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なぜ今、ETIC.が女性起業家・リーダー支援に乗り出すのか(2023年7月14日号)

こんにちは、ソーシャルイノベーション事業部の川島です。

この度、ETIC.(エティック)初のグローバル研修「アジアの女性リーダーのためのセルフマネジメントセッション」を開催することとなりました。

今回の企画は、女性起業家・リーダーを対象としていること、さらには日本人と外国人の参加者を対象としているという二つの点で、これまでにない初めての取り組みとなります。

本日は、この企画に込めた想いについて、お伝えさせてください。

新たに始まるダイバーシティ&インクルージョンの取り組み

ETIC.では昨年より、自社のダイバーシティ&インクルージョンに関する議論を推進する有志チームが立ち上がり、試験的に様々な取り組みを行ってきました。

ダイバーシティ&インクルージョンというと、グローバル大企業が取り組まれていることという印象が先行しますが、ETIC.では、「女性や障がい者、外国籍などこれまでの枠組みでは十分に接点を持ってこれなかった層に対して、どう支援を届けていくか」という問いを起点に考えを深めています。

多様性やインクルージョンといった考えは、「多様な人材の起業家精神の発揮」を掲げるETIC.のミッションと重なる部分も多いなかで、現在は、①ETIC.が行う既存プログラムの発展と、②機会の不均衡という社会構造そのものに対する働きかけの二方向で活動を展開しています。

こうした流れの中、今回の企画は、②社会構造そのものに対する働きかけとして、これまでの枠組みでは支援が届けきれなかった層に対する新たな取り組みとして、女性をターゲットに定め生まれたものです。

日本の女性起業家たちを取り巻く社会的障壁

先日、日経新聞で、スタートアップ業界におけるジェンダー障壁に関して、このような記事がありました。

小さな差別や偏見は、女性起業家の成長を妨げる要因のひとつだ。金融庁の政策オープンラボは2022年7月、スタートアップ業界のジェンダー課題をまとめた。報告書によると日本の起業家(個人事業主も含む)に占める女性比率は34.2%(17年時点)、うち会社化しているのは14.2%(21年時点)。さらに新規上場企業に占める女性社長となると、比率はわずか2%(21年時点)だ。
女性の起業家支援のプログラムや助成金も数多く出てきているはずなのに、なぜ上場に至らないのか――。その背景には、業界のジェンダーの偏りと、そこから生じる偏見があると報告書は指摘する。
「資金調達後に妊娠するなんてありえないよね」。ある女性起業家がキャピタリストにかけられた言葉だ。出産や育児を事業推進上のリスクと認識し、資金調達のうえでネガティブな材料とされるケースは少なくない。相談しようにもロールモデルも限られる。キャンイートの田ヶ原さんは、22年に第1子を出産する前「同じ状況の経験者を探すのに苦労した」と話す。

(2023年3月6日「スタートアップ、女性起業家にジェンダーの壁」日経新聞)

こうした先入観やプレッシャーは、ソーシャルセクターで起業する女性にとっても例外ではありません。

「本当は子どもを3人以上欲しいけど、他の男性メンバーにはきっと嗜められるからそんなこと言えない」
「自分と夫が共同代表なのに、地域の人が相談を持ちかけるのはいつも夫で、自分は無視されているように感じる」
「嫁なのに起業をして、いまだ家庭にお金を入れられていないことについて、旦那さんやその家族に対して顔が立たない」

生物学的な事情や、無意識に刷り込まれた社会的役割は、女性起業家たちが自分自身に向ける疑念や自信の喪失へとつながり、本来持つリーダーシップの発揮を阻んでいる可能性があります。

女性リーダーたちが、どんな小さな疑念であれ、それを自ら昇華させ次のステージへ前進するには、批判やジャッジの不安がなく話せる安心安全の場が必要です。

こうした想いから、今回女性リーダーたちを対象としたセルフマネジメントセッションの構想が生まれました。

共感でつながるインクルーシブなプログラムを目指して

「女性」と一括りにしても、結婚や出産、社会的役割に対する考えや感じ方は様々です。人によっては、性差を意識せずこれまで暮らすことができた人もいれば、周囲の小さな一言に傷つき悩んできた方もいると思います。

