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始めるきっかけは何だって良い -お笑いでSDGsを学ぶ-

我が家でとっている新聞では、第2・4火曜日の夕刊に『SDGs』に関するインタビュー記事が掲載されている。
(SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、国連総会で採択された「持続可能な開発目標」の意。17のグローバル目標と169のターゲットからなる)
ある日の記事で、吉本興業がSDGs達成に向けて啓発活動をおこなっていることが紹介されていた。

以下、新聞記事を要約。

国連広報センターからの呼びかけがきっかけとなり、2017年より吉本興業は取り組みを本格的に開始。
京都や沖縄で開催された国際映画祭では、SDGsの目標を織り交ぜた漫才や落語のコンテストを開催したり、レッドカーペットで所属タレントがプラカードを掲げてアピールした。
また、タレントを起用したPR動画の配信や、北海道下川町と連携しての映画製作なども積極的に展開。
そういった中で特に注目されているのが『SDGs新喜劇』の試み。これは大阪商工会議所との共同イベントで、年に数回上映。SDGsの17の目標からテーマを複数選び、毎回異なるストーリーを届けている。台本を手がける新喜劇座長の川畑泰史さんは「大切なのは、一人ひとりがささいなことだと思わないこと。SDGsを知らない人にもわかりやすく伝えることが、我々に課せられた使命だと思っています」と語る。


私は大阪生まれ大阪育ちで、幼い頃からお笑いが当たり前にある環境で育ち、お笑いが大好きだった。だけど20代半ばに仕事で上京してからは、ほとんどテレビを見なくなった。さらに、退職後もしばらく国内外を放浪していたため、2018年に再び関西に戻ったにもかかわらず、吉本興業の取り組みについて全く知らなかった。
今回、この記事がきっかけで、活動内容についてもっと知りたくなり、すぐに吉本興業のホームページにアクセスしてみた。すると、思っていた以上にたくさんのイベントが開催されていた。
本来、SDGsを前面に押し出したような、少しマジメ系のイベントは、もともと興味のある人しか集まらない傾向があるけれど、これを吉本興業がやることで、SDGsのことを知らなかったお笑いファンにも知ってもらえる機会となる。それだけでとても大きな可能性を秘めているのに、それをビジネス系シンポジウムの中でだったり、はたまたJICAやTEDとの共催イベントだったりと、さらに高い相乗効果が生まれるようにしっかり工夫されている。また、自治体との連携も北は北海道から南は沖縄まで、コラボの相手がなかなかに幅広くておもしろいのだ。私がお笑い好きだから、という贔屓目もあるとは思うけれど、この「お笑い×SDGs」の活動報告を見ているだけで、なんだか無性にワクワクしてしまう。


一方で、ネット上には、吉本興業に対するマイナスイメージを揶揄する声もちらほら確認できる。そのほとんどが、昨年の闇営業問題によって、これまで見過ごされていたパワハラ体質やブラック企業体質をただすもの。倫理的に反するとされるおこないをしてきた吉本興業が、SDGsのような倫理的な取り組みを推進する立場にあるのか、ということのようだけれど、個人的には別にかまわないんじゃないかと思う。いや、むしろ積極的にどんどんやっていってほしい。
と言うのも、それって「未熟な人間が良いおこないを率先してやるのはどうか」と言われているのと同じで、だけど、実際そういう人がボランティアや人助けをすることにこそ意義があると思うし、また、その中で人格が磨かれていくものだと思うから。(そもそもほとんどの人が未熟なわけだし…)
それと同じで、吉本興業が企業として課題が多くある状況だったとしても、だからと言って良い活動をしてはいけないわけでは全くない。むしろ、それを続けていくことで、所属タレントや社員の方々にSDGsのような考え方や価値観が広まって、影響を及ぼし合って、どんどん社内で循環していけば、トップダウンではないやり方で企業体質が改善していく可能性にも繋がっていく。


ところで、何か大きな問題に取り組むときに、「自分ひとりがやったところで、何も変わらないんじゃないか」と思ってしまう人もいるかもしれないけれど、そんなことは全くない。一人ひとりが持つ影響力を過小評価してはいけないし、その間違った考えが積もり積もってどれだけの損失になるかということを考えてほしい。
上で新聞記事を紹介したけれど、新喜劇座長の川畑さんもはじめは「SDGs?何やそれ」という感じだったけれど、新喜劇を上演することを通して、自分自身の意識が変わり、実生活でも自分ができることを徐々に心掛けるようになったとおっしゃっている。そうして本人が変われば、まわりが変わり、水面に水が一滴落ちたときに静かにまわりに波及していくように、ゆっくりとそれが拡がっていく。有名人か一般人かによって、そのスピードや範囲は違うかもしれないけれど、まわりに影響を及ぼすということに関しては変わりはない。


ちょうど吉本興業の取り組みについて興味をもって調べているタイミングで、EXITの兼近大樹さんと藤原しおり(元ブルゾンちえみ)さんが『世界平和』をテーマに生配信番組で対談するというのを知った。お二人とも若者に絶大な影響力があり、だからこそ自分の発言にちゃんと責任を持って発信されているという印象。
EXITは昨年、京都国際映画祭で開催された『SDGs-1グランプリ』で優勝しており、普段から関心をもって学んでいるからこそこういった番組に起用されるのだと思うし、藤原さんにいたっては、芸人をやめてまで世界で起きている問題に向き合っていこうという、その覚悟がすごい(ちなみに、ブルゾンさんはもともと吉本興業の所属ではない)。
彼らのような若い世代が自分たち目線で問題に向き合って発信していくことは、本当にこれからの希望だと思う。小難しい肩書のついた、よくわからない大人に言われるよりも、抵抗なく、親近感をもって、ニュートラルに問題に向き合うことができるような気がするから。そして、「彼らがそう言うなら、私もやってみようかな」と純粋に思わせてくれる。なんだか一気に敷居が下がるのだ。



こうやっていろいろな記事や動画などのメディアを見ていて、改めて思うのは、やはり「知ることがまず大事」だということ。そして、次に「自分で考える」こと。(これまでの記事にも書いたことなので、繰り返しになってしまうけれど。)
そのうえで、自分が感じたことや考えたことを、自分の内側に留めておくだけでなく、誰かに向かって発信するのもとても大事なことだと思う。「私なんかがこんなこと言って良いのかな」とか「私はこう思うけれど、間違っているかもしれない」なんて遠慮する必要はなくて、臆することなく発信してどんどんまわりに波及させていけば良い。それを繰り返しながらみんなで一緒にレベルアップしていくことができたら、はじめは小さな一歩でしかなかったものが、いつしか大きなムーヴメントに変わっているかもしれない。
私は、川畑さんや兼近さん、藤原さんのように大きな影響力があるわけではないけれど、それでも誰かに届けば良いなという想いで、これからも発信し続けたいと思っている。

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