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オンライン詐欺に気をつけろ

 マレーシアではここ数年、オンライン詐欺による被害が激増しています。電話による詐欺も横行し、毎日のように詐欺被害のニュースが報じられます。

 国家警察によると、2023年のオンライン詐欺による被害件数は約3万5000件。被害総額は13億リンギ(約426億円)以上に達したとのこと。件数は2019年比で2倍増加しました。
 
 政府はあまりに被害が多いことから、これまでに詐欺で使われた電話番号や銀行口座をサイトで検索できる体制を整え、これまでに累計2400万人が利用し、ある程度の防止効果は出ているようです。怪しいサイトや電話番号を凍結する措置も取っていますが、しかし、それでも被害に遭う人が跡を絶ちません。

 知り合いもこの詐欺に遭ってしまいました。
 
 彼は数年前にフェイスブックで女の子と知り合い、巧みな話術で「家族が病気なのでお金を貸してほしい」とそそのかされました。純朴な彼はそれに対応してしまい、20万リンギをせっせと振り込んでしまったといいます。銀行やクレジットカードからもお金を借りて渡してあげたというのですが、これは一体どういうことなのでしょうか。

 当初、僕に200リンギ(7000円)を貸してと言ってきたので貸しました。僕は基本的にお金は貸しませんが、同僚でもあり、その性格も知っていたので、貸すことにしたのです。給与は毎月もらっているのでお金はあるはずなのですが、「借金がある」と話すだけで、あとは何も話しません。「彼女が…」と言いかけて、「ああ、恋愛感情にハマってお金を貸したのね」と密かに思っていたのですが、その後に聞いてみるとどうも話が違う。

 数か月経ってから彼が言うにはフェイスブックで知り合っただけで、これまでにその女とは一回も会ったことがないのだというのです。

 一回も会ったことがないのになぜお金を貸すのか理解に苦しんだのですが、どうも巧みに丸め込まれたようで、さらに聞くと相手の写真も見たことがないのだとか。電話番号は知っていて、話は時折するものの、顔は知らない。これは彼女でもなんでもないのですが、どうしてまったくの見ず知らず、それも顔も知らない相手にお金を貸してしまうのか。。。

 事態はまだ進行中なのですが、どうも彼はやっと「詐欺に遭ったかも」と気付いたようです。それでもお金は返ってくると信じているのですが、これは悪い催眠術にかかったのではないかと僕は疑っています。

 以前、インドネシアにいたとき、友人が「ブラックマジック」に引っかかって多額の現金を銀行から引き出してその人に渡してしまった事件がありました。どういう経緯だったか覚えていませんが、「貸してあげないと」という気分にさせられたのだそうです。本人も「ブラックマジックにかかった」と言っていました。日本円で100万円ぐらいだったと思いますが、結局それも返ってこず。友人はかなり落ち込んでいました。ちなみに、インドネシアのブラックマジックを扱う人はジャワ島東部やバリ島に多く住むようです。一回ひっかかるとなかなか解けないとも聞きました。「ブラックマジックをやっている」と公言はもちろんしませんが、指に怪しげな黒い指輪をしているのが特徴なのだといいます。

 さて、今回詐欺らしきものに会った彼は警察に被害届を出すつもりはないらしい。届けを出すと家族に知られるからということですが、他にも方法があるのではないかとは思います。政府は借金漬けになった人向けのカウンセリングもやっているので、それも紹介しましたが、さて、彼は行くかどうか。

 生活費もままならないほどお金を貸してしまった彼ですが、先日会ったときには涙を流していたのが印象的でした。非常に悔しかったのでしょう。悪い人にハマってしまった本人が悪いといえば悪いのですが、好意でやったにもかかわらず、あまりに残酷ではないか。

 僕だったらまったく会ったこともない人に対しては「自分で稼げ。オタクの家族がどうなろうと僕には関係ない」と怒鳴って電話を切りますが、イスラーム教徒は困っている人にどうも弱い。彼らには「喜捨」という義務行為が課せられているため、そこを漬け込んでお金をせびってくるのでしょう。あまりに卑怯だと思います。

 いずれにしても、マレーシアではオンライン詐欺は今、社会問題として取り上げられています。警察の統計では上記の数字が出ましたが、彼のように被害届が出せない人もおそらく大勢いるのでしょう。となると、被害件数や被害総額はもっと多いとみられます。


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