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マレーシアの独立64周年と現状

 きょう8月31日にはマレーシアの独立64周年です。実際には「マレーシア連邦の独立」ではなく、1957年に「マラヤ連邦」が独立した日です。

 そもそも1957年に英国から独立したのはマレー半島部分のみでした。その当時の北ボルネオ(現在のサバ州)とサラワクは依然として英国の植民地。マラヤ連邦のラーマン首相が1961年にマレーシア連邦の結成を表明し、北ボルネオとサラワク、シンガポールが加わって1963年に「マレーシア連邦」となったのです。このマレーシア連邦結成日が9月16日なのですが、ラーマン首相はもともと8月31日のマラヤ連邦の独立記念日にマレーシア連邦結成日とすることを計画していました。しかし、インドネシアのスカルノ大統領の嫌がらせで、2週間の延期となってしまい、一方的にマレーシア連邦を結成したのが9月16日なのです。

 つまり、厳密に言うと、マレー半島側の独立は8月31日で、サバとサラワクの独立は9月16日なのです。9月16日は現在、祝日となっていますが、数年前に祝日と決められ、それまでの9月16日は単なる平日でした。マレー半島の人にとって「マレーシア連邦結成」はその程度で、重要なのは8月31日のようです。

 一方で、サバとサラワクの人たちにとって8月31日は独立記念日といいつつも実際独立した日ではないため、感情的な高揚はほとんどないようです。あくまで彼らの独立記念日は9月16日なのです。

 ちなみに、マレーシア連邦に入っていたシンガポールは8月9日に離脱したので、この日はシンガポールでは祝日になっています。祝日名は「National Day of Singapore」となっていますが、これを果たして独立記念日と訳していいのかどうか。そもそもシンガポールにとっても独立日はサバやサラワクといっしょで1963年9月16日だと個人的には思います。

 ただ、その後に連邦から出ていったので、その独立日は事実上関係ないことになったのか、連邦から出ていった8月9日を「National Day of Singapore」としています。さて、これを「建国記念日」というのか、果たして「連邦からの離脱日」というのかおそらくシンガポール政府の人たちも迷ったのでしょう。そのため、なんだか曖昧な「National Day of Singapore」としたのではないでしょうか。日本語で「独立記念日」や「建国記念日」とか訳しているところがありますが、どうもそれはしっくりきません。

 そもそもシンガポールの島はもともとジョホール王国のものであって、その後にラッフルズがもっていってしまった島です。当時はマレー人が複数住んでいるだけの島でしたが、その後は中国人が入ってきて、自由港として栄えたのは周知のとおりです。こういったことも考えると果たして独立なんだろうかと考えてしまいます。

 マレーシア連邦時代のシンガポールは「シンガポール州」であり、そのときはすでに国のような形態で、1965年8月9日以降はその統治形態を引き継いだ上で大統領職も追加したのです。この大統領制共和国となったことを建国というのであれば、それはそれで言い方としてはあっていると思いますが、そういったことも考えてなのか、英語の「ナショナルデイ」と日本語で書いているところもあります。たぶんそのほうがしっくり来るのかなあと個人的には思います。

 少し話がずれましたが、いずれにしても8月31日がマレーシア全体の独立記念日とはいいにくいというのはおわかりになっていただけたかと思います。
 
■マレーシアの現状
 さて、マレーシアの現状について。

 イスマイル・サブリ首相が8月21日に就任しました。閣僚は昨日、国王前で宣誓式を終えて、正式に政権がスタートしました。

 前政権は下院定数(222人)の過半数をかろうじて上回って運営されていましたが、与党内で造反が出てしまい、結局16日にムヒディン政権は倒れました。副首相だったイスマイル・サブリ氏が首相となったのですが、この政権も結局は過半数をちょっと越えた114人程度で運営され、数名が造反すれば倒れてしまう不安定な政権です。

 国内での新型コロナ感染の抑え込みと経済回復が主な課題となっています。しかし、経済回復もコロナをある程度は抑えきらないとどうしようもなく、こちらも日本といっしょでワクチンで何とか重症化を抑えることが主眼となりつつあります。

 マレーシアでのワクチン接種は比較的うまくいっているようです。日本のように「足りない」ということは発生していません。5種類ほどのワクチンを接種しているためですが、今後は国内の移動をどうコントロールしていくか。その後がいよいよ国境の開放(マレーシアは2020年3月18日から国境封鎖しています)となります。

 今後はワクチン接種者のみが国内移動ができ、さらに海外からの渡航者もその証明書を求められることになるでしょう。しかし、ワクチンは重症化を防ぐということが目的であって、完全な感染防止ではありません。かかるときはかかってしまいます。人間の歴史で感染症を抑え込んだのは比較的簡単だった「天然痘」以外はないのが実情で、完全な撲滅は無理でしょう。となると共存していかないといけなくなりますが、さて、今後はマレーシア国内だけでなく、全世界がどう伝染らずに生活していくかということになります。

 いずれにしても、新政権も新型コロナ対策を主眼に置かざるをえず、そこから経済をどう立て直していくかということになります。なかなか解決策が簡単には見いだせないなか、世界に先駆けていい対応策が打ち出せていければいいのですが。

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