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グローバルに展開する起業家支援組織との連携から学んだこと【2022年7月26日号】

はじめまして、ローカルイノベーション事業部の伊藤いずみです。

私は普段、自分が取り組みたいテーマを軸に、地域資源を活用しながらビジネスを構想する「ローカルベンチャーラボ」を担当しています。

今年「ローカルベンチャーラボ」は、ロンドンに拠点を置く中間支援組織、ユース・ビジネス・インターナショナル(以下、YBI)のサポートを受けながら「フューチャーメーカーズ(Futuremakers)」というグローバルプログラムに参画させていただくことになりました。

「フューチャーメーカーズ」とは、社会的に不利な立場にある若者等に対して、就職や起業のチャンスを高めるための支援をおこなう事業で、スタンダード・チャータード財団(英国金融機関の企業財団)が主催するグローバルプログラムです。

YBIは、このフューチャーメーカーズ・プログラムのうち、8か国における事業のコーディネートをしています。6月には、YBIとともにフューチャーメーカーズを実施する中間支援団体がイスタンブールに一堂に会し、学び合いや意見交換をする場が提供され、私も参加してきました。

世界を舞台に活動する中間支援組織・YBIとは?

YBIは、英国ロンドンに拠点がある世界中で若者起業支援をおこなう中間支援組織のグローバルネットワーク組織で、このネットワークには46か国、50もの団体が参加しています。

”若い起業家たちの存在や、彼らが生み出す事業が、新しい雇用や地域経済を形成し、持続可能な社会の実現に繋がる”という考えのもと、各国の中間支援団体とパートナーシップを組みながら、若者に対して起業に関する必要なスキル、自信、そして人脈を築くために必要なコーディネートやプラットフォームをつくっています。

また、世界各国の財団やスポンサーと連携をして、世界中からプログラムに適切な実行団体をマッチングし、多様な国の団体が、同じ枠組みの中で事業が実施できるようサポートしています。

今回のフューチャーメーカーズも、YBIを通して参加しているのは、ドイツ、トルコ、ボツアナ、ナイジェリア、ウガンダ、インドネシア、ベトナム、そして日本の8か国。エリアも広く、文化背景や社会状況も異なる国々ですが、YBIがコミュニケーション整理をおこないながら、プログラムの全体マネジメントを担っています。

多様な背景・文化の中でインパクトを語るための指標づくり

ETICでは、2020年より新型コロナウイルスの緊急支援の提供をきっかけに、YBIとの連携を始めました。それ以降、プログラムでの連携を軸にしながら、グローバルでの資金調達や、発信における視点について学ばせていただいています。

今回のフューチャーメーカーズでも、異なる文化背景や社会状況である国々が、同じ枠組みの中で資金調達をしており、それぞれの事業によって生み出されるインパクトを明確に語ることが必要になります。そのため、プロポーザルの段階から、YBIがファシリテーションに入り、クライアントとも丁寧にKPI設定の議論と擦り合わせがおこなわれました。

日本における地方の課題、たとえば都市部との機会の格差や過度な高齢化なども、国内だと理解がされやすいですが、その前提がない海外機関には、なぜこの事業が必要なのか、日本の地方はどのような状況でなのか、何を目指し、何が実現出来ると成功と言えるのか、ひとつひとつ言語化をしなくてはいけません。

事業の成果について議論する過程でも「何をインパクトとして目指すのか」「そのための段階的なアウトカムは何か」を明らかにしたうえで、さらに「インパクトが高いが、実施の難易度が高いこと」から、「インパクトは低いが実現が容易なこと」までを「Higher Outcome」「Intermediate Outcome」「Lower Outcome」の3段階で整理をし、それぞれのアウトカムに対して、具体的にどんなアプローチをおこない、何をKPIとしてカウントするのか、それはいつ、誰がどのように測定するのかまで決めていきました。

また、それぞれのアプローチにはどんなリスクがあるか。起きた場合はどのように対処するのかまでをブレイクダウンします。最終的には、すべてを言語化して一覧表で指標を作成し、ステークホルダー全員と目線合わせをし、合意を得た上で事業を始めていきます。

​​​​​中間支援のグローバルネットワークから学ぶこと

こうして指標を明確にしたうえで事業を始めるので、定期報告も指標に紐づいておこなわれます。おかげで不要なコミュニケーションが発生することもなく、事業の進捗や成果も把握でき、定期的な見直しもしやすくなりました。
 
目指す成果や仮説のブレイクダウン、共通項の抽出など、指標を作成するための議論に多くの時間を要しましたが、これにより事業スタート時には関係者が自律的に動いていくことにもつながっています。

