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紙芝居「大切な想いを伝えるために」

4月から、ほぼ毎週土曜日にライブ配信をしています。

岐阜県の大道芸人オマールえびさんのYouTubeチャンネルにて!

全国の図書館の絵本の読み聞かせが中止になって、さみしい想いをしている人に少しでも楽しんでもらいたくて、4月からほぼ毎週、無料配信をしてきました。ただ、お話も絵も自作なので、結構時間がかかります・・・。このまま無料で配信を続けていくのがだんだんときつくなってきましたが、できるだけ、続けていきたいと思っています。もし、応援してくださるという優しい方がいらっしゃいましたら、サポート、もしくは「クラウンらむね。が紙芝居を読んでいる動画」を有料でアップさせていただきましたので、応援のお気持ちをよろしくお願い致します!

スキを押していただくだけでも、励みになります!

今日の紙芝居は、おばあちゃまとロボットが出てくるお話。

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写真で公開していきます♪私なりに一生懸命作りましたので、ぜひぜひ、見ていってくださいね!



「大切な想いを伝えるために」

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これは、未来のお話。

おばあちゃま「アート。そろそろ、お茶の時間だねぇ」

アート「ハイ、オバアチャマ。カシコマリマシタ。オチャノジュンビヲシマス」

アート、と呼ばれたのは、おじいちゃまが亡くなる少し前に、おじいちゃまがおばあちゃまにプレゼントした、お手伝いロボット。未来の世界では、ロボットと一緒に暮らすことは、それほど特別なことではありません。

お手伝いロボットは、お茶の準備をしたり、お食事の準備をしたり、おしゃべりの相手をしたり、なんでもしてくれます。だから、おばあちゃまは一人暮らしをしていますが、ちっとも寂しくありません。おばあちゃまとアートは、毎日たくさのおしゃべりをしながら、穏やかに過ごしていました。

おばあちゃま「そうだわ。今日は、死んだおじいちゃまと、ダンスパーティーで初めて出会った記念日だったわねぇ。」

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おばあちゃまは、古いアルバムを出してきて、ながめました。

おばあちゃま「あぁ、懐かしいねぇ。この桃色のドレス。確か、おじいちゃまと初めてダンスをした時に着たドレスだねぇ」

おばあちゃまは立ち上がって、クローゼットへと行きました。

おばあちゃま「このあたりに、まだあったと思うんだけど・・」

しばらく探していると、桃色のドレスが見つかりました。

おばあちゃま「あった、あった、これだわ。おや!これは、おじいちゃまがその時にかぶっていたシルクハットじゃないか。懐かしいねぇ。とても素敵にエスコートをしてくれたんだったわねぇ」

桃色のドレスとシルクハットをテーブルに置いてから、どっこらしょ・・・とおばあちゃまは椅子に座って目をつぶりました。

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おばあちゃまの目に浮んできたのは、ダンスパーティーの会場でした。素敵なクラシック音楽が流れ、色とりどりのドレスをまとった貴婦人たちがたくさんいます。貴婦人たちが目を輝かせているのは、そこに現われた紳士。それは、若い頃のおじいちゃまでした。若い頃のおじいちゃまは、まっすぐにおばあちゃまの方へと歩み寄り、おばあちゃまの手を取り、フロアの真ん中へと連れて行きました。

おばあちゃま「今でもはっきり、覚えているわ。あのステキなパーティーを。」

アート「オバアチャマ」

おばあちゃま「あぁ、アート。お茶の準備ができたのかい?」

アート「ハイ。キョウハ、オジイチャマカラ頼マレテイタ、特別ナケーキト紅茶ヲ、ゴ用意イタシマシタ。ソシテ、オバアチャマ。オジイチャマカラ、伝言ヲ承ッテイマス」

おばあちゃま「え?」

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アート「再生シマス」

おじいちゃま「ばあさん。わしじゃよ」

おばあちゃま「あぁ、懐かしい。おじいちゃまの声だねぇ」

おじいちゃま「ばあさん、元気にしとるかい?」

おばあちゃま「えぇ、えぇ、おじいちゃまがプレゼントしてくれた、ロボットのアートと一緒に、毎日元気に幸せに暮らしていますよ」

おじいちゃま「今日は、わしらが初めて出会ってダンスをした、あの日からちょうど50年目の記念日じゃ。わしは、その日にどうしてもばあさんに伝えたいことがあったんじゃが。その日まで、わしの命がもたないと知ったから。アートに、伝言を頼んでおくことにしたんじゃ。」

おばあちゃま「まぁ、おじいちゃま・・・」

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おじいちゃま「ばあさん、覚えているかね?この家を建てた時。カーテンの色でけんかをしたなぁ」

おばあちゃま「うふふ。そんなこともありましたね」

おじいちゃま「ばあさんの大切な花瓶を割ってしまって、怒らせたこともあったなぁ」

おばあちゃま「私こそ、おじいちゃまの大切な本に、紅茶をこぼしてしまったことがありましたねぇ」

おじいちゃまとおばあちゃまは、昔を思いだしながら、たくさんたくさん、お話をしました。

おじいちゃま「いろいろなことが、本当にたくさんあったけど。ずっと感謝をしていたよ。さぁ、あの夜のようにダンスをしよう」

おばあちゃまは、アートにシルクハットをかぶせました。そして、差し出したアートの手に、おばあちゃまが手を乗せると、ステキなクラシック音楽が聞こえてきました。

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そこは、あのパーティーの会場でした。二人は、あの夜初めて踊ったダンスを踊りました。

おじいちゃま「ばあさん。あの夜、わしは、ばあさんに一目惚れをしてダンスを申し込んだ。わしと出会ってくれて、それから、ずっとずっと一緒にいてくれて、本当にありがとう。あまり、言ったことはなかったけれど。ずっと、愛しているよ」

おばあちゃま「おじいちゃま。私こそ。私を選んでくれて。ずっとずっと一緒にいてくれて。幸せな時間をありがとう」

おじいちゃま「あのダンスパーティーの夜、一緒に食べたオレンジのケーキを覚えているかい?全く同じではないけど、よく似たケーキが売っている店を見つけたから、今日のティータイムにと、アートに準備を頼んでおいたよ」

おばあちゃま「まぁ・・・。もちろんですよ。もちろん、しっかりと覚えていますよ」

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おばあちゃまが椅子に座ると、アートがおばあちゃまの前にケーキと紅茶を並べました。

おばあちゃま「あぁ、懐かしい。こんなケーキだったわねぇ」

おばあちゃまは嬉しそうに、ケーキをながめました。

おじいちゃま「まだ、急がんでいい。わしはゆっくり、また会える日を待っているからな。アートのことは、頼んだよ」

アート「再生ヲ終ワリマス」

おばあちゃまの目から、大粒の涙がこぼれました。でも、おばあちゃまの口は、微笑んでいます。

おばあちゃま「おじいちゃま、私は本当に、幸せ者ですよ」


おしまい

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