今回のプログラムでは、身近では得られなかった共感でより多くのリーダー同士がつながることを目指し、日本・アジアの女性リーダーを対象にプログラムを開催します。多様な価値観を見聞きすることで突破口へのヒントを得たり、新たな気づきを得ることを期待して、他国との協働開催にしました。自らの地域・国を越えて、リーダー同士とつながる経験が、葛藤してきた女性リーダーたちにとって大きな励みとなることを期待しています。

また、今回は参加者を女性リーダーに対象に絞りながらも、この意図に共感する男性たちも巻き込んだ企画を意識して行っています。

イギリスの起業家支援団体の関係者からは、「なぜ女性参加者を対象とした企画で、講師やコーディネーターに男性がいるのか」と聞かれました。

私たちは、ジェンダーで対象を絞ることで、分断を助長することは願っていません。

参加者のニーズと心理的安全を優先しながら、同時にこのミッションに共感する仲間の輪を広げる意味で、講師として米クレアモント大学大学院のジェレミーハンター氏、パートナー団体としてバングラデシュ、香港、モンゴルの支援団体と連携しています。

今回の企画は、エティックにとっても新たな挑戦です。ぜひこのミッションに共感いただける方々に、お誘い合わせの上ご一緒いただければ幸いです。

◎プログラム概要

【日時】
2023年8月24日(木) - Introduction Session by ETIC.
2023年9月1日(金) - Self-management Session 1 by Jeremy Hunter
2023年9月15日(金) - Self-management Session 2 by Jeremy Hunter
2023年9月29日(金) - Self-management Session 3 by Jeremy Hunter
2023年10月10日(火)- Self-management Session 4 by Jeremy Hunter
2023年10月27日(金) - Reflection Session by ETIC.
(各日、日本時間10時~13時 ※間に休憩をはさみます)

【場所】
オンライン:Zoomを利用します。PCで、発言できる環境でご参加ください。

【対象】
▪️日本、アジア太平洋地域のソーシャルビジネスやNPOの経営者/マネジメントを担う女性
▪️コミュニケーションに十分な英語力のある方(英語で開催し、通訳はありません。ブレイクアウトルームでは日本語で話したい等の要望がある方は、事務局へご相談ください。)

【参加費】
参加費は事業規模に応じて設定されています。詳しくは、プログラムページ(英語)よりご確認ください。(日本語のご案内はこちら
(※お支払い方法は、お申し込後に改めてご案内いたします。日本円の場合は銀行振込です。)

【参加者】
人数:25名程度

【お申込み】
締切: 7/31までにお申し込み下さい
申し込みフォームはこちら

※詳細のご案内:英語はこちら日本語はこちら をご参照ください。

編集後記

こんにちは。本木裕子です。アジア太平洋地域の女性のリーダーを対象にした、セルフマネジメントのセッションは、2016年から日本のソーシャルリーダーを対象に毎年開催し、定評のあるセッションをベースにして、参加者の対象を変えたものです。日本でのセルフマネジメント・セッションには、250人以上が参加し、受講した一人一人に多くの変化を起こしてきました。
毎回素晴らしいメンバーで、学び深い時間をもち、

「自分の状態に気づきやすくなり、意図的に状態を整えるための具体的な方法がわかった。」
「大切にしたいことに気づいたり、自分の本当の想いに気づくためのヒントをもらった。自分の想いに自覚的になることで、その実現に近づいている。」

といった感想を頂戴しています。
今回は通訳なしで、全編英語開催というのも、私にとっては挑戦です。私の英語は、流暢ではありません。そんな私が企画するからこそ、英語に不安がある方を応援したいという気持ちも今回の開催には込めています。セッションは英語開催ですが、ブレイクアウトセッションでの対話は日本語話者同士で組んだりと、可能な限りいろんな人が参画しやすいインクルーシブサポートもしていきます。国際社会に踏み出していこうという方、お待ちしています!

このnoteは、2023年7月14日に配信したソーシャルイノベーションセンターのメールニュースのアーカイブです。メールマガジンでは、ソーシャル領域に関わるプログラムやイベントのお知らせなども配信しています。
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