社会的意義が高く、課題が複雑であるほど、対象となる人や地域・分野によって異なる状況に目が向いてしまいます。そうした事業では、成果の指標を個別化することや、複雑な評価を置いてしまうこともあるのではないでしょうか。

しかしシンプルな指標を用いることで、事業の連携や情報交換、相互支援にもつながりやすくなるだけでなく、ともにインパクトを語ることができます。そのことはより広い理解者・応援者を募っていくうえでも、重要だと感じています。


- INFORMATION -


ジェレミー・ハンター教授
Special Session for Social Leaders in Japan 2022・秋
「セルフマネジメント・マインドフルネスで結果を変える
 ~反応的な感情を自覚し、選択肢を広げる~」

マインドフルネスやセルフマネジメントを、米国のピーターF.ドラッカースクールでMBAやエグゼクティブに教えてきた、世界でも草分けの一人、ジェレミー・ハンター氏による特別オンラインプログラム。

テーマは、「Mastering Reactions(反応的な感情を手なずける)」

「他者をマネジメントするためには、まず、自分自身をマネジメントできなければならない」と、経営学者のピーターF.ドラッカー氏は言いました。

今回は「反応的な感情」に焦点をあて、わたしたちの内面で瞬間・瞬間に起きている身体的感覚や感情・思考がどのように処理され、行動にどう繋がっていくのかを解き明かしていきます。

たとえば、
・信頼していたメンバーや仲間に、突然怒りをぶつけられて頭が真っ白になった
・社会環境の変化をチャンスに変えていきたいが、目の前のことに対処するのをやめられない
・クライアントから、契約を切られてショックを受けた
・相手にあわせて丁寧に伝えたはずなのに、まるで理解していなくてどっと疲れた、など

このようなストレスを感じた時、多くの場合私たちは、反射的に逃げるか戦うかのどちらかを選んでいます。しかし、いずれも現実を本質的に変えることにはつながりません。

本当に望む結果を得るためには、その場で起きている感情・思考に気づき、
行動を変えること。予期せぬ出来事はいくらでも起こります。内面をマネジメントするという、これからのリーダーに欠かせないスキルを、仲間とともに探求していきます。

<開催概要>
●日時 ※間に30分の休憩をはさみます
Day1 10月7日(金)10:00~13:30 
Day2 10月28日(金)10:00~13:30 
Day3 11月11日(金)10:00~13:30 
Day4 11月17日(木)10:00~13:30 ←Day4のみ木曜日です。

●場所:オンライン:Zoom 
※対話の時間があります。声を出せる環境でご参加ください。

●対象:
・ETIC.が主催するプログラムに参加したことがある、
 または、ETIC.が提供するサービスを利用したことがある方
(所属する団体のスタッフの方の参加も歓迎します。プログラムの例:ローカルベンチャーラボ、PLAY、右腕プログラム、サービスアカデミー、DRIVEキャリア 等々)

・「ジェレミー・ハンターSpecial Session for Social Leaders in Japan」にこれまでに参加した方からの推薦がある方(ETICスタッフからの推薦も含む)

●参加費:
本プログラムは、利益を目的としておらず、日本のソーシャルセクターにこのセッションが必要だと考える、ジェレミーさんの協力と、事務局のボランティアベースの活動により成り立っています。

参加費は、【一般】と【ソーシャルリーダー】の2種類を設けています。
【一般(営利企業)】25万円(税込)/人
【ソーシャルリーダー特別価格】8万円(税込)/人
 民間非営利組織もしくはそれに準じる社会的企業、行政に所属する方を想定しています。

●お申込み:こちらのフォームからお願いいたします。
●プログラムの詳細はこちらもご確認ください。

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Editor's Note - 編集後記 -


ふたたび、伊藤です。冒頭でご紹介したYBIでの評価や指標の話ですが、ここで書いたことが全てではないと思います。私自身も、簡単には指標化できない成果や、判断できないものにこそ本質があり、意味があると感じることも多くあります。

だからこそ、指標や評価を味方につけて、本質的な議論や取り組みに時間も情熱も注ぎ、アクセルをかけられるくらいに使いこなせる未来を目指したいと思います。

各国とのやり取りの中では、課題先進国として日本の事業が、世界から益々の関心が寄せられていることを感じます。そして、日本の中で生まれている事業や起業は、充分に世界に通用するユニークさや価値があるものが多くあると日々確信しています。

オンラインが普及した今、日本のローカルから世界に直接働きかけられるようになりました。日本各地で生み出される事業を、世界にどのように語っていくのか。事業のインパクトを言語化、共通の指標化していくプロセスにもヒントがあるのではないかとおもっています。


発行元:
NPO法人ETIC.ソーシャルイノベーション事業部
incu@etic.or.jp

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