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今年はヘイズがやってくるかも

マレーシアでは30年ほど前から隣国のインドネシアの野焼きによるヘイズに悩まされています。ここ数年は落ち着いていましたが、今年はどうも、やってきそうな気配です。


■ヘイズとは

 そもそもヘイズとは何なのでしょうか。
 
 ヘイズは煙害とも呼ばれていますが、要は大気汚染です。日本でも一時期中国からP2.5が飛来してきて大騒ぎしましたが、まあ、要はあんなのが毎年飛んでくると言っていいでしょう。

 新型コロナのパンデミック時はだいぶ収まっていましたが、どうも徐々にインドネシアでは野焼きが始まったようです。

 この野焼きとやらが曲者なのですが、インドネシアのスマトラ島とカリマンタン島(ボルネオ島のインドネシア側の呼称)で製紙パルプやパームヤシのプランテーション用に土地を確保するために焼くのです。経済活動の一つなのですが、マレーシア企業も関わったりしており、複雑な要因で土地を焼いて周辺諸国にまで灰が飛んでいくということなのです。

■大気汚染の指数

 大気汚染については大気汚染指数(API)というのがあります。これはマレーシアの環境局が地域別に観測して毎日発表しています。

https://apims.doe.gov.my/api_table.html

 大まかな見方としては下記のとおりです。
 指数    大気の状態
 0~50     正常
 50~100   やや不良
 100~200   不健康
 201~300   やばい
 301以上    危険

■ヘイズの対策

 ヘイズの原因はおわかりいただけたかと思いますが、野焼きによる灰の粒子が飛んでくると言っていいでしょう。これを吸い込むと肺に影響が出てくるため、危険です。

 2015年もクアラルンプールにいましたが、このときは外でも家の中でも灰の臭いがして気持ち悪いものでした。外はどんよりと曇って視界が不良になり、外出する気にもなれませんでした。

 対策としてはマスクを着用することが大切です。

 コロナ禍が明けてマスクの着用も徐々に薄れてきていますが、ヘイズ時には必須のアイテムです。一番効果のあるものはN95規格を合格したマスクです。これは息するのが大変なのですが……

 屋外に長時間いるのもやばいので、家でじっとしているのが一番いいです。また、屋内にいても空気清浄機をつけっぱにして部屋の中の空気をきれいにしておくことが肝要。間違っても窓を開けっ放しにしておいてはいけません。

■マレーシアでの現状

 さて、マレーシアでは9月4日あたりからサラワク州クチン周辺とスランゴール州シャーアラム周辺でヘイズが確認され始めました。

 特にクチンでは大気汚染指数150周辺にまで上がり、「不健康レベル」に達しました。6日午前には少し収まったようですが、それでもインドネシア側の西カリマンタン州で野焼きの発火地点が増えているため、今後も大気汚染が収まるのはしばらくかかるようです。

 また、マレーシア気象局は5日にエルニーニョ現象と南西モンスーンによる乾燥した天候が来年初めまで続くので、ヘイズが到来するだろうと予測しています。この時期は降水量が減るとの見通しで、特に来年初めは「やばい」そうです。9月は特に風が北向きになるため、野焼きの灰はマレーシアを直撃するだとか。となると、来年初めまでは覚悟がいるかもしれません。

 2015年に襲ったヘイズはとにかくすごかったです。クアラルンプールの家からは市内全域を見渡せるのですが、このときばかりはほとんどみえなかったほど。街全体が灰に覆い、全体的に茶色や灰色の霧のようなものに包まれていました。そのときのフェイスブックをみたら、「頭痛がする」と自分でコメントしていましたから相当ひどかったのでしょう。とにかく焼ける臭いがずっとしていたのには困ったものでした。

何がなんだかわからないかもしれませんが、自宅からの眺め。木の向こうにはいつもKLの街が見えるのですが、ヘイズで何も見えませんでした(2015年9月撮影)

 また、あまりの視界不良に飛行機も飛べなかったぐらいです。灰は遠くフィリピンのセブ島やベトナムまで飛んでいったほどです。野焼きをしていたインドネシアのスマトラ島では10メートル先がみえないという事態にまでなって車の運転ができない。このため、非常事態宣言が出たぐらいでした。

 こうなってしまうとマレーシア政府自体は何もできません。一応、スマトラ島やカリマンタン島にヘリコプターを送って空から消火活動を行っていましたが、2015年の野焼きによる面積は2500万ヘクタール以上。つまり、東京ドーム556個分を焼いていたので、ヘリコプターからの散水だけではとても間にありません。インドネシアも取り締まりを強化していたみたいですが、完全に梨のつぶてだったようです。

 今年は2015年のようになってほしくないですが、さて、どうなるでしょう。インドネシア政府が真剣にこの問題に取り組んでくれればいいですが、いかんせん、法律がほとんど機能しない国なので、対岸にいる人たちにとっては見ているしかないのかもしれません。

■まとめ

 ヘイズは健康に非常によくありません。マレーシアや東南アジアに来年初めまでに来る方は必ずマスクを持ってくるようにしましょう。今年はもしかするとかなりひどいことになる可能性もあります。まだ新型コロナは完全になくなったわけではないですが、その対策の一つとしてもマスクの着用は必要でしょう。

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