ウッカリしるまの石像
実は、菰野町手作り民話絵本コンクールのために作ったお話なんです。
がしかし、いざ、絵に合せてみると・・・。応募規定の1つ、「20ページ以内」に収まらないことに気づいたのと・・・。
なんだか物悲しいお話になってしまって、そういう絵本もあるとは思いますが、今回提出するには、なんとなく違和感があったので・・・。
もうちょっと、ふんわりした内容に変更しました♪
でも、お話自体は完成していたので、ここに記録。絵はまだ描いていなかったので、文章と、先日行った福王神社の写真で。
はじまり、はじまり~
おばあちゃんと孫の女の子がおしゃべりをしています。
「おばあちゃん、おはなししてー」
「そうだねぇ。今日は、なんのお話しをしようかねぇ。あぁ、福王神社の近くにある岩穴の話しをしようかねぇ」
「どんなおはなしなの?」
「ちょっと悲しい、お話だよ」
「昔々。福王神社のすぐ近くに小さな村があってな。そこには、「ウッカリしるま」と呼ばれていた男の子がいたんだ。」
「ウッカリしるま?」
「そう。いつも何かに失敗しては、『しるまったー、しるまったー』と言うから、みんなに、そう呼ばれていたんだ。そうそう。しるまはね、マコモタケが大好きだったんだよ。」
「あ!あたしもだいすき!」
「毎朝、しるまは福王神社に行って、お参りをしていたのさ。ある日、しるまは、久しぶりに、奥の院に行こうと、山道を歩いていたんだ。その時、山道にまつられている、七福神の石像たちに、長くのびた草が、たーくさんかぶさっているのを見てな。綺麗にしてあげようと思ったんだ」
「そうなんだー」
「しるまは、石像をひとつひとつ、丁寧に掃除して、草を刈って、綺麗にしていたんだけどな。うっかり石像を倒してしまって、割ってしまったんだ」
「わぁ~、たいへ~ん」
「それからしばらくして、村で、疫病がはやった。」
「えきびょう?」
「悪い病気が、村人たちに、感染っていったんだよ。ちょうど、いま、流行っている、コロナみたいにな」
「えぇ、こわいねぇ」
「そのせいで、平和だった村が、荒れ果ててしまったのさ」
「それで、それで?」
「ある日、村の女の子が、こう言った。『あのね、福王山の天狗さまにいわれたんだ。この病は、魔物のせいなんだって。魔物がいなくなったら、なくなるんだって」
「村のみんなは、女の子の話信じて、毎朝、みんな一緒に神社に行って、お祈りをするようになったんだ」
「あたしも、コロナがいなくなるように、おいのりする!」
「それはいいねぇ。そしてな。みんなの中で、、魔物というものが、どんなものなのか、想像が膨らんでいったんだ。きっと、夜の暗闇の中、悪さをしているんだと。村の大切なものを壊していくんだと。そんな魔物が憎いと、みんなが言ったんだ。」
「あたしも、魔物、きらい!」
「その話しを聞いた しるまは、石像を壊してしまったことが疫病の原因で、石像を壊してしまった自分こそが魔物なのではないかと考えた。そこで、壊してしまった石像と、同じくらいの石をさがして、一生懸命、彫ったんだ。でも、石を彫るのは 大変でな。なかなか進まない。毎日、夜遅くまで、一生懸命彫っていたから、毎日、家に帰るのが、夜中になってしまったんだ。」
「そんな、しるまをみて、村のみんなは、怪しく思った。どうして毎日、夜遅くまで神社にいるのか。みんなが聞いても、しるまは答えなかった。みんなは、きっとしるまが魔物で、何か悪さをしているんだと思った」
「理由を聞いても答えない しるまを、みんなは神社の近くにあった岩穴に閉じ込めた。魔物を閉じ込めたら、疫病がなくなると言って。しるまは抵抗しなかったんだ」
「え・・・」
「それから、3日3晩、強い風が吹き荒れて、4日目の朝、風がおさまり、ピタリと疫病がなくなったんだと」
「でも、それじゃあ、しるまは魔物じゃないのに、とじこめられてしまったの?」
「そうだよ」
「そんなの、かわいそう!」
「でもな、しるまが、この村を守ったんだ」
「おばあちゃん、いわあなに いこうよ」
おばあちゃんと孫の女の子は、しるまが大好きだったマコモタケをもって、岩穴に向かいました。
ふたりが岩穴に近づくにつれて、風が強くなっていきました。
なんとか岩穴に到着したふたりは、手を合わせました。女の子が言いました。
「しるまは、ほんとうは、魔物じゃなかったんだよね。でも、みんなのために、魔物になって、みんなをまもってくれたんだよね。しるま、ありがとう。これ、マコモタケだよ。あたしも、だいすきだよ」
すると、突然、風がおさまりました。そして、今度は柔らかな、優しい風がふたりを包みました。岩穴を見ると、マコモタケを持った男の子が笑っている姿が見えるような気がしました。
おしまい
ちなみに、マコモタケというのは、菰野町の特産物。そして、福王神社の奥の院への参道に並んでいる七福神は、布袋尊だけが立体で、他の石像はレリーフになっています。
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