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オリジナル曲「楽園まで」解説

人は死ぬとどこに向かうんだろう。
そこには楽園があるのかもしれないし、なにも無いのかもしれない。

本日公開された星廻エト3rdオリジナルソング、『楽園まで』は、私自ら作編曲を行ったものとしては2作目となる。

MIXとguitarはいつもお世話になっている柳澤奈緒樹さんに、動画はお馴染み屍野シノネにそれぞれ担当していただいた。
今回はタイトルロゴ(ただの手書き文字なのだけど)と、MVイラストも自ら担当した。

イラストと詩と曲、そして歌声を使って、拙いながらも描きたかった世界を表現できたのではないかと思う。
前作『星夜行の魔法』に引き続き、今作も制作にあたっての色々をまとめていきたい。



私は海が好きだ。
悠久を感じさせる懐の深さと同時に、私たち陸の生き物には死を想像させる。
けれども、私たちの祖先が海からやってきた名残なのだろうか、あの酸素も光もない広大な世界に惹かれる。

「いつか夢見た国にきみが行きたいと言うのなら」

星廻エト『楽園まで』

今回のテーマを挙げるとするなら、「海」と「眠り」だろうか。
この眠りとは、睡眠というよりは「死」に近いニュアンスだ。
眠りに沈むのは海に潜るのに似ていると思う。
ベッドに身体を埋めて意識を手放していくのは、息を止めて海へ沈んでいくあの感覚とよく似ていて、どこか死への憧れに通じる部分がある。

今回の歌のストーリーでは、私は「きみ」を連れて「楽園」を目指している。
私の歌に出てくる「きみ」とはこの歌を聴いてくれるあなたのことでもあり、また過去の私自身でもある。
だから想定しているのは、現実に傷ついて弱ってしまった人だ。
そういう人が目指す楽園があるとしたら、それは天国ではないかと思う。
『星夜行の魔法』が希望に満ち溢れた冒険の始まりだとしたら、『楽園まで』が描く旅路は天国へと向かう旅、いわば死へと向かう物語だ。
二つは一見対極にあるようだが、どちらも「現実からの逃避」という共通のテーマを持っている。

私はこの歌を純粋なラブソングだと思っている。
人を愛するということは旅路を同じにするということで、それは同じ終着点へ向かっているということでもある。
人は遅かれ早かれ必ず死へとたどり着くのだから、ともに生きるということは、言ってみれば緩やかな心中だ。
だから『楽園まで』は愛し合う二人の「死」を描いた歌なのだが、同時に「生きる」というテーマも孕んでいるかもしれない。
そういう意味でも、『星夜行』とは違った方向から同じ主題を見つめているとも言える。

「最後までいこう かみさまがいなくても
このまま このまま 楽園まで行こう」

星廻エト『楽園まで』

死に向かう旅を描いているとは言ったが、歌の中で私たちが目指している『楽園』はすぐそこにある終わりという意味ではなく、むしろずっと遥か遠くのどこかにあるかもしれないこの旅の終着点であり、真に描きたかったのは「永遠」に他ならない。

人は死ぬとどこへ向かうんだろう。
たどり着いたその場所にかみさまがいなくても、それが眠りのように安らかで多幸感に満ちた、優しい歌のようであってほしいと思う。

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