて、航空会社の突然の営業停止はこれが実は最初ではありません。おそらく日本人は誰も知らないと思いますが、マレーシアには2015年12月にラヤニエアー(Rayani Air)なるものができました。マレーシア初のシャリーア(イスラーム法)に準拠した航空会社で当時は話題となりました。クアラルンプールを拠点とし4都市に就航しましたが、何とその4か月後の2016年4月に運航を突然停止。MyAirlineと同じ「通知があるまで運航停止します」とのことで、消えていきました。航空当局は同年6月に運航許可をはく奪しました。

 そもそもこの会社は航空会社としては形をなしていなかったようです。飛行機は2機しかもっておらず、遅延や欠航が相次ぎ、飛行機の整備状況にも不安があってパイロットが操縦を拒否したとか。挙句の果てに搭乗券が手書きだったりと常識では考えられない運営だったようです。そのため、当然ながら、利用者はかなり減ったようで、運航停止に至りました。

 僕はMyAirlineに1回だけ乗りましたが、上記のような悪いイメージはありません。乗ったときの行きは遅延がありませんでした。機内も清潔で、重量を減らすためか椅子の背もたれはかなり薄かったのが強い印象です。ただ、帰りは1時間ぐらい遅れましたが、まあ、これはエアアジアもよく発生していることなので、仕方ないなあという感じでした。機内の食べ物はほとんど選択肢がなかったのは残念でしたが、それでも短時間のフライトであれば気になることはほとんどなかったのです。

 航空会社を運営するというのは、おそらく他の業界よりも大変でしょう。飛行機のリース、空港の発着料、機内食の費用、燃料費など1機のフライト運航だけでも相当な費用がかかります。すべてを十分に理解した上で運営を始めないといけないと思いますが、MyAirlineの経営幹部はどこまで航空業界を熟知した上で運営を始めたのでしょうか。なかなか顧客としてはそこまで見極めるのは難しいですが、こういう航空会社がいると「やっぱりエアアジアがいいわ」ということになってしまうのでしょう。

 ちなみに、きょうになってリースしていた飛行機8機は全部返却するとのこと。航空事業許可も取り消されてしまったのでこの会社は復活することはないでしょう。残念でなりません。

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